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読み方、選び方とともにアウトプットが大事な「技術書の読書術」

リクルートスタッフィングは2023年1月よりITエンジニアの無期雇用派遣サービス「BUILDICT」を提供しています。本レポートでは、ビルディクト社員に向けて実施したセミナーと交流会の内容をお届けします。

セミナーには技術書の著書を多数持つ増井敏克さんをお迎えし、著書の『「技術書」の読書術』をベースにお話いただき、その後の交流会では食事をしながら簡単なワークも行いました。

【講 師】増井 敏克さん
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『プログラマ脳を鍛える数学パズル』『「技術書」の読書術』『IT用語図鑑』『図解まるわかり セキュリティのしくみ』(以上、翔泳社)、『プログラミング言語図鑑』『プログラマのためのディープラーニングのしくみがわかる数学入門』(以上、ソシム)などがある。エンジニアスタイルでは『サクッとわかるITトレンド』を連載中。

自分に合った本を選ぶコツ

技術書の読書術には、「選び方」「読み方」「情報発信&共有」の3つの項目がある、と増井さん。売れ筋の本にもいくつか種類があると言います。

「普段よく目にするのが売れ筋の本ですが、この中にも2種類あります。ここ1~2ヶ月くらいで発売された『新刊』と、長く売れている『ロングセラー』。表紙を見ただけでは判別できないので、新刊は本の最後の奥付にある『発売日』を見てください。よく売れている本を見極めるためには、『刷り部数』を確認します」

選ぶ際には、難易度や内容が「自分に合っている」という観点が大切。そのために、書店で中身を確認して選びましょう。できるだけ少ない時間で見極めるために、増井さんはいくつかの方法を紹介。

「最初の数ページを立ち読みして、さらに目次を見ていきます。また、本の最後に索引があれば、それも見てみましょう。調べたい言葉が載っていれば、難易度としてマッチしている可能性が高い。他には、著者のプロフィールも参考になります。大学の教授であれば難しめである一方、丁寧に書かれている場合が多い。私のような教授でない独立した著者著書は、読みやすくて実務に近いと思います。ただ、細かな部分は端折って書いている場合もありますね」

それでも判断が付かなければ、大きな書店の書店員と話すのがおすすめです。書店員はプログラミングについて知らなくても、最近のトレンドや売れ筋の本などをよく知っているから。今困っている内容を相談するのもよいでしょう。

「良書に出会う確率は、非常に低いと思っています。比較記事やランキング、先輩のおすすめも、自分に合うとは限りません。良書に出会う確率を上げるために、出版社やシリーズ、著書で選ぶといった工夫も大切になります。自分に合わない本を買ってしまったとしても、見る目を養いながら精度を上げていく糧だと考えてください」

また、技術書が解説する内容は「概要」「手順」「理論」に分かれているので、自分が求める種類を把握しておきましょう。こちらもネットで表紙や概要を見るだけではわからないケースが多いため、書店で中身を見る必要があります。

ただ読むだけではない「本の読み方」

本の読み方を解説する際に、増井さんが紹介したのが『「3」の発想』という考え方。同名の書籍を紹介しつつ説明します。

「こちらは技術書ではなく教育関係の本なのですが、2段階で終わりではなく3段階やるべし、と書かれています。基礎と応用は読むと思いますが、そのあとに『逆引き』を読んでみる。そこまで読むと応用力を身につけることができます」

さらに増井さんは、入門書だけでも3冊程度購入し、並行して読むようにしているそうです。そのおかげで違いがわかったり、間違いを見つけることができます。さらに「すべての本に共通する内容は大事」「1冊にしか載っていない内容は著者の差別化ポイント」といった別の観点も得られます。

資格を取得する際には、「参考書」「過去問」のほかに、文章の書き方も学ぶと効果的。上位の資格では文章で回答する問題が多くあり、文書力が必須となるからです。

本を読む際の具体的な方法も、増井さんは3パターンの読み方を用意しています。

「1回目は30分から1時間くらいをかけてざっと読みます。タイトルと最初の数行を読み、書かれている内容と場所を把握します。これでまったくわからないようなら、自分には難しすぎると判断しましょう。自分に合っている本であれば、2回目には手を動かしながら読みます。3回目は、読みながらノートにまとめていきます」

