現実世界で「機械学習の技術」は、どのように活かされているの?
マーケティング領域ではデータ活用が進んでいます。マーケティング職や、ウェブ、アプリ開発の仕事をされている方は、機械学習が用いられるシーンはよく見かけるかもしれません。しかしそれ以外の、一般的にはイメージしにくい分野でも機械学習は活用されています。
【1】建設機械:盗難・ローン滞納を解決!
1つ目の例は小松製作所です。IoTの先行事例としても有名で、発端は1998年までさかのぼります。小松製作所は建設機械を取り扱っていて、1台が高価な商品になります。当時は、建設機械が盗まれてしまうことに悩んでいたそうです。
その対策として生まれたのが、GPS の取り付けです。位置情報を取得することによって、その機械が現在どこで動いているかをモニタリングできます。通常の稼働場所と異なっている場合には盗難の疑いが出て、追跡も可能です。
また、高価な建設機械であるために、ローンの支払いが滞ってしまう場合もあるそうです。事業所や建設機械の利用場所は交通の便が良いところにあるとは限らないので、営業担当者が直接訪問するコストは高い…。そこで、遠隔操作で建設機械のエンジンを止める機能を導入することで、支払いが滞った機械を使えなくしました。営業担当者が現地に行くことなく、支払いを強いプレッシャーで促すことができるそうです。
メンテナンス時期の自動予測にも繋がった
もともとは盗難やローン滞納の対策として導入した仕組みですが、データを集めてモニタリングすることによって、付加価値を生み出すことにも成功。どのように、どれぐらい稼働しているかをそれぞれの機械ごとに把握できるので、メンテンスが必要な時期を予測することができます。
建設機械が突然に故障してしまうと、計画通りに工事が進まなくなってしまいます。部品交換やメンテナンスの時期を伝えることで、事業者は想定外の事態にあう可能性を下げることもできます。さらに、交換部品の在庫管理がしやすくなり、修理担当者のスケジュールも作りやすくなったそうです。
このシステムはコムトラックスと呼ばれていて、後にIoTと呼ばれることになりました。
【2】回転寿司屋:需要予測システムで食品ロス軽減!
回転寿司屋の「スシロー」がデータ活用を進めていることも興味深いです。寿司ネタの需要予測システムは 2014年から導入されました。それまでは店長の勘と経験で、いつ・どの寿司ネタをレーンに流すかを決めていたそうです。しかし、店長個人のスキルに大きく依存してしまうため、成績の良い店舗と悪い店舗がありました。そこで、経験の少ない店長も営業成績をあげられるように、寿司の需要予測システムを導入したそうです。
1皿ごとに IC チップを搭載。1分後と15 分後に必要な寿司ネタを予測できるようになり、レーンで寿司が回転している時間が短くなりました。これにより、食品廃棄量を75%も減らすことができたそうです。
大量データの分析は、ExcelからBIツールへ
また、データ活用も 2012年時点で大規模に実施されています。Excelでの分析をやめて、QlikViewというBIツールを導入。Excelでは店舗ごとに集計することはできましたが、寿司に関するデータは毎年10億レコードも増えるので全店舗を横断して分析することがBIツールなしでは不可能でした。このデータは売上分析や新商品開発に活用されています。
2015年には来店予約をスマートフォンから出来るようにして、店内での待ち時間を減らすことに成功しました。これは、座席がいつ空くのかをデータから予測するアルゴリズムを開発することで実現。店舗ごとの顧客の動向も反映させ、予測精度を改善しているそうです。
さらに、昨年の 2020 年には、会計を自動化するシステムも導入。座席にカメラを設置して、顧客が何のお皿を食べたかを検知します。人件費の節約ができるだけでなく、店員と顧客の接触機会も減らすことができます。この技術はエッジAIやエッジコンピューティングなどと呼ばれていて、端末自身でお皿の検知ができるため、クラウド上で動作する AI に比べてサーバー代を抑えることもできます。画像などの大きなデータに効果を発揮しやすい領域です。
第1話 機械学習の仕事内容って?実はコードを書くだけじゃない!
第2話 人工知能、機械学習、ディープラーニングの違いとは?
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