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図でパッと理解!ネットワークのトラブル対策

ネットワークのしくみ基本の『き』を図解つきで確認しませんか。今回は、ここまでの知識を応用して【遅い・つながらない】を解決しましょう。トラブルが起きたときは『切り分けて考えること』が大切。その方法とは。

ここまでのネットワーク知識を理解している利点

前回の連載では、自宅のネットワークについて簡単に説明しましたが、たったこれだけの知識でも、ネットワークに対してさまざまな手段や対策が講じられるようになります。

環境を快適にできる

Wi-Fiの規格と周波数帯の特徴(電波干渉や遮蔽物への弱さ)を知れば、PC・スマートフォン・環境に合わせて最適な周波数帯域を選択することができます。

 

ネットの危なさがわかる

PCやスマートフォンでWi-Fi接続をした際、あるいは有線LANで接続してもルーターを経由してインターネット接続していることがわかりました。

逆に言えば、通信の出入口であるルーターに脆弱性があると、いくらPCのセキュリティを強化しても乗っ取りなどが起こりうることを意味します。

このような意味からも「古いルーター(セキュリティアップデートが行われないサポートが終了したルーター)」は利用してはいけないことが理解できます。

 

トラブルシュートが行えるようになる

ネットワークの通信を理論的に把握できるようになったため、トラブルが起こった際に「問題の切り分け」が行えます。何が問題なのかを判断できるようになり、また適切な対応をとれるようになります。

知識の応用1:問題を切り分けて考える

さてここからは、今まで覚えた知識を応用して、ネットワークにありがちな「遅い」「つながらない」を解決してみましょう。

ネットワークの基礎的な知識があれば、「何がトラブルを起こしているのか」が類推できるようになり、トラブル時にも焦らずに問題をつぶしていくことができます。

 

インターネットにつながらないときは?

インターネットに接続できない場合は、上図「回線」「Wi-Fi」「PC」すべての問題が考えられますが、まず問題を切り分けるために別のネットワーク機器(別のPCかスマートフォン、スマートフォンの場合はモバイルデータを切る)をWi-Fi接続します。

ここでインターネットに接続できれば「回線」「Wi-Fi」に問題がないことが確認でき、「PC」に問題があると特定できます。

また、別媒体でもWi-Fi接続さえできない場合は「Wi-Fi」の問題、Wi-Fi接続はできるがインターネットができない場合は「回線」の問題になります。

オンライン会議で音声が途切れたら?

オンライン会議の音声が途切れる、あるいはビデオがスムーズではないなどの場合は、上図「回線」「Wi-Fi」のパフォーマンスの問題が考えられます。

原因の特定は、「PCとルーターを有線LAN接続」してみればわかります。有線LAN接続でパフォーマンスに問題がなければ「Wi-Fi」の問題と特定できます。

問題が起こったときの共通アプローチ

まず、どんな問題が起こった場合でもPCを再起動して再試行します。それでも問題が起こる場合はルーターの電源を切って(モデルによっては電源を抜いて)、再度電源を入れて数分経過後に再試行します(ただし、第2回で解説した「自動判別機能」任せの二重ルーター環境では、電源を抜くと環境が誤判別される可能性があるため非推奨)。

IT系の機材のトラブルは電源を入れなおすことで、問題が解決することがあります。

全般的な対策

今までインターネットに接続できていたのであれば、「回線」の問題は考えにくくなります(ONU・モデムの故障は可能性としてはかなり低い)。なお、回線速度がそもそも遅いなどの場合は、インターネットプロバイダーの乗り換えや回線変更なども検討します。

「Wi-Fi」の問題は、まず無線LAN親機のアクセスポイント設定を見直します。

また、環境に最適な周波数帯を選択してもWi-Fi接続の遅さが改善しない場合は、無線LAN親機(ルーター)の買い替え(最新の無線LAN規格に対応したもの、ストリーム数が多いもの)を検討します。なお、Wi-Fi 6Eなど最新の無線LAN規格を利用するには、PC側も対応が求められる点に注意が必要です。

「PC」の問題である場合は、PC側のWi-Fi接続設定を見直します。セキュリティソフトの設定なども関係するため、必要に応じてネットワーク設定のリセットなども必要になります。

ちょっと一息
どんなときでも役立つ「有線LAN接続」の確保

Wi-Fi接続にトラブルがある場合や、あるいはテレワークにおけるオンライン会議などでWi-Fiが原因でパフォーマンスに問題が出るなどの場面において、役立つのが「有線LAN接続」です。

有線LANであれば先の図の「Wi-Fi」の問題は起こらないため問題の要因を探りやすくなります。

また、電波干渉を受けないためパフォーマンスの問題も解決できるのも特徴です。なお、最近のノートPCには有線LANポートが存在しないことが多くありますが、USB有線LANアダプターを用意しておけば、ノートPCでも有線LAN接続を行うことができます。


