生成AIの登場で、文章や画像、動画、音声などさまざまなものを手軽に生成できるようになりました。これらを手作業で使っても便利なのですが、最近注目されているのがAIエージェントです。一度指示をするだけで自動的に処理してくれるとどんなことができるのか、その概要を紹介します。
AIエージェントの動作
これまでAIを使うときは人間が指示をしてAIが応答する形でしたが、AIエージェントは指示を与えれば、その指示に沿って自律的に次々と作業を進めます。
つまり、人間が指示を出すのは最初だけで、あとはAIが実行しようとしている内容について「OK」と「NG」を選ぶだけです。
■アプリ開発も「OK」と「NG」で
現状として、どのようなことができるのかを見てみましょう。
たとえば、プログラマが「タスク管理アプリ」を作ろうと思ったとき、CursorというテキストエディタやClineという拡張機能を使うと、ほぼ自動で実装できます。
ここでは、Visual Studio CodeというテキストエディタにClineを拡張機能として導入した環境で、タスク管理アプリを実装する様子を動画で解説します。
動画内では、最初に「タスク管理アプリをLaravelで作成してください。」というように指示しています。
すると、AIエージェントが実行する作業の内容が順に表示され、承認するだけで作業が進んでいくことがわかります。最初に指示を入力したあとは、「Save」や「Run Command」というボタンを押しているだけで、アプリが作成されていきます。
アプリが完成したあとにエラーが出ても、そのエラー内容を伝えると、自動的に修正されます。
完成するまでの作業を見ると、1行もソースコードを書くことなく、基本的な機能を備えたタスク管理アプリが実現できていることがわかります。
AIエージェントの応用例
AIエージェントを使うと、プログラマ以外の作業もできそうです。
たとえば、ブログに記事を投稿する場面を考えてみます。ブログに投稿するとき、私たちは次のような作業を手作業で実施していました。
(1)キーワードを選定する
(2)文章を作成する
(3)文章を校正する
(4)ブログサービスに投稿して公開する
AIエージェントを使うと、上記の作業を自動化できます。具体的には、次のような指示を出します。
すると、AIエージェントはまずキーワードの選定を始めます。トレンドのスイーツに関するキーワードを検索し、「ドバイチョコレート」というものが出たとします(1)。
次にこの「ドバイチョコレート」というキーワードでAIが文章を作成します(2)。そして文章ができれば、次はAIが文章を校正し(3)、校正が完了するとAIがブログに投稿します(4)。この流れは図のようになります。
ここで、人が介在するのは、それぞれの作業を進めてよいかどうかを判断することだけです。つまり、「OK」と応答すれば上記の作業を順に進めてくれますし、すべて「OK」で応答するように設定しておけば、最初から最後まで自動で処理されます。
今後期待されていること
前回解説したMCP(Model Context Protocol)が普及し、インターネット上の多くのサービスが対応すると、仕事だけでなく身近なところでも便利に使えそうです。たとえば、カレンダーアプリ、鉄道、ホテル、レンタカー会社などがMCPに対応すると、次の図のようなことができる可能性があります。
つまり、AIエージェントに対して「旅行に行きたい」と話しかけるだけで、カレンダーアプリからスケジュールの空きを確認し、鉄道やホテル、レンタカー会社から空き状況を確認して予約、さらに予約結果やスケジュールなどをまとめた内容をPDFなどに整理し、自分宛にメールなどで通知できます。当然、カレンダーアプリにも予定を登録できるので、私たちがこれまで手作業でやっていた作業をほぼ自動化できてしまいます。
■AIエージェント同士の連携も
さらに、A2A(Agent to Agent)も注目されています。これは、複数のエージェントが連携してやり取りして動作するものです。人間が指示を出さなくても、AIエージェント同士がチームのように連携して動作することで、便利な使い方ができることが期待されています。
さいごに。
AIエージェントと聞くと、なんだかSFの世界のように感じるかもしれませんが、技術的な部分の準備はすでに整っています。
あとは、データやサービスの連携と整備を待つだけ、というところまで進んでいるということは、知っておくといいでしょう。
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『図解まるわかり プログラミングのしくみ』『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』(翔泳社)、最新刊には『Looks Good To Me〜みんなのコードレビュー』(秀和システム)を監訳した。
※本記事に記載されている会社名、製品名はそれぞれ各社の商標および登録商標です。
※本稿に記載されている情報は2025年5月時点のものです。