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航空自衛隊からDJへ。フットワーク軽く、前へ進む

航空自衛隊から一転、芸能界をめざし新しい道に踏み出した、工藤辰浩さん(26)。生まれ育った福岡から大阪、そして東京へ。自分の直感と好奇心を信じて決断してきた。自由に見える生き方を裏から支えているのが、派遣での仕事だという。

引きこもっていた中高時代。音楽ばかり聴いていた

月に2回、「HARLEM」「CAMELOT」などの大きなクラブで、プライベートでDJを務める。かけるのは80~90年代に流行したディスコナンバーなどの古い音楽だ。彼がブースに入る夜は「TA2HI6=タツヒロの音楽」を聴きに、やってくるゲストがいる。

タツヒロの素顔は、音楽とダンス、チャレンジすることが大好きという工藤さん。21歳のときに故郷の福岡から大阪へ、23歳で東京へと活動の場を移した。派遣スタッフとして携帯電話の販売で生計を立てつつ、この5年間、芸能事務所に所属している。

「実は僕、中学高校とずっと引きこもりだったんです。学校にもほとんど行かずパソコンの前に座ってポップス、洋楽、アニメソングまで、音楽ばかり聴いていました」

と、意外な過去を明かす工藤さん。学校へ行かなかった分、音楽の世界に深く入り込んだ。音楽からの興味で16歳から始めたダンスは、大阪時代でのショーダンサーの仕事にもつながった。
そして今、力を入れているのが、クラブで音楽を担当するDJだ。
「小さなころから音楽が大好きだった。自分にとって欠かせない存在だと思います」

自衛隊での生活が、今の自分につながっている

意外な過去は、引きこもりだけではない。

高校を卒業したが、不登校気味で勉強もせず、親ともケンカばかり。家は出たいが先へ続く道がない。そこで工藤さんが選んだのは、なんと航空自衛隊。公務員試験を受けてなんとか合格したものの、新しい生活は過酷だった。

「めちゃめちゃ厳しかったです。朝6時に起きて、上半身裸で数キロ走るんです。訓練で、顔を泥水の中につけてほふく前進したり。生活面でも門限はあるし、外泊も許可なしではダメ。本当に辛かった」

だが、その自衛隊での3年4ヵ月の生活が、今の自分の基礎になっているという。

「家にいたときは親にまかせっきりで、洗濯機ひとつ使えなかった。訓練や慣れない家事などで叩きのめされ、未熟だった自分を思い知らされた」

同じ釜の飯でつながった自衛隊時代の仲間も財産だ。テレビに出たとき、見たよ!と連絡してくれることもあったいう。

仕事と芸能活動、どちらも自分には欠かせない

その後、工藤さんは福岡を出てから生活をするために、ずっと携帯電話の販売を続けている。

「自衛隊では人と話すことがあまりなかったので、芸能界に入るなら、人と話すトレーニングが必要だと思って始めました。お客さまの話をよく聞いて、ニーズは何かをしっかり聞き出すようにしたら喜んでもらえた。『工藤さんから買いたい』と言われることも多いんです」

サービス精神が客に伝わり、成績は優秀。現在は固定の決まった店舗ではなく、1週間おきにさまざまな店舗をまわって売り上げを伸ばすサポート役だ。

「仕事は大好きで、ストレスはないです。携帯電話などのガジェットも好き。派遣としてやっているのは、お金がもらえて休みが確保できるから。DJは常に新しい音楽を勉強しなくてはいけないし、機材にもお金がかかる。自分に合った働き方だと思う」

自衛隊をやめるとき、両親からは覚悟をもってやれと言われた。頼るわけにはいかない。工藤さんの夢は、音楽で自分を表現し、いつか名前が売れるような仕事をすることだ。その夢をしっかり支えてくれているのが、仕事。どちらも欠かせない。

「いい方向にしか向かっていない」という工藤さんの笑顔には、生活の充実と、未来への希望が見てとれた。

DJに欠かせないヘッドフォン。これで音楽をひたすら聴く

愛用のヘッドフォン、SENNHEISER(ゼンハイザー)HD 25。イヤーピースが回転し、片耳でも聴けるなど、プロ仕様としても有名な製品だ。
「常に新しい音楽を聴いて勉強しないといけないから、家に帰ってからはこのヘッドフォンで音楽を聴いています。自分の年代で80年代、90年代の古い音楽を知っている人は少ないというのが、DJとしての強み」

DJといえばアナログレコードというイメージが強いが、現在はパソコンから特殊なレコードに音を送る「バイナル」という方法がある。曲を聴き、取り入れ、編集にも使うアップルのノートPCは工藤さんにとって仕事道具ともいえる。
「自分の好きな曲を人に聴いてもらえて、良かったよ、リスペクトしているよ、と言われると本当にうれしい。それがやりがいになります」

大きなタブレットは常に持ち歩いている。
「接客業なのでミントも必需品。結構高いしすぐなくなってしまうので、大きなサイズを買っています」

ライター:有賀 薫(ありが かおる)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)