
4年前から海の近くへ住まいを移し、隔週で実家へ帰り、母の介護を手伝っている皆川奈美子さん(57)。「30代、40代の頃に一生懸命働いた」あと、現在は派遣スタッフとして都内へ通勤している。最近、週5日勤務から4日勤務に切り替え、休みの日は海のそばでゆっくりと過ごす。そんな皆川さんのライフスタイルを語っていただいた。
*オンラインで取材を行いました
*掲載している写真は、ご本人からご提供いただいたものです

(左インタビュイー、右ライター)
大好きな旅行会社でペースを落として働く
旅行代理店のカウンターで長らく接客業をしていた皆川さん。もっとも忙しかった時期には、お客さまの漠然とした要望を聞きつつその場で調べて予約を取り……とマルチタスクをこなしていた。
「行きたい場所もはっきりとしないお客さまが数多くいらっしゃいました。質問を重ねながら着地点を見出し、適切なパンフレットを見つけ、その場で予約状況を調べ臨機応変に対応していきます。接客しながら電話応対することもあり、反射神経が要求される仕事でした。今考えると聖徳太子のようで、よくやっていたなと思います。リピーターの中には『世間話をしている間に予約が取れているのがいいわ』と言ってくださる方もいました」
ところが2020年頃、接客しながら予約していると「今、話しかけて大丈夫ですか」と言われ、お客さまを置き去りにしていたと気づく。皆川さんは、引き際だと思った。ちょうどコロナの時期で旅行会社の店舗が激減していたのも、カウンター業務を引退する理由のひとつになった。
その後は別の業界で働いたが、やはり旅行に関わりたいと思いなおす。現在は旅行会社で航空券の予約や発券業務、宿泊の手配などを担当している。旅行の仕事だけでなく、旅行会社の雰囲気も自分に合っていると感じている。
「管理職に女性が多く、個人的には、女性も働きやすい業界だと感じています」
現在の発券業務も楽しく、1日があっという間に過ぎていく。海の近くに住んでいるため、都内にある就業先までの通勤時間は1時間程だが、年齢的にも、足腰を鍛えるためにたくさん歩くのは喜ばしいことだと考えている。
介護の手伝いのため、隔週で実家へ
現在は、母の介護の手伝いのため隔週で実家に帰っている。実家には両親と姉夫婦が住んでおり、母の介護は主に父が担当。買い物などの生活面のサポートは姉夫婦が担っている。
「母が20年程前に脳梗塞になり、左半身が不自由で車椅子で暮らしています。10年程前からほぼ歩けなくなり、トイレには一人で行けません。週3日のデイサービスへの送迎と、自宅での介護は父がメインでやっており『ボケなくていい』と、元気にこなしています。ただ、家族の負担もあるため『定期的に帰って来てもらえると助かる』と相談がありました。私は主に母の話し相手として隔週で帰っていますが、家族からは『息抜きの時間ができるからありがたい』と言われています」

実家へ帰るときには、休みの前の日に就業先から直接行くことが多い。就業先から実家まで約2時間、実家から自宅まで帰るのは約3時間かかる。現在は週4日勤務なので、土日と合わせて連休になるときは3泊4日で帰省する。
「土日に1泊2日で帰ることもできますが、それでは交通費を考えても短く、体力的にも負担が大きい。週5日勤務から週4日勤務にしてもらい、余裕をもって帰省するのが自分には合っています。週4日勤務にしたいと申し出たときは、すんなりと了承いただけてありがたかったです」

海の近くでゆったりとした暮らし
4年前に神奈川の海の近くへ引っ越しをした。夫が海の近くに住みたい、と言い出したのがきっかけだという。
「海の近くに住んでみると、時間の流れが違います。価値観に変化が起き、日々の小さなことに喜びを見出せるようになりました。以前はしょっちゅう行っていた旅行も、それほど必要ありません」
19歳からほぼ途切れずに猫を飼っており、今も2匹の猫と一緒に暮らしている。

「見た目が愛くるしくて、触るとふわふわしていて癒されます。猫の程よい距離感が心地いい。冬の時期は暖かいし、いいことしかありません」
帰省しているときには、猫の面倒は夫が見ている。帰省しない休日は、猫と過ごすか、家の周囲でゆったりと過ごすことが多いのだとか。
「家から10分程歩くと海に出られるので、少し散歩に行くだけでも気分が晴れます。日帰り温泉に行ったり、音楽ライブに行ったりすることもあります。夫がギターを弾くので、夫のバンドのライブに行くことも」
あと数年で60歳。今の仕事を終えても、パートやバイトなどは続け、社会と接点を持ちながら暮らしていきたい。海の近くで、猫と夫と一緒にのんびり……それが皆川さんの幸せの形なのだろう。
実家の近くで買ったハシビロコウのトートバッグ

猫だけでなく動物全般が好きだという皆川さん。実家の近くでお気に入りの喫茶店に行ったときに必ず立ち寄る用品店があり、そこでハシビロコウのトートバッグが目にとまった。
「何とも言えないテイストが気に入りました。もったいなくて使えずに飾ってあります」
トートバッグの隣に写るのは実家の猫。自宅の白猫「殿」君のお父さんだそう。
ライター:栃尾 江美(とちお えみ)