▲USB有線LANアダプター

知識の応用2:自宅のWi-Fiをセキュアかつ高速化

ネットワークを構築・最適化するうえで「無線LANルーターの設定」は避けて通れません。

ただPCにWi-Fi接続を供給するのであればそのままでよいのですが、

  • 自宅で作業するうえでWi-Fi接続をセキュアかつ高速化したい
  • 家族のWi-Fi接続と業務のWi-Fi接続を分けたい
  • 外出時に外部からLAN内のネットワーク機器にアクセスしたい
  • 外出先からPCをリモートコントロールしたい など

これらの場面では、無線LANルーター本体の設定が必要になります。

無線LANルーターの設定コンソールへのアプローチ

無線LANルーターはPCのWebブラウザーから、ネットワーク経由で設定コンソールを開いて行います。

ちなみにWebブラウザーで指定すべきアドレスはメーカー/モデルによって異なりますのでマニュアルや本体添付のシールなどを参照の上「http://[セットアップ用のアドレス]」という形で入力します。

ほとんどのルーターは設定コンソールにログオンするためのアドレス指定として、「ルーターのIPアドレス」を代用することが可能です。なお、設定コンソールにアクセスする際にWi-Fi接続では不安定になる場合や設定内容によっては切断されてしまうため、可能な限り「有線LAN接続」で行います。


▲Webブラウザーのアドレス欄に、ルーターのマニュアルに指定されたアドレスを入力する。なお、ほとんどのルーターは「IPv4デフォルトゲートウェイ」指定でも、無線LANルーターの設定コンソールにアクセスできる。


▲出荷時に定められたユーザー名とパスワードを入力すれば、無線LANルーターの設定コンソールにアクセスできる。

無線LANルーターを設定することの危険性

無線LANルーターの設定コンソールでは「無線LAN機能」や「ルーター機能」などの設定を行えますが、無線LAN機能の変更をすればネットワーク機器が接続できなくなる可能性があります。

また、ネットワーク経由でのアクセスになるため、ルーター機能を変更した場合は「無線LANルーターの設定コンソールにさえアクセスできなくなる」という可能性があります。

これらを踏まえると現在の「正常な無線LANルーターの設定」をファイルに保存しておくこと、またどうしても無線LANルーターにアクセスできなくなったときのためにリセットする方法を知っておく必要があります。リセットののち、正常な設定をリカバリすれば、元の状態を復元できるからです。


▲「現在の無線LANルーターの設定」をファイルに保存。これで仮に問題が発生しても、リセットの上で正常な設定を書き戻せば正常な状態を復元できる。

無線LANルーターの設定と活用

設定の活用としては、

「ネットワークの分離」による、LAN内のネットワーク機器間の通信許可と隔離

家族やゲストにインターネット接続を許可しつつ、LAN内のネットワーク機器への接続を許さない

「MACアドレスフィルタリング」による、ネットワーク機器の接続制限

「ポートマッピング」による、特定ポートに届いた通信を指定のPCに送るなど

外部からサーバーやPCのリモートコントロールを行う

どれも通信理論と具体的な活用場面をイメージして設定すれば、難しくはないので必要に応じてチャレンジしてみるとよいでしょう。

注意

ネットワーク用語というのは全般的に統一されていないことが多く、同じ機能を示す用語であっても違う言葉で表現されていることがあります。

とくに「無線LANルーターの設定コンソール」におけるネットワーク用語の不統一はひどく、メーカー/モデルによって同じ項目名であっても違う機能を示したり、あるいは同様の機能であっても異なる項目名が割り当てられていたりします。

このようにルーターはメーカー/モデルによって機能に対する項目名が異なるため、各種設定を行う際にはマニュアルも合わせて参照するようにします(ルーターの多くは、Webでユーザーマニュアルを公開している)。

ネットワーク基本の『き』について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。ネットワークはきちんと理論的に考えて考察・構築すればそれほど難しいものではありません。これから学ぶ新しいネットワーク知識についても同様です。

わからないことがあれば、ネットワーク用語についてはざっくり捉え(ネットワーク用語は場面によって意味や範囲が異なることがあるため)、基本的な機能や役割から実際の環境構築をイメージして学ぶようにするとよいでしょう。

ネットワークのしくみ基本の「き」
IPアドレスとは?
ルーターの役割とは?
・つながらない対策は?

【筆者】橋本 和則 さん
Microsoft MVP(Windows and Devices for IT)を17年連続受賞。IT著書は80冊以上、ベストセラー&ランキングトップ書籍多数。『時短×脱ムダ 最強の仕事術』(SBクリエイティブ)『Windowsでできる小さな会社のLAN構築・運用ガイド』(翔泳社)など。IT機器の使いこなしやWindows OSの操作、カスタマイズ、ネットワークなどをわかりやすく個性的に解説した著書が多い。震災復興支援として自著書籍をPDFで公開。Windows関連Webサイトの運営のほか、講演・講義、著者育成など多彩に展開している。

※本記事に記載されている会社名、製品名はそれぞれ各社の商標および登録商標です。

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