【セミナーログ】今 必要な組織対話「失敗しない1on1のポイント」|世古詞一氏

【セミナーログ】今 必要な組織対話「失敗しない1on1のポイント」|世古詞一氏

現在、多くの企業や組織で1on1の導入が進んでいますが、継続していくことに課題を抱えているところが少なくありません。本セミナーでは、対話によるマネジメントを提唱する1on1の第一人者である世古詞一氏に、「失敗しない1on1のポイント」について講演いただきました。1on1のポイントやコツを、Why(なぜ対話が必要か)、What(何を話したらよいか)、How(どのように話せばよいのか)という観点からお話しいただいています。とくに、What(何を話したらよいか)については、具体的なテーマも提示されていますので、マネジャーの方もメンバーの方もぜひ参考にしてみてください。

※こちらの記事は2021年3月3日に開催されたセミナーのログになります

世古詞一氏

株式会社サーバントコーチ代表取締役
組織人事コンサルタント

【Why】なぜ対話が必要か。1on1の目的を上司―部下ですり合わせる

従来の面談との目的の違い

まずは、1on1目的の理解から始めましょう。

“1on1Meeting” は「1対1の対話」と訳すことができ、「主にメンバーの育成・モチベーション向上を目的とした、定期的かつ高頻度な(マネジャーとメンバー)の対話」としています。メンバーのための時間、ということですね。

従来の面談と比較して、もう少し詳しく目的の違いをみてみましょう。

従来の面談は、目標設定や査定のために上司が役割上やらなければいけないものでした。そのため、目標シートを記入したり、査定に必要な情報を集めたり、アウトプットが明確でした。

一方、1on1ミーティングの目的は、相互の信頼関係づくりや継続的な成果を生むための土台づくりを目的としています。また、不安の解消をすることで今の業務に集中してもらい、全体を通して働きがいの向上を目指しています。

最低月1回以上の頻度を推奨していますが、従来の面談と比べて、1回1回のアウトプットが見えにくいという特徴もあります。

1on1が必要とされる社会的背景

なぜ今1on1が必要とされているのか、社会的な背景も確認しておきましょう。

1on1が注目されているのにはさまざまな理由がありますが、大きな要因はここ数年、「職場の関係性を高めるための上司と部下のコミュニケーションが急激に減ってきていること」です。とくにコロナ禍で在宅ワークが増え、コミュニケーションはさらに減ってきています。

「コミュニケーション」といっても、組織で行われているコミュニケーションは、大きくふたつに分類できます。

ひとつは、短期的な成果・目標・業務に焦点をあてた話です。これは結果を出すための情報交換です。

もうひとつは、個人に焦点をあてた対話です。個人の考えや気持ち、成長や将来についての対話です。

「個人に焦点を当てた」話は、以前は、飲み会の場や喫煙室、会議の前後などでなされていた会話ですが、現在はそのような偶発的な場が生まれなくなってきました。

また、話す場があったとしてもセクハラやパワハラを懸念して、個人に1歩踏み込んだ話がはばかられることもあるでしょう。

結果的に薄い雑談のみで、今職場で行われているコミュニケーションは、仕事を進めるための話が多くなっています。これは、コミュニケーションをしているというより情報交換をしているといえます。

そのような会話だけで個人にあてた話がないと、「私はなぜここにいるのだろう」というような疑問が生まれやすくなります。そのため、意味や感情を見出す「対話」をする場が必要とされています。

リモートワークにおけるオンライン1on1の必要性

とくに最近は、リモートワークが増えているからこそ、定期的な1on1のニーズが高まっています。それは以下のような理由からです。

不安要因の増加
人が見えないことで「声がかけづらい」→ちょっとした確認ができない→もやもや→不安→不満

プロセス理解の重要性
状況が見えないので、評価が成果物だけの判断になりがち。どのように仕事を進めているかの部分が見えづらいことで、一緒に仕事をしている感じが生まれない。

モチベーションの低下
業務への飽き、創造性などの刺激の低下、マネジャーや会社からの期待・必要とされている感、つながりが薄れている

しかし、このような状況だからこそ、1on1をおこなう大義名分ができ、組織でやりやすくなっているともいえます。

1on1がうまく進まない理由

対話の必要性が理解されているものの、1on1は、「スキップされがちな予定」ともいわれます。続かない理由として、以下のような声が聞かれます。

対話の正解が分からない
上司が言いたいことを言う場になっている
話が場当たり的で、思いつきで進んでいる
形式的なものに終始している
・従来型の業務進捗確認の場になっている
雑談ばかりで意味を感じられない

