「経験を活かして社会貢献したい」| シニア派遣活用による生産性向上―大手シンクタンク企業での活用事例

2021.05.06

「経験を活かして社会貢献したい」| シニア派遣活用による生産性向上―大手シンクタンク企業での活用事例

『人生100年時代』という言葉をよく耳にするようになりました。定年を迎え退職したあとも社会とつながり、仕事を継続したいという希望を持つ50代・60代は年々増加しており、男女ともに約80%をという調査結果が出ています※。
一方で、雇用側の企業にも採用や労働力確保の概念に変化が見え始めています。働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大の影響で長期計画が立てにくいなか、経験値のある即戦力人材に生産性高く働いてもらうことを求める傾向がより顕著になってきました。
この双方をWIN-WINにするひとつの仕組みが『シニア派遣』の活用です。シニア派遣の活用を先んじて実施している企業の一例をご紹介いたします。

※参考文献:明治安田生活福祉研究所「2018年 50代・60代の働き方に関する意識と実態」より

依頼の背景~専門知識をもったサポートスタッフが必要

今回ご紹介するのは、大手シンクタンク企業での事例です。こちらの企業の調査部門は、ほとんどが社員の研究員で構成されています。調査部門での仕事のひとつに、「国内と海外における業界ごとの認証や仕様の基準の違いを検証し、プロジェクトごとに資料にまとめる」、というものがあります。

この業務の進め方は、「各研究員が、必要とする資料やデータをサポートグループにいるドキュメント担当へ個別に依頼する」というスタイルが基本でした。しかし、各研究員一人ひとりが担当するプロジェクトの分野は多種多様であり、求められる専門知識も大きく異なるため、サポートグループで共通業務として対応することに限界がありました。よって、プロジェクトが発足する度に研究員側の負荷は高まるばかりだったのです。

そこで、共通化による組織対応ではなく、プロジェクト単位ごとに専門知識を有した派遣の活用を検討され、以下のような条件でご依頼をいただきました。

<就業日・時間>
・週4日
・1日6時間程度
<求めるスキル>
・電気工学もしくは電子工学の専門的な経験
・英語力
・的確にミッションを汲み取る能力

先方は当初、技術系無期派遣を想定されており、技術系専門の派遣会社に依頼されました。しかし、希望にかなった方が見つからず、リクルートスタッフィングにご相談をいただきました。
そこで、弊社担当者からシニア派遣活用のご提案をさせていただいたところ、この要件をすべて兼ね備える人物が見つかりました。それがこのあとご紹介する60代後半の派遣スタッフ、Aさんです。

応募の背景~技術・経験を役立て、日本社会へ貢献したい

Aさんは理系大学(電気工学科)をご卒業後、大手電機メーカーに40年以上勤務され、専門知識もさることながら、管理職や海外勤務の経験もある、素晴らしい経歴の持ち主でした。

現役時代は、いわゆる『仕事の虫』だったAさんですが、定年後は気持ちに余裕が生まれたことで意識が大きく変わり、地域活動への参加など、経済的な報酬を目的としない社会との接点へと時間を費やすようになりました。

そのような活動を通して、「これからの日本を背負う若い方に自分の技術・経験を役立ててほしい」「新たな仕事を開始することで日本社会へ貢献をしたい」という想いをもつようになったということです。

そして、あくまで選択肢を広げる1つのきっかけとしてリクルートスタッフィングへ登録されました。登録後、興味を持ったいくつかの仕事へのエントリーを重ねていくなかで、今回のお仕事の紹介情報がAさんの元に届きました。自分の今までの企業での経験、海外取引で培った英語力などを要望してくれている企業と仕事がそこにありました。

就業状況~不安が解消され、信頼関係が高まっている

以上のような出会いから、Aさんは、この大手シンクタンクで就業をして2年6ヶ月になります。

企業側はこれまでシニア派遣の受け入れは経験がなく、Aさんも派遣スタッフとしての就業は初めてでした。もちろん、はじめから不安がなかったわけではありません。

企業側が抱いていた不安:年下社員からの指示への抵抗感

仕事スタート当初、派遣先には懸念事項がありました。Aさんの経験については申し分が無い一方、「年下である社員からの指示への抵抗感、あるいは経験があるがゆえの固執や先走りが無いかどうか」、という点です。

しかし、この心配は杞憂に終わりました。Aさんの働く理由は、これからの日本を背負う若い方に自分の技術・経験を役立ててほしい、そして何より「社会貢献」です。そのため、Aさんは常に指示元である研究者がどのようなドキュメントをイメージしているのかを最優先に汲み取るようにしていました。自分の経験からくる正解ではなく、今の現場で求められている正解を意識し、確認するプロセスを踏んでいたのです。

派遣スタッフが抱いていた不安:ミーティングの方法

また、Aさんの希望を受け、双方が話し合いのうえで改善されていったこともあります。たとえば、コロナ禍に入ってからの対面ミーティングの在り方です。

派遣先はコロナ禍のなかで、多くの業務やミーティングをオンラインに移行していました。すでにAさんは業務にも慣れ、両者の信頼関係が構築されていたこともあり、コミュニケーションもオンラインを活用していました。

しかし、Aさんは週に1度は対面でのミーティングを提案されました。

Aさんの業務のひとつである文献調査は、単純にネット検索されるものを引用すればいいものではなく、論文を読み込み咀嚼したうえで、裏付けの根拠を考察することが求められます。

長い業務経験を通じて、上記の業務をするうえで、大事な部分や細かな点は対面ミーティングでの確認の方がオンラインよりも齟齬が生じないと感じていたからです。

この要望に対し、企業側は柔軟に対応しました。週に1回程度であれば、出社制限があったとしても実施可能な範囲と判断し、Aさんの提案を受け入れてくれました。

その結果、派遣先とAさんとの間における信頼がさらに高まり、派遣先からAさんへ対してより的確なアウトプットを求めることができるようになったということです。

結果~シニア層の派遣スタッフを増員

Aさんは、「自分の要望に柔軟に対応してくれる企業風土に感謝しています。今までの私のビジネス経験を還元できている実感があり、思い描いていた『社会貢献』を果たせていると思います」とお話ししてくださいました。

派遣先のご担当者も、当初懸念されていた不安もなく、指示通り業務遂行をしてくれることも含め、Aさんを高く評価されています。双方にとって、メリットのあるマッチングとなりました。

また、こちらの企業ではAさんの評価をきっかけに、シニア層の派遣スタッフをさらに増やされました。

プロジェクトごとに求められる分野の専門知識を持った60代・70代の派遣の方が、30代・40代の研究員のサポートをおこなうことで、プロジェクト全体の生産性向上に貢献できている状態です。

若手研究員の方が仰っていた言葉が印象的です。

「自分たちも将来はAさんたちのように、定年後も自分の経験を活かして社会貢献していきたい。」

Aさんの新しい働き方が、若い世代にも少しずつ影響を及ぼしているようです。

白水未央子

株式会社リクルートスタッフィング
総合戦略推進部 専任マネジャー


1994年に株式会社リクルートスタッフィング入社。営業および営業マネジャーを担当後、営業・販売領域のアウトソーシング事業や無期雇用派遣サービス「キャリアウィンク」など、複数の新サービス立ち上げを経験。時短・日短勤務の専門職派遣やシニア派遣など多様な働き方の推進、総合的な営業企画を担当。2018年より現職。

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