
「ITの現場に入る前に知っておきたいこと」として、ITに関するお仕事の前提知識や、開発の流れ、エンジニアが使っている用語やツールなどを、やさしく解説する本連載。前回はIT業界において設計や開発に携わる人の仕事内容について解説しました。
しかし、こういった開発を進めるだけではコンピューターは動きません。動作させるためのインフラが必要ですし、開発が終わったあとに安定して稼働させるには運用や保守といった作業が必要なのです。
今回はユーザーの目線では目にすることの少ない、運用や保守、インフラの構築といった、縁の下の力持ちの仕事について紹介します。
- インフラ構築とは?
- 運用と保守はどう違うの?
- 障害対応ってどんなことをしているの?
- DevOpsってよく聞くけどどういうこと?
- 知っておきたいIT用語〜今回のまとめ
インフラ構築とは?
一般に「インフラ」というと電気や水道、ガス、道路などを指すことが多いですが、ITの世界では、サーバーやネットワーク、ストレージ、データベースなどITに関するサービスが安定して動き続けるための土台となる技術を指します。非常に幅広い言葉で、組織によってインフラ担当者の業務内容が異なることも珍しくありません。

具体的にどんなインフラがあるんですか?

たとえば、Webアプリを動作させるには、Webサーバーやデータベースサーバーが必要ですね。それに加えて、ネットワークの設定も必要です。

それは開発者が構築、設定しているんだと思っていました……!

インフラ構築の仕事は、その土台となる部分を設計・実装するだけではありません。期待した性能が出ているか、安定して稼働して可用性を確保できているか、セキュリティに問題がないか、将来の拡張性があるかなどを意識しなければなりません。
たとえば、
- サービスの利用者数や求められるレスポンスタイム
- 可用性の目標(SLA)
- セキュリティ要件
- ネットワークの構成(VLANやサブネット、ルーティング、ファイアウォール)
- サーバーの冗長化
- バックアップ
など
考えることはたくさんあります。
当然、サーバーを構築するにはOSやミドルウェアのインストールも必要ですし、構築した後は負荷試験やセキュリティスキャンなどの作業も必要です。

そんなにたくさん…大規模なシステムだと開発者だけでは無理ですね……。

もちろん、人によっては構築できるスキルを持っている人もいますが、実際にはチームで分担していることが多いです。
当然のことながら、インフラ担当者も要件定義や設計の工程から参加し、構成図や手順書、運用ルールなどの作成・整備も必要です。
運用と保守はどう違うの?
構築したインフラを使って、サービスを安定稼働させるための活動を「運用」や「保守」といい、まとめて「運用保守」ということもあります。
運用保守の範囲は広く、
- 日々の監視
- 定期メンテナンス
- パッチ適用
- 容量管理
- ユーザーの教育
- ログ解析
- セキュリティインシデント対応
- 変更管理
- 請求・コスト管理
などを含みます。

これって毎日やるような作業なんですか?月に1回でもいいような……。

パソコン1台なら短時間で済むかもしれませんね。でも、組織として管理する対象はたくさんあるんですよ。
たとえば、Webサーバーとデータベースサーバーだけでも1台ずつではなく、複数台で分散し、負荷分散が可能な冗長構成になっています。さらに、ファイアウォールやIPS、IDS、ネットワークを構成するルーターやスイッチなどあらゆるインフラ機器を管理しなければなりません。
そして、運用と保守は似ている言葉ですが、役割や目的には微妙な違いがあります。業界や組織によって定義は異なりますが、一般的には次のように使い分けられています。
- 運用
- 日常的にシステムを動かすための活動全般。
- 監視やリソースの管理、利用者のサポート、定期処理(バッチやジョブ管理)、ログの監査、バックアップの取得、証明書の更新など。
- 保守
- システムを健全に保つための保全活動。
- ハードウェアの交換、ソフトウェアのバージョンアップ、セキュリティパッチの適用、老朽化への対応など。

確かに一時的な対応ではなく、長期的に両方の対応が必要ですね。

しかも人によって対応が異なると困るので、正確かつ迅速に作業ができるように文書化し、チーム間で連携することも重要なんです。
障害対応ってどんなことをしているの?
運用や保守によって安定稼働に取り組んでいても、どうしても防げないのが障害の発生です。システムが停止するような大規模なものから、性能の低下やセキュリティインシデントの発生のようにシステムは稼働していても利用上の問題が起きることもあります。

運用や保守を適切に実施していれば障害って起きないものではないのですか?

