労働契約申込みみなし制度
労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が違法派遣を受け入れた時点で、派遣先が当該派遣労働者に対して、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主)との労働条件と同じ内容の労働契約を申込んだとみなす制度です。また、派遣先等が労働契約の申込みをしたものとみなされた場合、当該違法行為が終了した日から1年以内に派遣労働者がこの申込みに対して承諾する旨の意思表示をすることにより、派遣労働者と派遣先との間の労働契約が成立します。ここでは、労働契約申込みみなし制度の対象となる4つの違法派遣についてご紹介します。
目次
労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣
労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣の類型は、次のとおりです。
1 派遣禁止業務への派遣
2 無許可事業主からの派遣受け入れ
3 いわゆる偽装請負等
4 派遣受入可能期間制限違反
1 派遣禁止業務への派遣
派遣が禁止されている以下の業務へ派遣した場合に、労働契約申込みみなし制度の対象となります。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療業務
- 士業
※詳細は「派遣が禁止されている業務|知っておきたいリーガル知識」をご覧ください
2 無許可事業主からの派遣受け入れ
無許可事業主から派遣労働者を受け入れることは禁止されています。受け入れた場合には、労働契約申込みみなし制度の対象となります。
必ず適正な許可のある派遣元事業主か否かの確認を派遣元の許可番号をもとに確認しましょう。許可番号は、派遣元に対し許可証の写しの提出を求めたり派遣契約書を確認したりすることにより調べることができます。
※詳細は「無許可事業主からの派遣受入禁止|知っておきたいリーガル知識」をご覧ください
3 いわゆる偽装請負等
実態は労働者派遣であるにも関わらず、労働者派遣法、または同法により適用される労働基準法等の適用を免れる目的で、請負契約等の名目で労働者派遣を受け入れた場合には、労働契約申込みみなし制度が適用されます。
偽装請負等により労働者派遣の役務の提供を受けた場合、以下の処分の対象になります。
- 行政指導(派遣法第48条第1項)
- 改善命令(派遣法第49条)
- 勧告(派遣法第49条の2第1項)
- 企業名の公表(派遣法第49条の2第2項)
4 派遣受入可能期間制限違反
常用雇用の代替防止と派遣労働者の固定化防止の観点より、派遣受入可能期間には制限が設けられています。定められた期間を超えて派遣労働者を従事させた場合、派遣先が労働契約を申込んだものとみなされます。
派遣受入可能期間には、原則として事業所単位の期間制限と個人単位の期間制限があります。
・事業所単位の期間制限:
派遣先の同一事業所に派遣できる期間は、原則3年が上限
・個人単位の期間制限:
同一の派遣労働者を派遣先の同一の組織単位に派遣できる期間は3年が上限
※事業所単位の期間制限及び個人単位の期間制限の抵触日に関しては、派遣元事業主から派遣労働者に対して、明示することになっています。
※詳細は「派遣受入可能期間の制限|知っておきたいリーガル知識」をご覧ください
「労働契約申込みみなし制度」でよくある質問
Q. 派遣労働者が労働契約の申込みを断った場合、派遣先は義務を果たしたと言えますか?
A. 派遣労働者が申込みを承諾しなかったときは、労働契約は成立しません。
Q. 適正な許可のある派遣元かどうかはどうしたら調べられますか?
A.厚生労働省職業安定局のHP「人材サービス総合サイト/労働者派遣事業検索」から調べることができます。
Q. 申込みの内容となる労働条件はどの時点のものになるのでしょうか?
A. 労働契約申込みみなし制度では、違法行為の時点における派遣元と派遣労働者の間の労働契約上の労働条件と同一の労働条件になります。
まとめ
労働契約申込みみなし制度が適用される4つの違法派遣(派遣受入禁止業務、無許可事業主からの派遣受入、いわゆる偽装請負等、派遣受入可能期間制限違反)についてご紹介しました。実際の運用に際して不明な点や判断に迷うことがありましたら、リクルートスタッフィングの担当までお問い合わせください。