
新しいことを始めるとき、無意識に自分でブレーキをかけていたり、思い込みからできないと決めつけてしまうことは意外と多い。1冊の本を3分で読むなんてことも、そのひとつだろう。そこで、らしさオフラインでは、素早く本を読む方法を説いた『瞬読』の著者である山中恵美子さんをお迎えし、「できない」という思い込みを外して物事に取り組む秘訣を紹介した。

一文無しの頃に学習塾をスタート
山中さんは本題に入る前に、自身の経歴について紹介。現在は珠算塾、学習塾、予備校を運営しているが、学習塾をスタートしたころには、リーマンショックにより夫が投資でマイナスとなり、資金がほとんどなかったのだという。
「子どもの頃からそろばんを習っていて、4歳には掛け算と割り算の計算ができました。高校生の時には、子どもにそろばんを教えるようになっていました。そんな中で学習塾を開校したのは10年前。2人の子どもを抱えて、保険を解約し、身の回りのものもたくさん売りました。その後、小学校3年生の息子が『塾に行きたい』と言うのでいろいろ見学に行くのですが、少年野球を続けながら通える塾がない。そこで、お金もないままに甲子園を目指しながらでも通える塾を作ることにしたんです」
コンセプトは「自分の子どもを通わせたい塾」。他の学習塾の真似をするのではなく、自分の理想と思える塾を目指した。
本を素早く読む『瞬読』は、塾の生徒向けに教え始めたサービスだという。
1冊を数分~30分で読める『瞬読』は誰でもできる
ここで、山中さんが参加者に問う。
「なぜ、読書が必要なのでしょうか? なぜ、早く読めた方がいいのでしょうか?」
何人かにマイクを渡すと「新しいことを知るため」「仕事に活かしたい」などの読書をする理由が出てきた。また、「仕事と子育ての両立で、本を読む時間がなかなか作り出せないから早く読めるようになりたい」という意見もあった。本を読むその先に、何らかの目的があるのだ。
瞬読は、誰にでもできる、と山中さんは言う。
「瞬読を使って、1冊を2分で読める子どももいます。数分で読んだ本の内容を、30分かけて原稿用紙に書くことができる。私も初めは信じられませんでしたが、塾の生徒たちはこれをこなしています。評判になったので大人向けにも始めました。大人で1冊を2分で読めるのは50人に1人くらいですが、1冊5分から30分くらいなら、誰でもできるようになります」
できるためには、できると信じることが大切
瞬読ができるようになるためには、まず「できる」と思うことが大切だと山中さん。
「人間の意識は、顕在意識と潜在意識でできています。普段は意識していない潜在意識が、自分のいろいろな基礎を作っています。例えば『東大に合格するのは難しい』『スポーツで優勝するのは難しい』『本1冊を3分で読むのは難しい』と決めてしまっているのは自分の潜在意識なのです」
過去の経験から、「自分には無理」と決めてしまっている潜在意識を「できる」ように書き替えるのが大切なのだと言う。
いきなり「本を3分で読める」と思うのは難しいので、「まず、言葉を変える」のがお勧めだ。山中さんは言葉の影響を認識してもらうために、逆のアプローチで伝える。
「すぐにやる気をなくす方法があるんです。『忙しい』『大変』『難しい』『疲れた』『どうせムリ』という言葉を発すること。このような言葉を発すると、脳が口にしたことを実現しようとしてしまいます」
そこで、プラスの言葉を発するように心がけると、潜在意識が変わっていくのだとか。「ツイてる!」「楽しい!」「ありがとう」「嬉しい!」「幸せ!」「できる!」「最高!」「ラッキー!」などがお勧めだ。
ここで、スポーツ選手の事例を紹介した。メジャーリーガーの大谷翔平選手や、世界的プロゴルファーの石川遼選手、サッカーのAリーグで活躍する本田圭佑選手などは、小学生や学生時代に「○○になる」「○○を実現する」と決めてそのように文集などに書いている。そう言い切って、思い続けることが大切だと山中さんは説く。
今回は、著書『瞬読』を参加者全員にプレゼント。瞬読の内容は本を見てほしいと言う。
「ただし、瞬読ができれば幸せになれるというわけではありません。『3分でできる』と思えることが大切。これができれば、他のこともできるようになるからです。『できる』と思えるメンタルを手に入れた人は、さまざまなことができるようになるはずです」
ことばのパワーを使うためにもうひとつのおすすめは、夜寝る前に「今日も幸せだった」と口に出して言うこと。さらに、朝起きてから「今日も幸せだった」と言うのだそう。過去形で言うことにより、潜在意識を変えていくことができるのだそう。
最初はそのように思えなくても、いつもプラスのことを口にして生活してみよう。気が付いたら、ポジティブな気持ちになれるように。
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)