2024.9.6お仕事インタビュー

アルバルク東京の強みから相
手チームの考えまで、すべてを

データで読み解いていく!

アルバルク東京の強みから相手チームの考えまで、すべてをデータで読み解いてい

く!

チームを支える
お仕事インタビュー

アルバルク東京にはスカウティング
コーチというお仕事があります。
分析したデータを練習や戦術につなげ、
試合の局面ではヘッドコーチに
アドバイスもします。
華やかに見えますが、
岩部 大輝(いわべ ひろき)さんは
「地道にやる力が求められる仕事」
と話します。

アルバルク東京

岩部 大輝さん

アシスタントコーチ/スカウティングコーチ
1994年神奈川県生まれ。東海大学大学院修了。在学中から名門・東海大学バスケットボール部でコーチングキャリアをスタートさせる。
2014-17年 U-24日本代表テクニカルスタッフ、2014-17年 日本学生選抜テクニカルスタッフ、2017-19年 川崎ブレイブサンダースアナリストを経て、2019年~アルバルク東京にてスカウティングコーチとして活躍中。

大事なのは、客観的な情報を映像で主観的に表現すること

アルバルク東京のスカウティングコーチの仕事は、一言でいうと「試合の準備」です。具体的には、シュートの確率やミスの多さといった数字を比較検討して、オフェンスとディフェンスの戦術をまとめます。もちろん、「自分たちの強みはどこにあるか」も分析します。
バスケットボールは「数字で表現できるスポーツ」だと僕は思っています。でも、数字ばかり羅列しても理解は難しいので、選手に伝えるときは必ず過去の試合や練習の映像をつけて、客観的なデータを映像で主観的に表現します。他チームのアナリストやビデオコーディネーターの仕事に似ていますが、アルバルク東京の場合はコーチとしてアドバイスできる点が異なり、選手や他のコーチに練習のオプションを示すことが大事になってきます。
高校までは僕もプレイヤーでした。コーチになろうと決めて東海大学に進学して、東海大バスケ部の学生コーチをやりましたが、プロ選手としてのキャリアがなく、プロを目指す学生に自分流の主観的な話をしても説得力に欠けました。そこで「自分の強みは何だろう」と考え、「筋道を立てて物事を伝える」という答えにたどり着きました。そこからデータや映像を使ったコーチングに力を入れ、2014年からアナリストなどの肩書きで仕事をしています。

いかにヘッドコーチの頭のなかを覗けるかが勝負

アルバルク東京には僕以外、それぞれオフェンスとディフェンスに特化した二人のスカウティングコーチがいます。彼らが集めてくれたデータと映像をもとに、僕がミーティング用の5分〜12分の映像をつくってヘッドコーチ(HC)にプレゼンテーションします。
データの見せ方はHCの考え方次第ですので、HCによって映像のまとめ方はかなり変わります。現在のデイニアス・アドマイティスHCとは3年目になりますが、彼が求めているのは、抽象的なものから具体的なものへ落とし込むことです。たとえば、相手はピックアンドロール(=オフェンスの戦術のひとつ)が上手いよね、次の相手はこのように試合を運んでくる、だから今日はこういう練習をしよう、といった具合にストーリーをつくります。

僕らは相手チームの特定のシチュエーションを、今シーズンだけでなくHCが過去に所属していたチームも含め、2〜3シーズン遡ってデータを集めています。毎回、膨大な情報を頭に入れて試合に挑むなか、スカウティングコーチ冥利に尽きることがありました。ある拮抗した試合で、終了間際ぎりぎりで同点に追いつかれたんです。相手チームがタイムアウトを取ったとき、僕らは急いで相手のHCが取る手段をデータで確認しましたが、この状況におけるパターンは20も30もあるわけです。それでも僕は、「このHCの性格から、今回はこう来るだろう」と予測して、パターンのひとつを自チームのHCに伝えました。そしたら、まさにその通りの展開になったのです!最後の一瞬に点を入れて劇的に勝てたので、本当に嬉しかったですね。
結果的に僕らがやっているのは、相手チームのHCの頭のなかを覗くことなんです。誰とは言えませんが、分析しやすいHCは何人かいます。一方で、HCの色が出にくいチームというのがあって、そこは戦術が読みづらいですね。

求められる、暗いなかでも一歩ずつ進む力

この仕事に求められるのは、地道にやる力だと思っています。ひとつの数字で試合の結果がすべて変わるとか、ひとつの戦術でチームの動きがすべて変わるみたいなことは、現実にはなかなか起こらないんですよね。試合のために自分がやってきたことが、いつどこで花開くかわからないので、暗いなかでも一歩一歩、歩み続ける力が重要かなと思っています。
1試合平均して約80回のオフェンスとディフェンスがありますが、今シーズンはその一つひとつをより良いものにしていきます。80回×60試合の良いオフェンス、80回×60試合の良いディフェンス。それがトータルで積み重なったとき、アルバルク東京は優勝に近づけるかもしれない。そのためにも練習の1回1回、トレーニングの1回1回が、選手全員にとって意味のあるものになるよう、サポートすることが今シーズンの目標です。
みなさん、いつも応援ありがとうございます。僕らはスカウティングコーチという仕事上、叫んでいることが多くて試合ではお見苦しいところも多々あるかと思います(笑)。スタッフもがんばって声を出していますが、ファンのみなさんの声援を受けて選手が戦うときがもっとも美しい瞬間です。今シーズンもぜひ、ご声援のほどよろしくお願いします!