派遣で働くエンジニアのスキルアップを応援するサイト

PRODUCED BY RECRUIT

【インタビュー】すべてはExcelの使いこなしから始まったーー事務からSEへの転身の秘訣は面倒くさがること!

エンジニアとしてのキャリアを考える上で、スキルアップに不安を持つ方は多いのではないでしょうか。株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、スキルアップのために努力されている登録スタッフにインタビューをし、普段のお仕事で気を付けていることや、スキルアップのための取組み方について、定期的にご紹介します。

今回、お話を伺った橋爪千鶴子さんは、一般事務からSE、いわゆるITのエンジニアへと転身を果たし、自身の可能性を着実に広げながら活躍中。この先も事務の仕事を続けていけるだろうか?何か強みを持っておいた方がいいのではないか?ーーそんな不安を抱えている方にとって、行動のヒントになるはずです。

橋爪千鶴子さん

事務の仕事を突き詰めるためにパソコンを購入

現在の就業先では、イベントの企画・運営に関わるメール配信データの更新や、ツール開発などを担当している橋爪さん。

その仕事内容は、現場のニーズを聞き取り、それを実現するためのツールを設計し、プログラミングを駆使して組立てる、まさにSEの仕事である。

しかし、そんな橋爪さんも最初からSEだったわけではない。むしろコンピュータとは縁遠い存在だったと言えるかもしれない。

学生時代に栄養学を勉強し、栄養士の資格を取り、商品開発の仕事を目指し、新卒時には大手パンメーカーに就職した橋爪さん。1990年のことである。しかし、配属されたのは営業部で、販促や市場調査データの管理、各種の資料作成などを担当したが、パソコンに本格的に触れたのは、その時が初めてだった。

「パソコンとワープロって、どう違うの?というレベルでしたね(苦笑)」

事務の仕事を突き詰めていくうちに、パソコンに興味を持ち、自宅用のパソコンを購入した。これを機に、いろいろなことに挑戦。Excelのみならず、Web制作にも興味を持ったという。

「HTMLで<font color=”red”>と打ち込むと、Webページの文字の色が赤くなる。そんなちょっとしたことに、驚きを覚え、俄然楽しくなりました」

f:id:itstaffing:20180315113145j:plain

面倒くさがることはエンジニアへの第一歩!

パソコンに触れていくうちに、パソコンを使った仕事をしてみたいと思い、転職活動を始めるものの、なかなか思い通りにいかなかった。結果、派遣としての道を選び、前職の経験が活かせる事務職のなかから最初に紹介されたのは、マンション開発を営む大手企業だった。

この会社では、月次の稟議の進捗管理などを担当した。2~3カ月が過ぎた頃のこと。Excelで手間のかかる作業をしていた橋爪さんは、就業先の同僚から「ハッシー、Excelのマクロを使ってみたら?」というアドバイスをもらう。

「思えば、この一言があったから、今の私があると言っても過言ではありません。今でも感謝しています」

Excelの使いこなしに興味があった橋爪さんは早速「マクロ」という耳慣れない機能を使ってみた。最初は、普段自分が行っている手順をExcelに記録させ、記録された手順を自動的に実行させるところから始めてみたという。

自身の性格を「面倒くさがりだけれど心配性、そして想像力がたくましい」と自己分析する橋爪さんにとって、面倒な作業を自動化するマクロとの出会いは衝撃的だった。

何度も行う処理を記録して再生する。普段からExcelの操作をしているので、敷居はそれほど高くはなかった。そして、持前の想像力を働かせ、あれもこれもマクロ化していくうちに、さらなる深みへと足を踏み入れていった。

「関数には見向きもせず、いきなりマクロからVBAにのめり込んでいきました(笑)VBAを覚えた当初は、どのような処理もVBAで記述していましたね。でも、それだと他の人がソースコードを見たときに『何をしているのか』が判然としません。なので、現在は、関数で出来ることは、できるだけ関数を使うようにしています。VBAは最終手段ですね」

f:id:itstaffing:20180315113126j:plain

常識を「知らない」強みもある

その後、橋爪さんは、建設会社や電機メーカーで開発業務に携わったほか、都市銀行や自動車メーカーで一般事務やOA事務の仕事なども相変わらず手掛けた。

事務の経験しかなければ、仕事選びは事務に限られてしまうが、Excelのマクロという世界に一歩踏み出したことで、選択の範囲が開発業務にまで広がったのだ。

しかし、橋爪さんのプログラミングは事務の現場で独自に学んだ、あくまでも我流である。開発の現場で通用したのだろうか?

