これからPythonをはじめようとする人が最初に行う作業は「環境構築」です。Pythonにおける環境構築とは、自分のパソコンでPythonプログラミングをできるようにすること。ですが、この環境構築で挫折した……という方も多いのではないでしょうか。この記事では、最も簡単で、かつ実用的なPython環境の構築方法をご紹介します。
メーカー勤務機械系エンジニア。WATLABブログ運営者。工学計算に関する知識の習得を目指し、Pythonの学習を2019年からはじめる。仕事以外にも、趣味のプログラミングやPythonコミュニティへの参加を行っている。また、月間数万PVのPythonブログ「WATLAB」を立ち上げ、初心者向けに図を多くしたわかりやすい記事を作成・公開している。著書は『いきなりプログラミング Python』(翔泳社)。
ブログ:https://watlab-blog.com/
1. 初心者が挫折しにくい「環境構築」
世の中にはPythonの環境構築ツールが山ほどありますが、初心者に必要のないパッケージが多く含まれていたり、別途特別なコマンドを覚えなければならなかったりと、かえって面倒なことになる場合が多いです。インターネットのブログなどに記載の操作を試しただけで、実は導入したツールとの相性が悪く、環境構築をはじめからやり直す必要性が生じることもあります。そんなことがあると一気にイヤになってしまいますよね。
環境構築ツールは、その構造を理解して使うと便利さを実感できると思いますが、本当の初心者はまず公式のインストーラーから準備するのが賢明だと思います。
2. Pythonのインストール手順<公式>
ここではWindowsを例にインストール手順を説明します。次のURLから、Pythonの公式ページにアクセスしましょう。
Downloadsにカーソルを当てると最新のPythonをダウンロードするボタンが表示されます。ボタンをクリックしてPythonのインストーラーをダウンロードしましょう。
ダウンロードした.exe
ファイルを起動します。
Add python.exe to PATHにチェックを入れてから、Install Nowをクリックしましょう。
インストールが完了したらSetup was successfulという画面になるため、ウィンドウを閉じます。これでPythonのインストールは完了しました。
3. 初心者がすぐにプログラミングをはじめられる「開発環境」
すでにPythonはインストールされた状態です。Pythonを使う最速の方法は、コマンドプロンプトを立ち上げて(ショートカットは [Windows(のマーク)キー] + [R]」)、入力欄にpython
と打つだけです。するとコマンドプロンプト上でPythonインタプリタが立ち上がり、1行ずつコードを実行できるようになります(Pythonを抜ける場合はquit()
を実行する)。
しかし本格的にプログラミングをする場合、いつもコマンドプロンプトでプログラミングするのは非常に大変です。通常は開発環境を整えます。有名な開発環境にはVisual Studio CodeやPyCharmがありますが、それらはPythonに少し慣れてからはじめても遅くはありません。
ここではPythonをインストールしたらすぐに準備できるJupyterLabを紹介します。
4. JupyterLabのインストール手順
JupyterLabはWebブラウザ上でプログラミングができる開発環境です。ノートブックと呼ばれる形式でプログラミングを行い、コードを1行ずつ実行しながら対話式に結果を確認できるため、初心者にとって学習しやすいです。
Windowsであればコマンドプロンプトを立ち上げ、入力欄に次のコマンドを打ってJupyterLabをインストールしましょう。
pip install jupyterlab
Pythonでは
pip install
コマンドでPyPI(パイピーアイ)と呼ばれるサイトに登録された外部ライブラリをインストールできます。外部ライブラリとは、世界中のコミュニティや企業が開発を行っているライブラリです。外部ライブラリを使うことで初心者でも高度で洗練された処理を簡単に書くことができるのがPythonの強みでもあります。5. JupyterLabでPythonプログラミングをする
それでは早速Pythonプログラミングをはじめてみましょう。プログラムを書くときはどこか特定のフォルダの中で作業をした方が便利です。まずはデスクトップやドキュメントフォルダなどに任意のフォルダを作成してみましょう。ここではデスクトップにProjectというフォルダを作成しました。
フォルダを開き、アドレスバーにcmd
と打ちEnterを押します。こうすることで、このフォルダをカレントディレクトリとした状態でコマンドプロンプトが開きます。
コマンドプロンプトが開いたら次のコマンドを実行してJupyterLabを立ち上げます。
jupyter lab
(jupyter
とlab
の間に半角スペースを入れるか-
でつなげます)。
するといつも使っているWebブラウザが立ち上がり、JupyterLabのLauncherが表示されます。Python 3 (ipykernel)をクリックしましょう。
これでPythonプログラミングの準備は完了です。JupyterLabではセルと呼ばれる部分にコードを記入します。
詳しい説明は省きますが、セルをアクティブにした状態で実行ボタンを押すことでコードが実行されます。セルを複数に分けることで1セル毎に処理を実行するといったこともできます。処理が無限ループに入った場合や強制終了させたい場合は停止ボタンを押すことでプログラムの実行が止まります。
次のコードを書いて実行ボタンを押してみましょう。
print('Hello Python!')
