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サクッとわかるITトレンド7月号:プログラミング的思考はiPhone1台でも学べる時代!

スマホを操作するだけで、プログラミングの「考え方」が学べるって一体どういうこと?『iPhone1台で学ぶプログラミング』著者が解説。QRコード生成を例にカンタンな実践方法もご紹介します。自分のスマホをより便利にしたい方も、ぜひお試しください。

【解説】増井 敏克さん
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『基礎からのプログラミングリテラシー コンピュータのしくみから技術書の選び方まで厳選キーワードをくらべて学ぶ!』(以上、技術評論社)、『IT用語図鑑[エンジニア編]』、最新刊には『iPhone1台で学ぶプログラミング 日常の問題を解決しながら、論理的思考を身に付ける本』(翔泳社)などがある。

なぜ、プログラミングの「考え方」を知ることが重要?

2020年には、小学校でプログラミング教育が必修となり、子どもたちがプログラミングを学ぶ教室を街中で見かけることが増えました。2025年1月に実施される大学入学共通テストでは、「情報」という科目内でプログラミングやデータサイエンスに関する問題が出題されることが決定しています。

つまり、現在の子どもたちが社会に出てくる5年後、10年後といった未来では、全員がプログラミングの基礎を学校で学んでいることが想像できます。

一方で、現在の社会人の多くは、プログラミングを趣味や仕事にしている人以外は、その考え方を学校で学んだことはありません。プログラミングについての知識を持っている若い世代の登場で、仕事の進め方などが変わってくるかもしれません。

学生が学んでいるのは、プログラミング「言語」ではない

「プログラミングを学ぶ」というと、プログラミング言語を学ぶことを想像する人もいるでしょう。しかし、実際に現在の学校教育で取り組まれているのは「プログラミングの考え方を学ぶこと」です。

全員がプログラマーになるわけではないので、時代によって変化するプログラミング言語を学ぶのではなく、他の分野でも応用できる「プログラミング的思考」が注目されているのです。

小学校などでは、Scratchと呼ばれる教育用のプログラミング言語がよく使われます。ブロックを並べるだけでさまざまな処理ができて子どもでも楽しく、プログラミング的思考を学べるようになっています。

実はiPhone一台でプログラミングの「考え方」が学べる

大人がプログラミング的思考を学ぶ際にオススメなのが、iPhoneに標準で搭載されている「ショートカット」というアプリを使う方法です。実行したい内容を日本語で入力して検索し、出てきたものを並べ替えるだけで、簡単なプログラムを作成できます。

「QRコードを生成するアプリ」を作る過程を例としてご紹介

QRコードの生成にはさまざまな方法がありますが、以下の方法では、iPhoneの標準機能だけでQRコードを生成できます。

■下準備:ステップを考える

QRコードを生成するまでのステップを考えます。すると、下図のようなステップが必要なことがわかりました。

iPhoneのショートカットアプリでは、これらのステップにあわせて「アクション」という操作を並べるだけで、このようなプログラムを作ることができます。

QRコードを生成する「アクション」の3ステップ
  1. クリップボードを取得:クリップボードにコピーしておいたURLを取得する
  2. QRコードを生成
  3. クイックルック:生成したQRコードを画像として表示する

■手順1:起動

ショートカットアプリを起動し、右上にある[+]ボタンを押します。これで新しいショートカットを作成する画面が開きます。

■手順2:ステップ「入力」

画面下にある[Appおよびアクションを検索]をタップし(上図参照)、開いた画面の一番上にある検索欄に「クリップボード」と入れます。表示された中から[クリップボードを取得]を選びます。

■手順3:ステップ「QRコードの生成」

同じように画面下にある[Appおよびアクションを検索]から検索欄に「qr」と入れます。表示された中から[QRコードを生成]を選びます。

■手順4:ステップ「出力」

最後も同じように、検索欄に「クイック」と入力し、表示された中から[クイックルック]を選びます。このとき、クイックルックの入力(変数名)が自動的に選択されない場合は、図のようにタップして[QRコード]を選びます(自動的に選択された場合はそのままでOKです)。

■完成:ステップ「画像の表示」

これでQRコードを生成するプログラムができました。[完了]を押し、任意のURLをコピーした状態で、ショートカットアプリのトップにあるアイコンを押すと、ショートカットが実行され、QRコードが生成されます。

プログラミング的思考習得の大切なこと。iPhoneを使わなくても学べることは?

このように、日本語で入力して検索し、選ぶだけでプログラムを作成できることがわかるでしょう。

このショートカットアプリでは、条件に応じて分岐したければ「もし」で検索すれば「if文」というアクションが表示されますし、同じ処理を繰り返したければ「繰り返す」で検索すれば「繰り返す」や「各項目を繰り返す」といったアクションが表示されます。

これらを組み合わせれば、本格的なプログラムを作ることもできるのです。

また、プログラミング的思考として大切なのは、「実現したい処理を手順ごとに分割し、正しい順番に並べる」ことです。コンピュータは前から順番に処理しますので、この順番を間違えると正しく動作しません。

これは料理を作るときも同じで、使う材料を考え、正しい順番で処理することで美味しい料理ができあがります。

「ショートカット」アプリなどのツールを使わなかったとしても、このような考え方を学び、練習していくことが重要です。

「誰でもプログラミング時代」になっている?

上記の例は単純すぎてプログラムを作ったという実感がない人も多いでしょう。しかし、実際のプログラミングも、すでに用意されたライブラリを呼び出すだけで済むことも多いものです。

近年は、ScratchやiPhoneのショートカットなどの便利なアプリが登場したことで、プログラミングを学び始めるハードルは非常に低くなっています。

誰もがプログラミングの考え方を当たり前に使う時代が来ているのかもしれません。これからもさらに活躍し続けるために、プログラミングの考え方を知っておくことは重要でしょう。そのために必要なのはiPhoneだけ。プログラミング言語が難しくて挫折した人も、ぜひ挑戦してみてださい。

 

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