「その点では、本当に恵まれているなと感じました。建設会社では、ITベンダーに常駐した時期もあり、周囲のSE方から、いろいろなことを教わりました」

プログラム中で利用する変数の名前の付け方に、自身の「素人っぽさ」を痛感したこともあるという橋爪さん。プログラミングの常識を知っているのは強みだが、知らないからといって不利になることはない。

「私が作ったWebページだけ落ちるんです。周囲のエンジニアに聞いても原因がすぐには分からない。調べていくうちに分かったことは、各ページの先頭に書いてある一文が抜けていたということ。実はバッファを開放するための命令だったのですが、誰もその一文が、どのような役割のものか知らなかったんです」

知らないからこそ、より深く知るチャンスに出会える。これは強みと言えるだろう。

f:id:itstaffing:20180315113129j:plain

メーカーの開発部門も太鼓判を押す要件定義力

一方で、橋爪さんにはこれまでの経験から「知っている」強みがあった。

自動車メーカーの海外マーケティング部門の仕事をしていたときのこと。輸出先の車種の仕様設定をシステムに入力するのが主な仕事だったが、その結果は2カ月後に紙で出てくる時代だった。

「2カ月後に出てきた紙を海外に送るのですが、今どき何故?と思いました。システムからCSVでダウンロードできるのに」

そこで橋爪さんがCSVをExcelに読み込むマクロをVBAで作成し、以後、設定を入力したら、すぐに海外にExcelシートを送れるようになったという。

開発業務の中でも、現場のニーズを拾い上げシステムの仕様に落とし込んでいく「要件定義」という仕事は、システムを使う側の業務に関する知識が求められる。これは、事務の現場で様々な業務の効率化に取り組んできた橋爪さんの大きな強みだ。

「現場の方は、必ずしも要件を伝えられません。それなら私が間に入って、上手に伝えていければいいなと考えています」

派遣としての時給も、当初は一般事務ということで1630円からスタートした。当時では、決して高いとはいえなかった。しかし電機メーカー勤務時は、リーマンショックの時期でありながら、最高で2540円まで上がったという。それも橋爪さんのスキルと実績が高く評価された結果であり、これからも現場で必要とされていくことは間違いない。

事務からエンジニアを目指す人たちへ!

そんな橋爪さんに、事務からエンジニアを目指したい人たちへのアドバイスをお願いすると、使い込んだノートを数冊見せてくれた。各ページには、ぎっしりと書き込みがされており、プリントアウトの切り抜きなども貼られている。

f:id:itstaffing:20180315113132j:plain

「ExcelやAccess、関数やマクロ、VBAの命令、HTML、SQLなど、調べたことをその度にメモしたもので、もう12冊目になりました。今どきはネットで調べがつきますが、できれば手書きをお勧めします。自分で手を動かして書いたほうが覚えられると思います」

カテゴリ分けをするなど、ノートを取る際のコツは何かあるのだろうか?

「ありません。分からないことは、すぐにメモするだけ。そもそも分からない事なので、あらかじめ分類もできません。後で読み返すときに、Excelの隣にHTMLのことが書いてあったりして、ついでにそっちも読んでしまうのが意外と効果的だったり(笑)」

覚えていないことを書き込むので、後で読み返すと、同じことが何度も登場することがあり、気付きを与えてくれるきっかけにもなるという。

また、資格取得もお勧めだ。

「資格を取るためには、普段仕事で使っていないことも勉強します。たとえば普段Excelのグラフ機能を使わない職場で仕事をしていても、資格取得のために勉強することになり、自分自身の引き出しが増えていきます。現状の自分のスキルチェックにもなりますよ」

そして、目の前にある一般事務やOA事務の仕事をしながら、そうしたIT知識を養っていくことが大切だという。

「仕事をしていて『面倒だなぁ』と思ったら、その時がチャンスです。Excelの新しい機能を使ってみてください。そこからあなたのエンジニアへの第一歩が始まるかもしれません」

f:id:itstaffing:20180315113136j:plain

事務スタッフからエンジニアへ。難しく考えずに、まずは目の前のExcelの使いこなしから初めてみてはいかがだろうか? 「面倒だなあ」と思うあなたにこそ、エンジニアとしての優れた資質が備わっているのかもしれない。