
ハードウェア編、最後の今回はプログラム実行の仕組みです。プログラムはどのように実行されるのか、プログラマであっても説明できる人は少ないでしょう。IPAの基本情報技術者試験でも出題されますが、馴染みない言葉が並んで、皆さんが難しいと感じやすいポイントでもあります。
今回は、わかりやすくするため、端折った部分もありますが、この内容を知っておくと、「コンピューターがどんなものなのか」を理解する助けになるでしょう。

プログラムはどのように実行されるのか?
▼これまでの【基本情報技術者試験のトッカカリ】
プログラムが実行される仕組み
プログラムは、普段、内部ストレージにありますが、多くのパソコンでは、プログラム実行時には、メモリ(主記憶装置)にコピーされ、CPUで処理されます。
では、メモリとCPUでは、何が起こっているのでしょうか。
プログラムは、小さな命令の集団に分かれて処理されます。その命令は、次々とメモリからCPUに読み込まれて処理されるのですが、その時に使われるのが、CPUの中にある「プログラムカウンタ(命令アドレスレジスタ)」「命令レジスタ」「番地レジスタ(アドレスレジスタ)」の3つのレジスタ(記憶装置)です。簡単にいうと、これらのレジスタになんらかの情報が記録されて、CPUがゴニョゴニョするのです。順番に一つずつ見ていきましょう。
①呼び出し表の「プログラムカウンタ(命令アドレスレジスタ)」
CPUは、命令をいっぺんに全部処理することはできないので、メモリで処理を待っている命令たちに「1番の方お入りくださ~い」と順番に次々呼んでくるのですが、「次は何番を呼ぶ」とカウントし、その順番の命令がメモリのどこにあるのかを記録しているのが、プログラムカウンタです。
CPUは、待っている命令たちの中身を知っているわけではなく、単純に、プログラムカウンタのカウントしている番号順にCPUの中へご案内します。
「お呼び出し表」は、大した仕事ではないと思うことなかれ!命令は長いものもあれば、短いものもあるので、そのあたりも良い案配でやってくれるのが、プログラムカウンタです。お呼び出しして、処理が進んだら、次の番号を呼び出します。
②命令を保持する「命令レジスタ」
命令レジスタは、命令アドレスレジスタ(プログラムカウンタ)と名前が似ていますが、別のものです。紛らわしいですね!誤字じゃないんですよ。
CPUは、プログラムカウンタに従って、メモリ(主記憶装置)から、命令を自分のところにコピーしてきますが、命令をコピーして、置く先が「命令レジスタ」です。命令には、「命令部」と「オペランド部(アドレス部)」という部分があります。CPUは、命令部を解読器(デコーダ)に投げて解読してもらったり、オペランド部の情報をアドレスレジスタに投げたりします。
③データの場所を記録する「番地レジスタ(アドレスレジスタ)」
番地レジスタ(アドレスレジスタ)は、命令において参照データがどこにあるかを保持するものです。命令のうち、「オペランド部(アドレス部)」には、命令を実行する対象となるデータ(参照するデータ)がメモリのどこにあるのか書いてあります。そのオペランド部の情報を番地レジスタは保持し、CPUは、それを見てデータの場所にアクセスします。
あまり聞き慣れない言葉が多くて、マゴマゴする方もいらっしゃるかもしれませんね。全体の流れをザックリ整理しておきましょう。
まず、動くのはCPU君、そしてレジスタは記憶装置です。レジスタは、CPU君の中にあります。メモリが家の中のタンスだとすれば、レジスタは、CPU君のポケットです。
プログラムは、一旦、メモリに保存されますが、そこから命令として、もっと小さい単位で実行されます。
そのとき、メモリ(タンス)から、命令レジスタ(自分のポケット)に命令がコピーされ、処理が始まるのです。命令は、プログラムカウンタ(別のポケット)にある情報に従って、順に呼び出されて、コピーされます。コピーされたら、命令のうち、「命令部」の情報は、解読器(デコーダ)に投げられて解読されます。「オペランド部(アドレス部)」の情報は、番地レジスタに保持され、CPUが処理をする時に、そこに書いてある情報を元に、データにアクセスするのです。
命令の中身「命令部とオペランド部(アドレス部)」
チラっと書きましたが、命令の中は「命令部」と「オペランド部(アドレス部)」で構成されています。
命令部とは、CPUが「なにをすべきか」という命令が書かれています。といっても、文章で書かれているというよりは、対応する命令が数字で表記されているのです。