ノートにまとめる際は、ScrapboxやObsidianなどのツールでタグを使って整理すると便利です。

読み方がわかっても、「本を読む時間がない」という悩みも多いでしょう。そのために、最初にざっと読んで選別する時間が大切。自分に合っていなかったら、読まないと判断する勇気も必要です。無理して読む数時間を時給に換算すると、自分に合っていない本を読むほうが、むしろマイナスが大きいと考えましょう。

「読書にかける時間が確保できない方は、カバンに入れたり、すぐ手に取れる場所に置いておいたりして、いつでも読める状況を作ってください」

さらに、電子書籍やオーディオブックなどのツールをどんどん活用していきましょう。

「これを学んでいる」と周囲に知ってもらうためのアウトプット

「学んだらとにかくアウトプットしてください」という増井さん。

「せっかく本を読んでも、言わないと伝わらないからです。アウトプットというとハードルが高く感じるかもしれませんが、同僚との雑談でもいい。『今、ディープラーニングの本を読んでいるんです』と言っておけば、新しい仕事が発生したときに声をかけてもらえるかもしれません」

アピールというほどではなくても、周囲に伝えておくといろいろな情報が集まる場合もあります。雑談が難しければ、SNSで発信してもいいでしょう。ブログや、同人誌、コミュニティ参加などもあります。誰かが見てくれたら、仕事につながったり、新しい情報を教えてくれたりするものです。

「『間違っていたらどうしよう』と思うかもしれませんが、間違いに気づくことが大切。本を一人で読んでいると、間違って理解していたとしても誰も教えてくれません」

5分程度のLT(Lightning Talk)もアウトプットに最適です。

「勉強会に行っても何を話していいかわからずに帰ってくる方がいますが、LTで発表すると声をかけてもらえて、人とのつながりが増えていきます。また、資料を作るときに足りない知識に気が付き、勉強するきっかけにもなります。また、質問してもらえるので新たな視点をもらえるんです」

発信するのは上級者だけだと思いがちですが、初学者の「困った」「上手くいかない」を共有するのも有効です。特に新しい内容は、とにかく早く情報を出したほうがいいそう。きれいな文章やかっこいい文章などにこだわらず、とにかく発信していきましょう。

最後に、「とにかく読んで、書いてほしい」と強くすすめる増井さん。量を読まないと本を選ぶのが難しいし、アウトプットも1回きりではほとんど意味がありません。

「1回書いてみて反応がなかったからやめた、という人が多いですが、とにかく続けていくことが大切です。続けていくうちに少しずつ周囲に知られていきます。また、以前は本を読んでいたが読まなくなった、という中堅の方がいますが、これは非常に危険。1回休むと再開が難しいので、とにかく続けていきましょう」

増井さんのお話しのあとには質疑応答の時間がありました。本の選び方や読み方にとどまらず、スキルの活かし方などの質問をする方もいて、この時間を有効に活用していました。

研修のあとは交流会でワークやプレゼントも!

研修後の交流会では、乾杯のあとにお弁当を食べながら、テーブルごとに自己紹介タイム。それぞれが配置先での業務内容の紹介などをしあって盛り上がっていました。

その後、対抗戦ワークの時間に。テーブルごとに「ITエンジニアあるある」を考えてもらい、優秀なテーブルにはプレゼントが用意されました。

「帰り際にPMが急に注文しがち」「パソコンにキレたり、話しかけたりする」などが発表され盛り上がりましたが、最優秀賞に選ばれたのは「日常会話でも設計書っぽく考えてしまう」というもの。最優秀賞のプレゼントは、BUILDICTオリジナルTシャツです。

最後にBUILDICT配置担当であるマネージャーから、皆さんへの感謝の気持ちや、これからの熱意を込めた挨拶があり、会が終了となりました。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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