話や状況がマンネリ化し、マネジャーもメンバーも結局なにを話せばいいか困ってしまう…これでは、せっかく始まった対話が組織で行われなくなってしまうおそれがあります。

対話にはコミュニケーションスキルが必要です。そこで、1on1をするうえで、

【What】(何を話すか)
対話テーマの網羅性・MECE(ミーシー)感
【How】(どう話すか)
テーマをどう深掘り「対話」するか

について、お話します。

【What】1on1では何を話せば良いか?テーマを準備する

これまで、「マネジャーとメンバーの間ではどんな対話が必要か」、という点はあまり定義されていませんでした。

そこでまずは、「マネジメントで必要な対話とは何か?」を整理してみましょう。

すり合わせ9ボックス

組織で働く人が考える3つの要素に「業務」「個人」「組織」があります。
入社当時は、「早く業務を覚え、個人として成長し、組織に貢献したい」と、この3つがつながっていて、高いマインドを持ちやすい状況です。

ところが、次第に仕事に慣れルーチン化していくと、「何か業務がつまらない、(個人として)成長実感がわかない、組織が何をしたいのか分からない」と、この3つの要素が離れがちになります。

そこで、対話によって、この3つのつながりをすりあわせる必要があります。

「業務レベル」「個人レベル」「組織レベル」「過去」「現在」「未来」の3つの時間軸で分け、すり合わせの9ボックスをつくります。この9つのテーマがマネジメントにおいて必要な対話です。

「すり合わせ9ボックス」の活用ポイント

このボックスを利用して2つのことをしてみましょう。

1.各ボックスをすり合わせる

ボックス(箱)には奥行があり、奥にいくほど、潜在的なものでもやもやしていることです。表面に出てきているものは、問題として顕在化しているものです。そこで、奥にある、本音や不安を深掘っていきましょう。

これによって、相互理解や問題解決、納得感、不安解消、課題発見というような効果が期待できます。

2.各ボックス間をつなげる

次に各ボックス間を俯瞰してつなげます。たとえば、「組織(レベル)から落ちてくる目標を業務(レベル)として行う中で生まれた不安を、個人(レベル)の将来キャリアにつなげることで解消する」、などです。

これにより、組織→業務→個人がつながり、成長実感や働きがいを得られ、成果が継続するといった効果につながっていきます。

いくつかのテーマを例にとって、どんな点に注意して対話したらよいか、質問例などを具体的に紹介します。

業務レベル×現在「業務不安」

「業務不安」のテーマにおいての対話のポイントは以下の2つです。

1.「業務進捗」ではなく「業務不安」にフォーカス

質問例
△「あの件はどう進んでいるの?」
〇「あの件進めていて何かひっかかることはあるかな?」

上は上司の不安、下はメンバーの不安です。関心を「業務(コト)」ではなく「メンバー(人)」に向けることが大切です。

いい質問ができるようにするためには、いかに現場を見ておくか、気にしておくかが大切です。細かく見えていると、つつくポイントが的確になり、逆に見えていないと、大きな質問(最近どう?何か困っていることある?など)になってしまいます。

2.問題解決より、「一緒に問題を探すスタンス」で

問題に対して答えをすぐに提示するのではなく、メンバーに100%クリアじゃないことを持ってきてもらい、メンバーの考えや気持ちを深く知る時間にします。

質問例
・業務の目標や内容や進め方で100%クリアじゃないことは?
・強いて言うなら一番重そうな案件は?
・今は大丈夫だけど、今後のリスクになりそうなことはありますか?

業務レベル×未来「業務改善」

内省サポートとして、たとえば「業務改善」のボックスでは以下のような質問を投げかけてみましょう。

・今より仕事を早くするためのアイデアはありますか?
・新しいサービスや商材について考えていることはある?
・仕事の価値を高めるにはどうしたらいいだろう?

すぐに答えられなくても問題はありません。このような質問をしておくことで日々の業務の中でも自分で考えるようになり、「こんなことを考えてみたんですが、どう思いますか?」など、1on1を上司の意見を聞く場として活用し、自発的な提案をすることにつながってきます。

個人レベル×現在「ライフスタイル」

ライフスタイルについては、「健康」「趣味・関心時」「家族・交友関係」「ライフワーク(副業)」、4つのテーマについて相互理解します。

セクハラ・パワハラの観点から聞きづらいポイントかと思いますが、「大丈夫だったらでいいんだけど」などのクッション言葉を活用したり、「私が(管理者として)知っておいたほうがいいことで、家族のことなど仕事以外で気になることはありますか?」といった聞き方をしたりするとよいでしょう。

