できればプライベートを優先したい、もっと自分の時間を大切にしたい……と、どちらかといえば“ワークライフバランス”を重要視する人が、増えているような気がする。もちろん、朝から晩まで身を粉にして働く必要はない。でも「楽ではない仕事」に挑戦するからこそ、味わえる達成感もあるもの。神原和司子さん(36) は、若いころからとにかくバリバリ仕事に打ち込んできた。紆余曲折を経たものの、いま再び、「もっと働きたい」という気持ちを抱くようになったという。

働きづめの毎日、でもそれがとにかく楽しかった

「20代の頃、今では誰もが知る求人情報誌の福岡拠点に携わっていました。拠点立ち上げからまだ3年目くらいでとにかく忙しかった!(笑)新規営業に駆け回る毎日で、本当にずーっと仕事をしていました」

思わず、話を聞いているこちらが「うわぁ、それは大変!」と感嘆してしまうようなエピソードの数々。それなのに、仕事の話をする彼女は本当に楽しそうに、イキイキとしている。

ちょうど、働いていた職場では立ち上げ直後の事業が急成長していた時期。「0→1」のフェーズにあって決して楽ではなかったが、神原さんはそんな日々をとても懐かしく思い出すそうだ。

「遅くまで仕事しているのに、そのあとさらに同僚と飲みに行ってひたすら仕事の話。大変ではありましたけど、仲間がいたこともあり、頑張れたんですよね」

そんな“仕事大好き”な神原さんだったが、ある時突然、転機が訪れる。

身体に異変が……ある日突然、訪れた受難

それは、営業の仕事をはじめて4年目の頃だった。なぜか突然、髪の毛がごっそりと抜けてしまった。

「自分では、何も自覚はなかったんですけどね。知らず知らずのうちに身体に負担がかかっていたのか、どこか無理していたのか……」

結局、原因はわからずじまい。一度、完全に抜けてしまった髪の毛は少しずつ生えそろってきたものの、あるとき再び、また抜け落ちてしまった。

「仕事も会社も好きだったので、辞めるつもりなんて全然なかったんです。でも当時の上司に、『さすがに3回目、次また髪が抜けることがあったら、辞めます』と伝えてはいました」

残念ながら、その“3回目”は、起きてしまった。

神原さんは不本意ながら、7年半にわたって働いた会社を退職することを決めた。

自分が直面した問題を通じて、出会ったライフワーク

会いたい人に会いに行く、行きたい場所を訪れる――しばらくまとまった休みも取れていなかったので、退職後はリフレッシュも兼ね、気ままにすごしていたという神原さん。

その時間の中で、個人ではじめた小さな事業が、ウィッグの販売だった。

「会社員時代に社内報で、看護師でありながら、ウイッグと綿帽子を販売する会社を立ち上げた方のインタビュー記事を読んだことがあって。ぜひお会いしてみたい、と思ったんですよね。髪に関しては、何より自分自身が大変な思いをしましたから」

その人と手紙やメールをやり取りし、会社訪問をした結果、「自分も販売に携わりたい」と思い立つ。自分ができる範囲で、同じ悩みをもつ女性の相談にのったり、ウィッグをインターネットで販売する「そらぞら」を運営したり、地元の美容師と連携してサービスを提供したりと、少しずつ取り組みを広げていった。

「結婚を機に福岡から東京に移ってきたので、今はインターネット販売を中心に細々と続けています。まだまだ本当に小さな事業ですが、これからも続けていきたいと思っています」

他人の痛みを知り、自分自身が大きく変わった

そして現在、神原さんは、再び会社で働きはじめた。今度は派遣スタッフとして、進行管理アシスタントをしている。

「職種にこだわりはないのですが、なんでしょう、やっぱり裁量のある仕事を任せてくれる社風が好きなんでしょうね。ただ、今、ちょっと物足りないんです。やっぱり、大変な仕事はその分、返ってくる“うれしさ”や達成感も大きいですから」

個人事業主としてのみ活動していこうと考えていた時期も、少しあったそうだ。しかし今は、派遣や個人事業主の仕事、友人知人のプロジェクトなどを組み合わせ、柔軟に働いていきたいと考えているそう。

ただ本当はもう少し、バリバリ働きたいという彼女。かつての辛い経験は、神原さん自身をどう変えたのだろうか。

「髪が抜ける経験をしてから、周りの人からすごく『変わった』と言われるようになったんです。話しやすくなった、柔らかくなった、と(笑) 以前はものすごくドライで、仕事ができない人に対して『お金もらっているのに、なにそれ?』なんて思っていたこともあって。

自分は、心も体も強い方だと思っていたんです。そんな私でさえ、身体に異変が起きてしまった。だから他人の痛みや悩みが、以前よりわかるようになった気がするんですよね」

ほがらかに笑う彼女からは、かつてまとっていたという強い厳しさはもう、感じられなかった。

ウィッグの取り扱いを通じ、同じ悩みをもつ女性の力に

取材当日、実際に販売しているというウィッグを持参してもらった。人毛を使用しているだけあって、髪のツヤなどもかなり自然。自分の好みの髪型にカットしてもらうこともできるそう。

「私も最初は、ウィッグを使うこと自体に抵抗がありました。でもやっぱり、後ろ姿などがすごく気になってしまうんです。人毛を使ったウィッグなら、細かい産毛まで再現したり、ヘアアレンジをすることもできます。ほとんどウィッグだとはわからないレベルです」

忙しかった仕事を辞めてからは、ときどきまとめて休暇を取り、海外旅行に出かけたりもする。年に1度は夫婦で旅行するものの、それ以外は友人と一緒や、気ままに一人で旅することが多いのだとか。

ワイヤレスイヤフォンは、通勤用。気分が上がるように、テンポの速いJ-POPや洋楽を聴いている。

ライター:大島 悠(おおしま ゆう)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)
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