ChatGPTをはじめとしたLLM(大規模言語モデル)を使った生成AIが注目を集めており、ITエンジニアだけでなく一般の利用者も活用するようになりました。
そして、このLLMを一般的なチャットとして使うだけでなく、さまざまな活用ができる方法として注目されているのが「MCP」- Model Context Protocol(モデル・コンテキスト・プロトコル)です。
どんな使い方ができるのか、その特徴や注意点を含めて紹介します。
- MCPとは?
- MCPで何ができるのか
GoogleカレンダーやGit、Claude Desktopにも接続 - チャットや音声で更新も可能に
メモアプリの場合:メモの内容を取得する他、メモの登録や更新も可能 - MCPを使うときの注意点
1. MCPとは?
ChatGPTなどのLLMでは、一般に公開されている文書などを使って学習しているため、回答される内容も一般的なものです。
このようなLLMに対し、社内にあるデータを読み込んで回答したいときに使える方法として、以前はRAG(検索拡張生成)について解説しました。
このような方法でも十分に便利なのですが、特定のLLMでしか使えませんでした。
別のLLMを使うと、そのLLMに合わせるように検索結果の書式を調整する必要がありました。そんな中、Claudeを提供しているAnthropic社が公開し、OpenAIをはじめとした多くの企業が取り組んでいるのがMCPです。
▲図1
これはオープンなプロトコル(通信を行うための規格)で、このプロトコルに対応していれば、特定のLLMに特化することなく使えることが特徴です。
そして、そのLLMに対してデータを提供する先を自由に選択できます。
2. MCPで何ができるのか
図1のように、MCPは「MCPクライアント」と「MCPサーバー」との間の通信で使われるプロトコルです。
実際には、JSON-RPCという方法を使い、双方向の通信が可能です。つまり、それぞれがMCPというプロトコルで通信しさえすれば、MCPクライアントもMCPサーバーも自由に開発して接続できることが特徴です。
■MCPクライアント
- Claude Desktop
- Visual Studio Codeの拡張機能
- テキストエディタCursor
- ランチャーの拡張機能Raycast
- Googleカレンダー
- Notion
- Git
つまり、上記のMCPサーバーに接続することで、既存のクラウドサービスを手元にあるLLM(チャットアプリ)から利用できます。
そしてクラウドサービスだけでなく、手元のパソコンの中でMCPサーバーを動作させれば、パソコン内のファイルにもアクセスできます。
3. チャットや音声で更新も可能に
MCPサーバーを使ってデータを取得するだけでなく、MCPサーバーを使ってデータを更新することもできます。
モの内容を取得するだけでなくメモの登録や更新も可能。
上記の例は、MCPを使うことで、さまざまなデータに対してLLMからアクセスできることを意味します。
このとき、利用者とデータとの間はチャットでのやり取りが基本です。
これまではさまざまなアプリケーションを使うとき、アプリケーションが見栄えのするUIを実現していたのですが、これが不要になることを意味します。
▲図2
つまり、チャットのUI(もしくは音声での入力や応答)と、データさえあれば、さまざまな処理ができる可能性があります。
クラウドで提供するサービスだけでなく、デスクトップアプリもMCPに対応することが当たり前になる可能性があります。
4. MCPを使うときの注意点
MCPは便利になる一方で、セキュリティ上の注意点もあります。
■MCPサーバーは誰でも開発できるため…
- 実装に脆弱性が含まれていると、サイバー攻撃を受ける
- 情報漏洩につながる可能性がある
- MCPサーバーの開発者が意図的にデータを外部に送信するプログラムを作成している可能性もある
さまざまなMCPサーバーと接続することで、自由に情報をやり取りできますが、利用者にはどのような内容が通信されているのか目に見えません。
社内のデータにアクセスするMCPクライアントと、社外のデータにアクセスするMCPクライアントがあり、双方向で自由に読み書きできるということは、気づかないうちに情報漏洩につながる可能性もあります。
このように、MCPサーバーを使うときは自己責任で、どのようなリスクがあるのかを理解して使われなければなりません。
それでも、MCPが普及すると、これまでのシステム開発、サービス提供といったビジネスを一変させる可能性があります。今後の開発状況などには注目していきたいものです。
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『図解まるわかり プログラミングのしくみ』『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』、最新刊の『実務で役立つ バックアップの教科書』(翔泳社)がある。
※本記事に記載されている会社名、製品名はそれぞれ各社の商標および登録商標です。
※本稿に記載されている情報は2025年4月時点のものです。