外部要因による障害を完全に防ぐことはできません。たとえば停電が発生するとどうなるでしょう?
現在のシステムは単体で動作することは少なく、複数のシステムが組み合わさって構成されています。OSのアップデートによって問題が起きることもありますし、外部のシステムの障害によって自組織のシステムに影響が出ることもあります。
このような予期しない問題が発生したときには、影響範囲を迅速に把握し、被害を最小化しなければなりません。そして、サービスを復旧するまでの一連の活動を「障害対応」といいます。

具体的にはどんな作業をするのでしょうか?

障害を検知したあと、優先順位をつけて初期対応を実施します。その後、根本的な原因を調査して恒久対応などを実施します。
たとえば、検知するためには監視システムでのアラートを確認するほか、利用者からの報告、ログの確認による異常の特定などが考えられます。検知した障害に対し、その影響範囲や業務重要度を判断し、セキュリティリスクなども総合的に評価して優先度を設定します。
初期対応としては、障害が発生しているサービスを一時的に切り離して、影響のない部分だけを動作させたり、待機系に切り替えたりする方法が使われます。その後、根本的な原因が特定できれば、プログラムの修正やパッチの適用、構成の変更などによって再発を防止し、レポートの作成などの事後対応を実施します。

未知のトラブルだと対応が大変そうですね。

それに加えて、障害対応ではスピードと正確さの両立が求められます。
DevOpsってよく聞くけどどういうこと?
インフラの構築や、システムの運用保守をするには、開発者との連携が必要になることも多いものです。どのような構成にするのか、どのような目的で開発されているのか、その理念や考え方を共有しないと、適切なシステムを素早くかつ確実に提供することは困難です。
そこで、開発(Development)と運用(Operations)の担当者同士が密に連携することをDevOps(デブオプス)と言います。その文化を指すこともあれば、連携を容易にするツールを指すこともあります。

これまではそれぞれが別の部署で仕事をしていたのですか?

現在も異なる部署で仕事をしていることは多いです。
発注者の立場としては、開発者と運用担当者が同じ部署にいると、問い合わせなどがスムーズに進んで助かります。
一方で、開発者にとっては1つの案件が完了しても継続して運用に関わっていると新規の案件を開発できません。このため、開発担当者は新規の開発に専念し、開発を完了したあとは運用や保守の部署が担当することは多いものです。
ただし、自社でシステムを開発・運用している企業などを中心に、開発者と運用担当者の連携のメリットを活かそうとしている組織が増えています。具体的な活動は組織によって異なりますが、DevOpsの考え方は組織の文化を変え、プロセスの自動化やツールの活用などにより「素早く安全に価値を届ける」ことを指すものです。このため、技術的な面で難しいというよりも、組織や人の意識を変えることが難しいことが多いでしょう。

運用保守やインフラ構築といった仕事は、システムを「作る」ことと「動かし続ける」ことの両面をカバーします。利用者の視点ではあまり目にすることはありませんが、縁の下の力持ちとして、安定したサービス運営を支える存在なのです。

知っておきたいIT用語〜 今回のまとめ
サーバー、ネットワーク、ストレージ、データベースなどITに関するサービスが安定して動き続けるための土台となる技術を指す。
日常的にシステムを動かすための活動全般。監視やリソースの管理、利用者のサポート、定期処理(バッチやジョブ管理)、ログの監査、バックアップの取得、証明書の更新など。
システムを健全に保つための保全活動。ハードウェアの交換、ソフトウェアのバージョンアップ、セキュリティパッチの適用、老朽化への対応など。
開発(Development)と運用(Operations)の担当者同士が密に連携すること。その文化を指すこともあれば、連携を容易にするツールを指すこともある。
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピューターを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『図解まるわかり プログラミングのしくみ』『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』(翔泳社)、最新刊の『実務で役立つ ログの教科書』(翔泳社)がある。
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※本稿に記載されている情報は2025年11月時点のものです。