コードの下に実行結果が表示されます。
ここまででJupyterLabを使った基本的なPythonプログラミングの準備が整いました。
JupyterLabではセルにコードを書いて実行するスタイルをとっていますが、このファイル全体をノートブックと呼びます。ノートブックは
.ipykernel
という拡張子のファイルであるため、別途ファイル名を変更したり、別のノートブックを作成したりすることができます。6. 「仮想環境」でJupyterLabを使う場合
ここまでで問題なくPythonプログラミングができるようになりました。しかし、ITエンジニアとしてPythonで仕事をする場合は仮想環境の知識を持っておいた方が良いでしょう。
仮想環境を使うことで、プロジェクト毎に複数のPythonや外部ライブラリのバージョンを切り替えることができます。単一の環境でさまざまなプロジェクトを扱っていると、どこかでライブラリのバージョンに起因する不具合に直面することがあります。ここではPythonの標準的な仮想環境ツールであるvenv
の使い方を説明します。
7. venvで「仮想環境」を使う
コマンドプロンプトを開くために、まずは任意のフォルダを開きましょう。フォルダを開いたら、アドレスバーにcmd
と打ち込みEnterを押します。すると、このフォルダをカレントディレクトリ(現在のフォルダ)に設定した状態でコマンドプロンプトが立ち上がります。
次のコマンドで仮想環境をつくります。myenv
の部分は任意の名前でも構いません。
python -m venv myenv
続いて、仮想環境を有効化します。Windowsの場合は次のコマンドです。
myenv\Scripts\activate
(macOSの場合は、source myenv/bin/activate
です)。
有効化した後はコマンドプロンプトに(myenv)
と表示されるようになります。この表示が仮想環境に入っている目印です。
仮想環境の外で
pip install
した外部ライブラリは、今回有効化した仮想環境内にはインストールされていません。JupyterLabを含め、この環境で使いたいライブラリは別途pip install
しましょう。コマンドpip install jupyterlab
に続き、jupyter lab
を実行することで、先ほどと同じようにWebブラウザが立ち上がり、仮想環境下でJupyterLabを使うことができます。
仮想環境を抜けるには、コマンドプロンプトで次のコマンドを実行します。
deactivate
ここまででvenv
による仮想環境下でPythonプログラミングを行う説明は終わりです。仮想環境を使いこなせば顧客ごとに環境を分けることができ、初心者から中級者へと進むことができます。
8. さっそくPython×Excelであそんでみる!
この記事ではPythonのインストールとJupyterLabによるPythonプログラミングについて説明しました。また、仮想環境の使い方についても簡単に触れました。
Pythonは最も挫折しにくい言語と言われることがありますが、書きやすさや可読性の良さということ以上に、色々なことができるのもユーザーを惹きつける魅力であると思います。皆さんも何かつくりたいと思ったら最初にPythonでプロトタイプをつくってみてはいかがでしょうか?その第一歩として、まずは次の記事をおすすめします。