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【コラム】現代のITエンジニアに求められるスキルとは?:エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業 #1

「働き方改革」や「リモートワーク」という言葉が話題になるなか、在宅勤務でも影響が少ない職種としてITエンジニアという仕事に注目が集まっています。必要なツールが入ったパソコンとインターネット環境さえあれば、どこでも仕事ができることが特徴として挙げられます。一方で、ITエンジニアといっても幅広い職種があるため、どのようなスキルを持つITエンジニアが求められているのかを知っておかないと、生き残れない時代がきています。そこで、現在どんな技術が流行しているのか、そしてITエンジニアがどういうことについて知っておかないといけないのかについて紹介します。

【筆者】
増井 敏克さん
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピューターを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『IT用語図鑑』『図解まるわかりセキュリティのしくみ』(以上、翔泳社)、『プログラマのためのディープラーニングのしくみがわかる数学入門』『プログラミング言語図鑑』(以上、ソシム)、『基礎からのプログラミングリテラシー』(技術評論社)などがある。

  ITエンジニアを取り巻く環境の変化    

皆さんも感じられているように、この10年ほどでスマートフォンが一気に普及しました。次のグラフは、総務省による情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査ですが、2012年からの8年間を見ても、「パソコンよりもスマートフォンを利用している時間」が圧倒的に増えていることがわかります。

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このような状況では、Webサイトやアプリを開発する場合には、モバイル対応が当たり前になってきます。つまり、これまでWindowsのアプリを作っていた人、Webサイトを作る場合でもパソコンだけを前提にしていればよかった人も、今後は常にモバイルを意識する必要があることを意味します。

このとき、開発者に求められるスキルも変わってきます。WebサイトやWebアプリを作る場合にJavaScriptが必要な状況は変わりませんが、AndroidやiOS向けのアプリを作るためにはKotlinやSwiftなどの知識が求められます。また、それぞれに向けて個別に開発していると、ソースコードを二重に実装しなければならず、開発に時間がかかるため、クロスプラットフォームに対応した開発知識が求められます。

Webアプリを作る場面でも、新しい技術への対応が必要です。例えば、スマートフォンでの高速な表示に対応したAMPや、Webサイトをスマホアプリのように使うPWA、Webサイトを表示するときに画面遷移をなるべく減らしたSPAなど、最近のサービスでは当たり前のように使われている技術を知っておかなければなりません。

スマホの利用時間が増えたことだけでなく、通信速度の高速化もあり、SNSや動画の閲覧時間が長くなっています。次のグラフも先ほどと同じ総務省によるデータですが、2012年から2018年の間で、ソーシャルメディアに関する部分と動画に関する部分、そしてオンラインゲームやソーシャルゲームが占めている時間が長くなっていることがよくわかります。

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このような状況では、開発者以外のITエンジニアも求められ、例えばネットワークなどのインフラがますます重要になっています。動画を閲覧する人が増えると、ネットワークの通信量も急増します。もはやネットワークがないと仕事だけでなくプライベートも満足に過ごせない世の中になっていますので、通信量が増えても高速なネットワークを確保することが求められます。

会社では、インフラエンジニアが担当することになるかもしれませんが、最近は自宅で働く人が増えています。その場合は自宅のネットワークを快適に接続できるように自分で準備する必要があります。高速で安定した環境を作るために何ができるのか、ITエンジニアなら知っておきたいものです。

  人材の過不足感は変わっていない   

ITエンジニアを取り巻く技術的な面では新たな変化が次々登場していますが、変わっていないのが人材の過不足感です。2020年の「IT人材白書」で、ユーザー企業のIT人材の「量」についての過不足感の推移を見てみると、「不足している」と答えている企業が徐々に増えていることがわかります。

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(出典)独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2020」

また、「質」についての過不足感を見ると、中小企業から大企業に至るまで、人材の質が不足していると感じている企業が多いことがわかります。

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(出典)独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2020」

これは昨年までの調査なので、コロナの影響でどうなっているか、ということを考えてみましょう。サービス産業動向調査を見ると、情報サービス業やインターネット付随サービス業などIT業界の売り上げは、コロナの影響をほとんど受けていないことがわかります。

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(出典)総務省「サービス産業動向調査」のデータより筆者作成

飲食業や宿泊業などは皆さんご存知のように大幅な売り上げダウンがありましたが、IT業界ではこれまでと変わらない売り上げを継続していることから、人材の量や質についてはまだまだ不足している、というのは変わっていない状況だと思います。

  ITエンジニアのキャリアと求められるスキル    

同じIT人材白書からの図を見ると、企業の方向性と、求める人材について整理されています。

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(出典)独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2020」