オペランド部は、「なにかをする対象」が書かれています。そのまま格納されていることもありますし、対象(データ)がメモリに置いてある場合は、メモリ内の住所(番地)が書いてあります。そもそも、オペランドとは、「被演算子」の訳で、「演算される側」という意味です。住所が書いてあることが多いので、アドレス部とも言います。
つまり、命令部には、「足し算して!」などの命令が書かれていて、オペランド部に「タンスの3段目にある数字を」のように対象が書かれているのです。
アドレス(番地)の指定の仕方
オペランド部(アドレス部)では、演算の対象となるデータの場所を指定していますが、それにはいくつかの方法があります。最後にそれを紹介しておきましょう。
①命令のオペランド部に格納する(即値アドレス指定)
命令のオペランド部にそのまま格納する方法です。「即値アドレス指定」と言います。直接格納しているのですから、アドレスの指定をしていないのでは?と思いますが、大人の事情で、このような名前になっています。予想が付くと思いますが、もちろん小さいものに限る話です。
②メモリ内の格納場所を記載する(直接アドレス指定)
データが大きい場合は、メモリ内(タンスの中)に置いておき、命令のオペランド部には、そのデータの置き場所(アドレス)だけを記載します。「タンスの何段目」みたいな感じです。「直接アドレス指定」と言います。即値アドレスと直接アドレスとでは、名前が紛らわしいですね。「即」はピッタリとくっつくことなので、そのように覚えておきましょう。
③メモリ内の格納場所を書いてある場所を記載する(間接アドレス指定)
ちょっとここからややこしい話になってきます。直接アドレス指定では、アドレスをそのまま書きましたが、「間接アドレス指定」という方法もあるのです。
間接アドレス指定は、まずは「タンスの5段目を見ろ」と書いてあるので、5段目にアクセスすると「データの場所は12段目にあるよ」と書いてある方法です。何のために、そんな意地悪をするのかと思うかもしれませんが、昔の汎用機コンピューターでは、この方法を取らないと、大きなデータを扱えなかったのです。現在では、どちらかというと、参照先の切り替えに便利なので使われるのではないでしょうか。
④ややこしい感じで記載する(相対アドレス指定/インデックスアドレス指定/ベースアドレス指定)
この他に、「相対アドレス指定」や、「インデックスアドレス指定」、「ベースアドレス指定」があります。これらは、仕組みとしては同じです。
相対アドレス指定を例に取ると、オペランド部に書いてある値に、プログラムカウンタ(命令アドレスレジスタ)にある値を足すことで、アドレスを指定するものです。
これも「意味がわからない!!」と思われそうですが、要は、指定するアドレスを変動させたい時に便利なのです。
インデックスアドレス指定は、プログラムカウンタではなく、インデックスレジスタを使う方法で、ベースアドレス指定の場合なら、変わりにベースレジスタを使います。要は、「オペランド部に、どこかのレジスタの値を足す」ってことです。
ニャゴロウ先生のまとめ
さて、ハードウェアのうち、プログラムの実行に関わる部分について、3回で説明してきましたが、なんとなく、掴めたでしょうか。
1回目でもお話しましたが、ハードウェアは、最近、実際に触ったことのある人が減ってきているので、想像しづらいジャンルになっています。CPUの中身の話はともかく、CPU自体や、ストレージ、メモリなどは、画像検索すれば、すぐに実物の写真を見ることができるのですから、ぜひ、見てみてくださいね。

技術ライター、イラストレーター。システム開発のかたわら、雑誌や書籍などで、データベースやサーバー、マネジメントについて執筆。図を多く用いた易しい解説に定評がある。主な著書に『なぜ?がわかるデータベース』(翔泳社)、『図解即戦力 Amazon Web Serviceのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』『ゼロからわかるLinuxサーバー超入門 Ubuntu対応版』(技術評論社)、『仕組みと使い方がわかる Docker&Kubernetesのきほんのきほん』(マイナビ出版)がある。
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