個人レベル×将来「将来キャリア」

将来キャリアで大切なことは、肩ひじ張りすぎず、味方になってあげることです。2つの点に留意して対話しましょう。

1.「アドバイザー」(指南)を目指しすぎない
カウンセラー(相談)のスタンスで協力・サポートできることを探すようにしましょう

2.定期的な確認が重要
やりたいことは変わるので「前回こんなことやりたいと言ってけど、どうかな?変わっていないかな?」などの質問で確認するとよいでしょう。

将来キャリアの話をする際に、将来やりたいことはなくても問題ありません。今に集中できていることが重要です。

組織レベル

組織レベルについては、現在・過去・未来まとめてポイントをお話します。以下の3つの観点で対話します。

1.理念・制度・カルチャー
・具体事象から理念について考える
・組織の歴史について触れる

2.人間関係
・チームメンバーに関してのこと
・自分の上司など、メンバーが知らない組織の人を知ってもらい組織とつなぐ

3.組織方針
・会社や部署の方針・戦略などの理解度を個別に確認する機会
・ホウレンソウから逆ホウレンソウ+雑談へ

すり合わせ9ボックスの活用法

すり合わせ9ボックスのテーマは、対話前・対話中・対話後に活用できます。

<対話前>
事前準備に活用。今回話すことのテーマの検討
<対話中>
双方で9ボックスを眺めつつ対話を行い、アイデアやインスピレーション創出のヒントに活用
<対話後>
振り返りに活用。話した内容をボックスに当てはめて俯瞰し、テーマの偏りなどを分析。

すべてのボックスについて話す必要はありません。必要なテーマを必要なタイミングで必要な人と話しましょう。

このようにテーマがあると、戦略的に対話ができます。つながりを持たせることができたり、偏りを軽減させたり、意図的な対話ができるようになります。

【How】「どのように」話せば良いか?上司は部下の話を整理するスタンスで臨む

では最後に、どのように話せばよいのか、Howの話をします。

組織で対話を浸透させるために必要なこと

組織で対話を継続・浸透させるために、マネジャーは「コミュニケーションスキル(傾聴・承認・質問)」、メンバーは「主体的準備」を意識するとよいでしょう。

マネジャーは、メンバーの話に対して問題解決をすぐしようとするのではなく、傾聴や質問を通して整理してあげるというスタンスで臨みましょう。問題に対して、「答えを与える、アドバイスする」ではなく、「自ら話してもらう」ことによって、メンバーの内省サポートを行います。自分を客観視して内省を行うことで、気づきによる成長と自発的改善につながります。

また、マネジャーは質問して深掘ることについてメンバーに「合意」をとっておくことが重要です。1on1の目的や狙いを話し、なぜ色々質問をするのか説明をしておかないと、急にたくさんの質問をされて不安に感じてしまうメンバーもいます。

総括を相手に聞きアクションプランにつなげる

1on1の成果としては、以下のようなものがあります。

1.新たな知識・情報の獲得
2.問題解決(解消)
3.課題発見
4.モチベーション、気持ちの変化
5.新たな気づき・学び・アイデア(総括)
6.アクションプランの策定

「今日いろいろ話してみてどんなことが一番印象に残った?/気づいた?」と総括を相手に聞くと、色々考えて答えてくれるので、メンバー自身のなかでの学びが得られます。それをふまえて、「次なにしようか?」とアクションプランで終えられるときれいに終えることができ、組織の中で1on1 が効果的に浸透していきます。

1on1ミーティングを継続させていくことは、一見大変なことのように思えますが、コツさえつかんで、お互いに慣れてくれば当たりまえのことになってきます。
そして、組織において対話の場が確立されることは今後、確実に組織の競争力の源泉になるでしょう。

ぜひ、楽しみながら実践・継続していってください。

世古詞一氏

株式会社サーバントコーチ代表取締役
組織人事コンサルタント

1973年生まれ。千葉県出身。 組織人事コンサルタント。月1回30分の1on1ミーティングで組織変革を行う1on1マネジメントのプロフェッショナル。 早稲田大学政治経済学部卒。 株式会社サーバントコーチ代表取締役。株式会社VOYAGE GROUPフェロー。 Great Place to Work®Institute Japan による「働きがいのある会社」2015、2016、2017中規模部門第一位の株式会社VOYAGE GROUPの創業期より参画。 営業本部長、人事本部長、子会社役員を務め2008年独立。コーチング、エニアグラム、NLP、MBTI、EQ、ポジティブ心理学、マインドフルネス、催眠療法など、10以上の心理メソッドのマスタリー。 個人の意識変革から、組織全体の改革までのサポートを行う。 クライアントは、一部上場企業から五輪・プロ野球選手など一流アスリートまでと幅広く、コーチ・コンサルタントとして様々な人の人生とキャリアの充実、目標実現をサポートしている。

著書

シリコンバレー式 最強の育て方―人材マネジメントの新しい常識1on1ミーティング―(かんき出版)
対話型マネジャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術(日本能率協会マネジメントセンター)

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