これによると、本質的課題として「企業の方向性と個人のあるべき姿が描けていない」ということが挙げられています。つまり、企業側、個人側のそれぞれが、時代の波に乗り遅れている現状があるのかもしれません。これを解決するために、技術と人、そしてビジネスの三位一体での革新が求められる、と書かれています。

このために、企業側がしなければならないこととして、いくつかの具体的な例が挙げられていますが、一番下にあるように「デジタル時代に選ばれる企業になるための事業や組織改革」が必要だということです。これは、顧客に向けてビジネスを変えるだけでなく、従業員からも選ばれる企業になる必要がある、ということです。

一方で、IT人材側がしなければならないこととして、企業に依存せず、常に自らの価値を向上し続ける取り組みが挙げられています。つまり、どこの企業に行っても自分をアピールできるような技術力を身につけなければならない、ということです。

  ビジネス目線でITを考える    

上記の図の中で「第4次産業革命」という言葉が使われるように、ビジネスで求められるITの役割が変わっている今、会社としても、個人としても、自分の会社がどういう特徴があるのだろうか、と改めてビジネス目線で考えることが求められています。例えば、会社の収入源は何か、ということを考えてみると、企業によってそれは大きく異なります。

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(出典)増井敏克『エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業』(2016)

上記の図にあるように、Web上でサービスを提供している企業であっても、広告収入が中心の会社もあれば、サービスの利用に対して利用料を集めている会社やマッチングサイトのように紹介料が中心の会社、実態はWebと関係ないビジネスでも、情報をWeb上で提供しているだけの会社もあるでしょう。自分の会社がどのような収益モデルになっているのか、ぜひ考えてみてください。

実際にビジネスをイメージしやすい例として、最近話題のGAFAやマイクロソフトの収益を見ると、それぞれの収益源の違いがよくわかります。例えば、GoogleやFacebookは広告がメインの収入である一方で、Amazonはオンライン店舗の占める割合が大きく、AppleはiPhoneが中心であることがよくわかります。また、Microsoftはバランスよくさまざまな製品から収益を得ていることが見えてきます。

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(出典)総務省「第五世代移動通信システムのもたらす経済及び社会の変革に関する調査研究」

このように、企業がどのようなところで収益を得ているのかを考えると、自分がどういう働き方をしたいのか、というところにも繋がってくるかもしれません。こういった情報は、企業のホームページを見れば手に入れられますし、数年間に渡って調べれば、どのように変化しているのかもわかるはずです。そこから会社の方針や業界の変化などに注目することもできるかもしれません。

  部門によって求められるスキルは異なる   

実際の現場で、企業がどのような業務を増やしたいと考えているのかを見てみましょう。次の図のように、IT人材白書でユーザー企業の部門別で増やしたい業務を見てみると、それぞれの部門が持つ特徴や、企業の中での役割も表しています。需要の多い仕事、自分のやりたい仕事をするには、適切な部門に異動する必要がある、ということも言えるかもしれません。

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(出典)独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2020」

このように、分野から部門を探したり、部門から分野を探したり、といった視点で考えられると、仕事の幅が広がります。そして、自分の得意分野が生かせる部門を探すために、こういったデータを見てみるのも1つの方法です。

そして、同じ企業の中だけで考えるのではなく、やはり「ポータビリティ」のあるスキルというものが注目されています。もちろん、業界内での同じ役割での転職が多いのは事実ですし、これまでもあったように上流工程への転職、というのはこれまで同様に多いものですが、IT企業からユーザー企業やネット企業への転職、という流れが増えているのも事実です。

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(出典)IPA「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」

  最後に  

ここまで、ITエンジニアを取り巻く環境の変化やキャリアについて紹介しましたが、最後に、エンジニアとしてどこを目指すのか、ということを考えてみます。経済産業省が2018年に発表したレポートで、「2025年の崖」という言葉があります。

「複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある。」ということが注目されていますが、レガシーシステムが残るのは間違いないと考えています。

そこで、私たちエンジニアがどこを目指すのか、というのは長期的に考えておかないといけないと思います。例えば、古い技術は過去に積み上げてきた知識を活用できますし、システム自体も安定しているものです。一方で、新しい技術はどんどん新たな学びがありますし、ワクワク感もあります。

このどちらに注力するのか、もしくはバランスをとっていくのか、ということは常に意識しておかないと、これからのエンジニアとしてのキャリアの方向性に悩んでしまうことになるかもしれません。

また、エンジニアとしてのキャリア考える上では、必要になるスキルを把握し、身に着ける必要があります。リクルートスタッフィングでは、エンジニアのスキルアップを応援するため、登録者限定で情報配信などを行っています。 リクルートスタッフィングでの就業に関わらず使えるものですので、これを機にお役立てください。

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