採用情報サイト
平本 早苗
INTERVIEW

不安によって可能性にブレーキをかけない。 女性執行役員が実体験を通じて掴んだもの

フルタイム 営業職 管理職 仕事のやりがい・成長 女性管理職 職場・上司との人間関係

平本 早苗

執行役員

執行役員として活躍する平本 早苗。2022年10月現在は、東京営業統括部の責任者として東京23区の事務職派遣領域を担当しています。そんな平本にもキャリアに悩み続けた時代がありました。女性役員のパイオニアとして辿った軌跡を振り返ります。

CHAPTER 01
がむしゃらに走り抜けた20代。ふとした瞬間に感じた、将来への不安
がむしゃらに走り抜けた20代。ふとした瞬間に感じた、将来への不安

新潟県で生まれ育った私は大学卒業後、幼いころから憧れていた客室乗務員を目指していました。しかし、残念ながら思うような結果は得ることができず、夢をあきらめ、株式会社リクルートに入社しました。そこで、中途採用媒体の営業職として働きはじめたのが、私のキャリアの出発点になります。

当時の私は、憧れの職業に就けなかった無念さや、後ろめたさをどこか感じていた気がします。一方、そのコンプレックスは、何がなんでもここで成果を出さねば、というバネにもなり、仕事に取り組む原動力になっていました。営業職の女性はまだまだ珍しい時代でしたが、次第に周囲から認められる機会も増え、営業という仕事が持つおもしろさを感じ、まい進する日々でした。

というと、順風満帆なキャリアに見えますが、30代を迎えるころから、私はキャリアに対して漠然とした不安を抱くようになりました。目の前の仕事はそれなりに楽しく、責任感をもって取り組めている。でも「この後私はどこを目指し、どうなっていきたいのか?」という自分の将来像がどうしても見えてこなかったのです。

今から30年ほど前の世の中は、「女性は結婚したら仕事を辞めることは珍しくない」という時代。女性が将来のキャリアを自ら語り、どうしていきたいかという明確な意志を持ち、その実現を目指す人は私の周囲には皆無でした。結婚して出産した後に理想とする母親像を語る同僚は複数存在したものの、当時、私には結婚・出産の予定もありません。30才を目前に、今後どう在るべきか、を紐解こうとしても、社内のロールモデルも見つからない。私自身は、自分の将来の姿にイメージがつかないまま、「これから、どうしていけばいいんだろう」という焦りの感情が強まっていったのを今でも鮮明に覚えています。

そんな焦りの中、自分のキャリアの方向性を明確にするために思いついたのは、今までとは異なる環境に身を投じること。今の職場や職務に不満はないものの、職場から少し離れ、冷静に考えていこうと思い立ち、当時実施されていたリクルートグループ内の異動制度を活用して株式会社リクルートスタッフィングに転籍することを選択しました。

数あるリクルートグループの中から「派遣ビジネス」を選んだのは、かつて、短い間ではあるものの私自身が派遣スタッフとして働いていた経験があること、その際感じた派遣事業というサービスがとても良いものだと感じていたからです。

「派遣」という働き方を選択する利用者は、当時女性が圧倒的に多い状況でした。派遣事業という仕組みを考えたり、世の中のサービス認知拡大に寄与したりすることは、私自身の向かうべき方向性を明らかにすると同時に、もしかしたら、同じように迷いを持ちながら働く女性たちに対して、何かできることがあるかもしれないと思ったのがきっかけです。

CHAPTER 02
不安によって可能性にブレーキをかけない
不安によって可能性にブレーキをかけない

リクルートスタッフィングに転籍してからは、がむしゃらに目の前の業務に取り組むことで、将来への不安や迷いをかき消してきたように思います。リクルートスタッフィングは、当時から成果主義のカルチャーが浸透していたため、成果をしっかり出せば、女性であっても、中途入社という立場でも、チャンスがありました。有難いことに、私も転籍2年後にはマネジャーになり、その後も部長職として新規事業の立ち上げや営業の責任者を務める機会をもらい、自然とキャリアを切り拓いていけたのだと思います。これは会社に感謝です。

