「怒り」をコントロールするアンガーマネジメント

2021.04.13

「怒り」をコントロールするアンガーマネジメント

「つい部下に怒鳴ってしまった」「仕事のイライラを家庭内に持ち込んでしまった」など、自分のなかに不意に沸き起こる「怒り」という感情に戸惑いを覚えるという方も多いのではないでしょうか。今回は、この「怒り」という感情と上手に付き合うメソッド「アンガーマネジメント」に注目し、目的から実践方法までをわかりやすくご紹介します。

アンガーマネジメントとは

怒りと上手に付き合う心理トレーニング

「アンガー=怒り」の感情を自己管理して適切にコントロールすることを、「アンガーマネジメント」といいます。自分のなかに不意に湧き上がってしまう怒りの感情と向き合い、上手に付き合っていくための心理トレーニングのことであり、怒りの感情を無理に抑えつけたり、我慢を強いたりすることではありません。怒りの感情をコントロールすることによって、怒る必要があるときには上手に怒れるようになり、怒る必要のないときには怒らないで済ませるようになることを目指しています。

アメリカが発祥地。近年、日本でも注目されている

アンガーマネジメントの発祥は、1970年代のアメリカです。アメリカでは、怒りの感情は人の評価を下げるものと考えられてきました。そうしたネガティブな感情に振り回されることがないように、注目されるようになった心理教育といわれています。

当初は、犯罪者のための矯正プログラムなどとして活用されていましたが、2001年に発生した同時多発テロによって社会不安が増大したことで広く普及し、一般化していったようです。現在では、企業研修や青少年の教育、アスリートのメンタルトレーニングなどに幅広く導入されています。

日本での歴史はまだ浅いのですが、近年、ストレス過多となりがちな職場における円滑な人間関係の形成や、チームワークの醸成による生産性向上の効果などが注目され、社員研修として導入する企業が増えています。

怒りのメカニズムを知る

「怒り」の原因や表出の仕方は人それぞれですが、そもそもなぜ「怒り」の感情が生まれるのかについて考えてみましょう。

怒りの原因は自分のなかにある

怒りという感情は、自分の理想や期待、願望が裏切られたときに生じるものです。「こうありたい」「こうあってほしい」という自分のなかにある想いが発端となって、怒りという感情が生まれます。「こうあるべき」という想いや観念は、これまでに受けてきた家庭内でのしつけや教育、経験してきた心情や事柄などによって形成されるため、それぞれが持つ「べき」の基準も異なります。

怒りを形成する「一次感情」

心理学では、怒りは「自分を守るための感情」といわれています。怒りという感情が湧き出す前に、私たちは「悲しい」「悔しい」「つらい」「寂しい」「不安」「苦しい」といった一次感情を抱きます。そして、これらのネガティブな感情を心のなかにしまい込んで、蓄積する仕組みを持っています。

この蓄積された一次感情が許容量を越えたときに溢れ出すのが、怒りという感情です。この怒りの感情をうまく表現できなければ、ストレスとなって心身に悪影響をもたらすことにもなります。だからこそ、自分を守る感情である怒りと上手に付き合っていくためのアンガーマネジメントが注目されているのです。

また、怒りがネガティブな一次感情を引き金として湧き上がることに注目して、自分がどのようなときに「悲しい」「悔しい」といったネガティブな感情を持ちやすいのかを知り、そうした感情を溜め込まないように早めに対処することも大切です。

怒りの「性質」

怒りには以下のような性質・傾向があるといわれています。

高いところから低いところへ

「上司から部下へ」「先輩から後輩へ」というように、怒りは立場や力の強いところから弱いところへと流れていく性質があります。この性質を知ることで、誰かに怒りをぶつけられたときの感情を、さらに立場の弱い人へと伝えないようにコントロールすることが大切になります。

身近な人ほど強くなる

怒りには、身近な関係になるほど、強く大きくなりやすいという性質もあります。これは相手に対する期待値の高さが要因と考えられます。

怒りは周囲にも伝染する

怒りに限らず、私たちのなかに生じる感情には、伝染しやすいという性質があります。「楽しい」という感情が自然に周囲に伝わって、なごやかな雰囲気をつくり出すのもその一例です。怒りの感情は、ほかの感情よりも強いエネルギーがあり伝染しやすいといわれています。

モチベーションにもなる

怒りには大きなエネルギーがあります。そして、そのエネルギーが自らの奮起や成長の起爆剤として作用することがあります。たとえば他社との競合に負けた悔しさを、さらに自らを高めて成長のバネにするなど、プラスのエネルギーとして活用することができます。

アンガーマネジメントで実践してみたい3つのコントロール

「衝動」のコントロール

怒りの感情のピークは、最初の約6秒間にくるといわれています。この6秒間をやり過ごすことができれば、怒りの衝動を抑えることが可能です。そのための対処法として、怒りを覚えたら自分自身が感じている怒りの度合いを、点数化してみるという方法があります。たとえば人生最大の怒りを満点として、現在の怒りが何点になるかを考えることで怒りをコントロールしやすくなり、この間に怒りのピークも過ぎ去ってしまいます。

「思考」のコントロール

先に述べたように、人はそれぞれ自分のなかに「こうあるべきだ」という理想や願望を持っており、それが裏切られたときに怒りの感情が湧き上がります。そこで、まず自分のなかにどのような「べき」が存在するのかを知り、「べき」の尺度は人によって異なることを理解することから始めましょう。この「べき」の尺度について客観的に考えることによって、自分が許容できる範囲が定まり、不必要な怒りを回避することにつながります。

「行動」のコントロール

衝動による怒りの発露を抑え、自分自身の思考をコントロールすることによって、怒りを覚えたときの自らの行動に選択肢が生まれます。怒りの原因となったことが、自分にとって許せるものか、許せないものか、またそれが怒りによって変えられることなのか、変えられないことなのかを考えます。たとえば自分にとって許せないことであっても、怒りによって状況を変えられないと判断したならば、「どう行動したら状況を変えられるか」という考えに切り替えることができます。

【診断】自分の怒りの傾向を知る

どんなときに何に対して怒りを感じるのかは、人によって異なります。怒りの感情が湧き上がるときの傾向によって、怒りの感情への対処方法も異なるため、自分自身が怒りを感じる傾向を知っておくことが大切です。
「日本アンガーマネジメント協会」では、怒りの傾向を6つのタイプで分類する「アンガーマネジメント診断」をおこなっていますので、気になる方は診断を受けてみてはいかがでしょうか。

まとめ

怒りの感情は誰もが持っているものであって、けっして怒り自体が悪ではありません。しかし不必要な怒りは、自分を苦しめたり他者との関係を乱したりしがちです。アンガーマネジメントを身につけ、怒りを上手にコントロールできれば、怒りの連鎖を断ち切ることができるかもしれません。まずは自分のなかに怒りが生じるメカニズムを分析してみることから始めてみましょう。

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