資格を取ろうと思ったけれど、どうも勉強が進まない。そういった経験はないでしょうか?IPA(独立行政法人情報処理推進機構)をはじめ、IT業界には、さまざまな資格が存在しますが、試験によっては問われる内容が幅広く、苦戦する人も多いでしょう。
今回は、「基本情報技術者試験」「ITパスポート試験」*などに登場する「ハードウェア」の分野の基礎についてゆるく学んでいきます。最近では、パソコンを自作する人も減り、ハードウェアは実感しづらいジャンルの一つになっています。試験に挑戦予定の人だけでなく、「パソコンってどういう仕組みになってるの?」と気になる人にもおすすめです。

そもそも「コンピューター」とは...?
*試験に出題される分野はシラバスとして公開されています。扱われる分野やそれぞれの概要を一覧できて便利なので、あわせて確認してみるのもおすすめです。
そもそもコンピューターって何?
そもそも、「コンピューター」とはなんでしょう。
「WordやExcelのようなソフトウェアが使えるもの」「インターネットが使えるもの」「なにか制御するもの」など、実際の使い方が浮かぶかもしれませんね。
原理原則的なことを言えば、「何か処理する装置」です。もっと言うと、「なんらかのデータを入力し、それを処理して、出力する装置」を指します。そして、この処理のことを「演算」と言います。
電卓で考えてみましょう。電卓は、我々が、ポチポチと数字を押すと(入力)、それを受け取って計算します(演算)。そして、計算結果を表示します(出力)。まさに「なんらかのデータを入力し、それを処理して、出力」しているわけです。
さまざまなコンピューターがありますが、それらのうち、人間が入力や出力をしやすくなっており、汎用性がある個人用のコンピューターがパソコンです。そして、パソコンに電話機能を持たせ、画面をタッチして入力できるようにしてある小型の機器がスマートフォンなのです。
コンピューターは、パソコンやスマートフォン以外にも、車や冷蔵庫、エアコンなど、ありとあらゆるところに使われています。キーボードとディスプレイがあるものだけが、コンピューターではないのです。
なお、日本語では、コンピューターのことを「電子計算機」と呼びます。略して「電算機」です。僕が新卒の頃は、企業に「電算室」と呼ばれる部署がありました。今でいうところの、情報システム部のことです。法律などでも、「電子計算機」という言葉が使われていますし、IPAの試験でも登場しますね。覚えておくと良いでしょう。
ハードウェアとソフトウェア
コンピューターはハードウェアと、ソフトウェアで構成されます。
ハードウェアは、ザックリ言うと、物理的に存在するものです。CPU(後述)や、ハードディスクなど、実際に手で触れるような実物です。
一方、ソフトウェアとは、プログラムのことで、キーボードから入力された情報を受け取って、別のハードウェアに伝えたり、プログラミングされた動きをハードウェアに命令したりするものです。
コンピューターは、これら物理的なもの(ハードウェア)と、プログラム(ソフトウェア)で構成されているのです。
そして、今回は、このうち「パソコンのハードウェアはどうなっているのか」のトッカカリのお話です。
パソコンの最小構成は?
本題のパソコンの構成についての話に入りましょう。
いきなりたくさんのお話をしても、疲れてしまうでしょうから、最初は最小構成の話からして、徐々に足していきますから、安心してください。
パソコンの最小構成は何か?と言われたら、諸説ありそうですが、まずは「CPU」と「メモリ」から解説していきましょう!
■CPU(Central Processing Unit)とメモリ(memory)
CPU(シーピーユー)は、日本語で「中央演算処理装置」とも言うとおり、パソコンの頭脳とも言われるものです。要は実際に演算をする主体です。演算の実行部隊と考えると良いでしょう。プロセッサとも呼ばれます。
メモリは、記憶装置です。データやプログラムを保存できるものです。倉庫やタンスみたいなものだとでも思ってください。
CPU(演算部隊)は、パソコンに電源が投入されたら、自主的にメモリ(タンス)の中にあるプログラム(命令書)に従って処理を開始します。CPUは、勝手に動きはじめるのですが、自由気ままに動けるわけではありません。どう動くのかは、命令書(プログラム)に書いてあるとおりに従います。
CPUは、メモリのプログラムに従って、自分の中にある小さな処理場所(レジスタ)で演算します。
CPUとメモリは、直接つながっており、このように、直結しているような記憶装置を「主記憶装置」と言います。わざわざこのように言うということは、当然「主ではない」、脇役の記憶装置も存在します。この話は次回するので、今は、「メモリは記憶装置(タンス)であり、CPUと直結しているから『主記憶装置』と呼ばれるらしい」とだけ覚えておいてください。
■二人だけの世界では困るので、出入り口(I/O=Input/Output)を作る
さて、直結しているCPU(演算部隊)と、メモリ(タンス)ですが、二人だけの世界では、データを渡したり、演算結果を貰ったりすることができません。そこで、出入り口が必要になります。それが、「I/O(アイオー)」です。月刊I/Oという1976年創刊のパソコン雑誌がありますが、まさにこのI/Oからとった名前です。
I/Oは、全ての出入りを制御します。キーボードやマウスのことを「入力装置」、ディスプレイや、プリンターなどを「出力装置」と言うのですが、こうした入力装置や出力装置の出入りを司っているのです。
CPUとメモリは、「システムバス」というものを使って直結しているのですが、このシステムバスに、I/Oがつながります。また、I/Oは、山ほどあるものなので、複数存在します。
ニャゴロウ先生のまとめ
CPUとメモリ、I/Oについてイメージは湧いてきたでしょうか。
コラムにも書きましたが、僕の若い頃は、ハイスペックなパソコンを買おうと思ったら高額だったので、自作する人が多くいました。しかし、最近では、自作する機会はめっきり減りましたし、現在使っているパソコンも、時々中身を入れ替えるものの、一から新しく組んだりはしていません。
機械学習の実験をするのに、また自作する人が増えたようにも思いますが、一時のことでしょう。
でも、それは悪いことではないのです。それよりも、「ちゃんと知る」ことが出来ていれば問題ありません。
ハードウェアについて知っていれば、AWSなどのスペックを決めるときにわかりやすくなりますし、プログラミングにおいても、より細かいことができるようになります。
技術ライター、イラストレーター。システム開発のかたわら、雑誌や書籍などで、データベースやサーバー、マネジメントについて執筆。図を多く用いた易しい解説に定評がある。主な著書に『なぜ?がわかるデータベース』(翔泳社)、『図解即戦力 Amazon Web Serviceのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』『ゼロからわかるLinuxサーバー超入門 Ubuntu対応版』(技術評論社)、『仕組みと使い方がわかる Docker&Kubernetesのきほんのきほん』(マイナビ出版)がある。
※本記事に記載されている会社名、製品名はそれぞれ各社の商標および登録商標です。