そんな歩みを経る中で、私自身の目指すキャリア像やスタンスを明確にするに至った印象的な出来事が2つあります。

1つ目の出来事は2002年、マネジャーとして勤務していた時のことです。現在リクルートスタッフィングでは、定期的な1on1面談が浸透し、上司は部下が抱えている悩みや将来的なビジョンを理解し、対話を繰り返すことで部下の成長をサポートする仕組みがありますが、当時の1on1面談といえば「業績をどう上げていくか」「どうすればもっと営業力が磨けるか」といった日々の営業行動に関する話題が中心でした。

男女雇用機会均等法施行後、時代の経過とともに、次第に部下の女性たちも結婚や出産だけでない、働き方や将来のキャリアについての関心が大きくなるのを感じました。今までは仕事の“HOW TO”しか聞かれなかった1on1面談で、今後のキャリアについて相談を受けることが目に見えて多くなっていました。

とくに女性の部下からは、

●「平本さんはいつまで仕事を続けるんですか?」
●「結婚・出産しても仕事を続けたいでのですが、営業職を続けても会社はOKですか?」
●「将来も営業を続けていけるのか、自分が本当に営業に向いているのか自信を持ちきれません……」
●「将来どんなキャリアアップをしていきたいと考えていますか?」

などといった声に触れ、自分自身で自問する機会も多くなりました。

彼女たちからこぼれるように絞り出されるそれらは、私が抱えているのと大差ない、漠然とした不安の数々。まるで自分自身を見ているように感じましたね。先輩や上司である私自身が、目指すキャリア像を語ったり、それに向けた体現をしようとていない、ということに気づかされた瞬間です。身近にロールモデルがいないから、部下たちは(私自身も含め)漠然と不安を払拭できないのではないか、と感じるようになりました。

そのことが、期せずして自分を客観視する機会につながったと思います。それまでの私は、何かをただ漠然と求めて、根無し草のように転籍してみたり、成果を出し、会社が与えてくれた役職や機会を受け身でこなしたり、今思えば誰かが何かを与えてくれる機会をただ模索し続けていただけだと気づかされました。

迷っている場合ではない。私自身が、まずリクルートスタッフィングという自分の置かれた場所にしっかり根を張って、自分の花を咲かせること。そして迷える部下の女性たちの前で「私自身がロールモデルとなって、新しい価値観を体現する存在になり、1つの道を示すこと」が自身の取り組むべきテーマであり、その自覚を強めていく大きな契機になったと思います。

そこからは、稚拙ながらもありたい自分の姿を思い描き、勇気をもって言葉にし、少しずつではありますが、変わっていったのではないかと思います。

「この仕事は自分に合っているか?」とか、「将来ずっと続けられるか?」など、答えがない問いを漠然と悩み続けて、不安になる。不安が払拭できないからチャレンジせずに断念することは、もったいないことだと思うようになりました。それよりも、「答えがないなら出るまで前進して進み続けてみること、もし万が一壁にぶつかったらその時にまたどうするか考えればいいんじゃない!?」と私自身が、部下や後輩に心の底からそう言えるようになったのは、大きな変化でした。

私がまず変わり、女性の部下たちの背中を押すことが増えると、まずはやってみようと思える人がだんだん増え、連鎖していく。そんな良い循環が社内に少しずつ生まれていくのを目の当たりにして、嬉しく感じ、マネジメントの楽しさに気づいたことを昨日のことのように思い出します。

CHAPTER 03
覚悟ができるその日まで、選択肢を閉ざさない

二度目の転機が訪れたのは、時は流れてそれから約10年後の2014年ころのことです。当時私は部長として働いていました。

それは、当時の上司である役員とのキャリア面談(1on1)でのこと。リクルートスタッフィングでは年に数回、定期的に直属の上司と1対1でみっちり行われる面談があります。上司から自分への期待を受けたり、自分のやりたいこと、そのために身につけるべきこと、経験すべきことなどを会話できる貴重な機会です。

当時の私は、チャレンジしたい目標や組織に貢献したい強い気持ちはあり、それを上司に語るものの「役職を上げることに興味はないんです」と言い続けていました。そんな私に対して、当時の男性役員はそれを真に受け過ぎることもなく「チャレンジしたいことがたくさんあるんだよね?役職に興味がないと言うけれど、チャレンジやもっと成長することを優先すべきじゃない?」と、ことあるごとに言い続けてくれました。

しかし、私はいつも「頑張りたいし成長したいですが、役職を上げることに興味はありません」と答え続けていました。そう答えながら、まだまだ頑張りたいし成長もしたいのに、私はなぜ役職には興味がないと言い続けるのだろうかと、自分に対してモヤモヤし続けました。上司の問いかけがきっかけとなり、かなり長い期間そのモヤモヤと向き合うことになります。

最終的に私が役職への無関心を振る舞い続けていたのは、自分にとって都合の良い逃げ道を探していたからだと気づきました。自己成長もしたい、チャレンジもしたい。でも役職という責任を背負って成果を出す。そのコミットが怖いから、自信がないから、私は逃げていただけだと。それに気づいた時は情けなく、ショックでした。この気づきが私の二度目の大きな転機になりました。

自己成長ややりたいことができる環境を追い求め続けるのであれば、その対価として、能力を発揮するように求められるのもコミットを期待されるのも当然です。普段、部下に対して「困難に対峙して乗り越えることが大事」とか「チャレンジする前にあきらめるな」とか言っておきながら、自分はそれをちゃっかり回避しようとしていた。失敗したくない、自信がないからチャレンジしないという私自身の内面に気づいてしまった瞬間でした。

誰しもチャレンジする時に100%の自信なんてあるわけがありません。でもまずはやってみようという想いを持ち、次なるチャレンジをし、壁を乗り越えるロールモデルになりたいし、部下のためにもそれが必要だと、確信しました。上司が私の言葉を真に受けず、問いかけ続けてくれたこの機会が、私が長い間超えられなかった「大きなチャレンジをする覚悟」を得るきっかけになったと思います。感謝しかありません。

結果、その1年半後から、女性として初の役員に任用され、新しい役割を担うことになりました。結論としては、やってみて良かったと思います。時には大変だし難しい役割ではありますが、メンバーとともに一緒に考え、大きな責任を担うことは、かけがえのないやり甲斐にもなっています。

CHAPTER 04
女性も男性も等しく活躍できる社会の実現を目指して
女性も男性も等しく活躍できる社会の実現を目指して

私の内なるモヤモヤを察していたのかはわかりませんが、「成長したいのに、なんで役職に就くことだけそんなに嫌悪するのか?」と、私の発言を真に受けずにことあるごとに、何度も問い続けてくれた、元上司の役員には心から感謝します。その上司が問い続けてくれなければ、今の私は存在していません。そして、私がその殻を破れたからこそ、今リクルートスタッフィングにはきっと将来私の後任を担う、たくさんの女性役員候補者が後ろに控えています。

こうした経験から、私は部下の「役職に興味はありません」という言葉を真に受けることはありません。そして、「役職者になりたい?」という質問もできるだけしないようにしています。

ただ、「成長すること、自分のスキルや社会人としての力をより一層つけることには興味がある?」「選択肢を広げたいと思っている?」「何かの機会があれば、仲間や会社を助けられるような存在になりたい?」と聞くようにはしています。そしてその問いかけに対しての彼女たちの答えは100%YESです。

その答えを聞くたびに勇気をもらいます。彼、彼女たちには、覚悟と強さを身につけられる十分なポテンシャルがあるし、成長を続ける中で、きっと、今まで以上のチャレンジを望むときが来るはずです。だからこそ、自ら覚悟を固める前に自分の選択肢を閉ざさないよう、いろんな角度から応援するようにしています。私が上司にそうしてもらったように……。

かつての私がそうだったように、まだ起こってもいないことを憂慮して自身の成長にブレーキをかけたり、役職を拒否したりしてほしくないと思います。もっとフラットにいろいろなことにバリアを張らず、挑戦する人が増えてほしいと思っています。チャレンジしてみて上手くいかなければ、そのときもう一度考えればいいだけのことですし、その機会も何かを得る経験です。

私自身も、数多くの「不安の壁」を上司や会社に与えてもらった機会により取り払ってきました。今いる従業員にも、そしてこれから入社するまだ見ぬ未来の従業員にも、リクルートスタッフィングも、私自身も耳を傾け、チャレンジを応援していきたいと思っています。

これまでいろいろな方から与えてもらった機会を、私も社会に還元していく順番になり、そのことが私なりの社会への恩返しだと思っています。今与えられた環境で、できることに懸命に取り組み、役員として、また1人の女性として、だれもが自分らしく働ける社会を作るために、背中を押し続けていきたいです。

社員一覧へ戻る
Facebook Twitter Line