忙しくて時間をかけられない、疲れすぎてキッチンに立つのも億劫、そもそも料理が苦手……毎日のごはんづくりをストレスに感じている人は少なくない。今回のイベントは、雑誌やwebで活躍中のスープ作家・有賀薫さんによる『らしく働くためのスープ・レッスン~簡単、楽になる!ごはんマネジメント~』。「~しなければ」「~できない」という焦りやプレッシャーを軽くし、無理なく健康的な食生活を手に入れるためのヒントが、おいしいスープとともに紹介された。

講師:有賀 薫さん
1964年東京生まれ。スープ作家。ライター業のかたわら、家族の朝食に作り始めたスープが2018年2月時点で2200日以上になる。その写真やレシピで個展を開くほか、スープの実験イベント『スープ・ラボ』を主宰。コンテンツ配信サイトcakesにて、スープレシピの記事を好評連載中。著書に『365日のめざましスープ』(SBクリエイティブ)、『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう ~1、2人分からすぐ作れる毎日レシピ』(文響社)。

スープがあれば、食べることが楽になる

「料理がもっと上手だったらごはん作りが楽なのに…って思っていませんか?でもね、料理の腕があがっても、ごはん作りは楽にはなりません」――スープ・レッスンは、有賀さんのそんな語りかけから始まった。

「えっ」と意外そうな表情を浮かべる参加者に向かって、「だって、料理を仕事にしている私も、毎日のごはん作りは大変だもの」と、有賀さんはにっこり。

「献立を立てる、買い物をする、料理をする、器を選ぶ、セッティングする、食べる、片づける……ごはん作りは、クリエイティブと下働きみたいなことが合体したすごい家事。できないことを後ろめたく思う必要はありません。とくに、皆さんみたいに働きながらごはんを回していくって、本当に大変なことだと思うんです」

今回のイベントで提案するのは、スープを使ってもっと楽に食べる方法。

「味の加減がしやすいし、作り置きができて経済的、時間差があってもおいしく食べられるし、夜中に食べても罪悪感が少ない。スープって、がつんとした満足感はないかもしれないけれど、ふだんの暮らしに寄り添ってくれる存在なんです」

ごはん作りの悩みに応える3つのスープ

息子さんの受験を機に、丸6年、毎朝スープを作り続けてきた有賀さん。数あるレシピの中から、この日は、事前に参加者から募った「ごはん作りに関する悩み」に応える3つのスープが用意された。

●悩み1「献立がうまく立てられない」

レパートリーが少ない、組み合わせが考えられないなど、誰もが頭を悩ませる献立。有賀さんは、「週に何回か、スープをメインにすれば献立の悩みから解放されますよ」と言う。

「肉や魚、豆などのたんぱく質と野菜をいっしょにしたスープなら、ひと皿で充分。後は、ごはんやパンを添えれば、おなかも満足で、栄養的にもバランスのよい献立になります」

☆『豚肉とキャベツのあまざけみそ汁』~肉1品、野菜1品で、だしも不要

【レシピ】(2人分)
①キャベツの葉5~6枚と豚肉150gは食べやすい大きさに切る。
②鍋にキャベツを入れて豚肉を乗せ、水を50ml入れて鍋の蓋をして中火にかけ、約7~8分蒸し煮する。
③キャベツが蒸し上がったら、水200ml、あまざけ(麹由来の無添加のもの)100mlを入れて温め、味噌大さじ2を入れて溶く。

「米麹のあまざけがやさしい味に仕上げてくれます。しっかりフタをして、少量の水で蒸し煮にするのがポイント。キャベツの生臭さも消え、甘みやうまみが出てきます。キャベツを切るのが面倒なら、ちぎってもいい。残ったらポリ袋に入れて冷蔵庫にしまっておけば、次の日に使えて便利です」

●悩み2「ごはん作りに時間をかけたくない」「ごはん作りが面倒」

シチュエーションによっては無理して手作りにこだわるのではなく、外食やコンビニの惣菜、冷凍食品などもうまく利用しながら、まずは「食べること」を最優先して、と有賀さん。種類も増え、味も向上しているインスタントのカップスープをアレンジした時短スープを提案する。

☆『追い野菜スープ』~インスタントや冷凍野菜で、上手に時短

【レシピ】(1人分)
①少し大きめの耐熱容器にカップスープを分量通りに作り、そこへ生や冷凍の野菜をひとつかみほどプラス。
②ラップをかけてレンジで1~2分温める。
(おすすめの組み合わせ)
・ほうれんそうポタージュ+生のほうれんそう、または冷凍ほうれんそう
・コーンポタージュ+すりおろしじゃがいも、または冷凍フライドポテト
・かぼちゃポタージュ+冷凍かぼちゃ

「朝食や夜遅くにちょっとだけおなかに入れたいとき、ごはんを作る時間はないけど栄養が気になるときにおすすめ。オフィスにレンジがあればランチにもいいですね」

●悩み3「栄養がうまくとれていない気がする」「体調がすぐれない」

事前に参加者から「3日分の食事内容」を提出してもらっていた。それを見て有賀さんは、全体に食事の量が少なめなことが気になったと言う。

「ある程度は量を食べないと、栄養も充分にはとれません。野菜もそうですが、たんぱく質も足りていないように感じました。とくに外で働いている皆さんには、肉や魚を1日に1回はがつんと食べてほしいですね」

☆『塩豚とじゃがいも、レンズ豆のスープ』~普段とりにくい食材をスープでがっつり

【レシピ】(2~3人分)
①キャベツ3枚、じゃがいも2個を細かく切る。塩豚300~400gは生のまま水洗いし、食べやすく切る。
②鍋で長ねぎ1本とにんにく1個、オリーブオイル大さじ3杯を入れて焦げ付かないように炒め、塩豚と水600mlを加えてアクをすくいながら煮込む。
③沸騰して20分たったら洗って水を切ったレンズ豆50gと野菜を加え、さらに20分して豆とじゃがいもが柔らかく煮えたら、塩とこしょうで味をととのえる。

「塩豚は、豚肩ロース肉のかたまりに肉の重量の2%ほどの塩をまぶしたもの。作っておくと重宝しますよ。使うときは塩を洗い流します。スープだけでなく、塊のままゆでて薄切りにすれば、ラーメンやパスタ、チャーハンなどに使えます。少しハードルが高いかもしれませんが、ぜひ挑戦してみてください。豆も栄養たっぷり。乾燥レンズ豆は戻さなくて使えるから便利です」

優先順位を決めて、「自分らしい食べ方」を

講義の合間にふるまわれた『豚肉とキャベツのあまざけみそ汁』と『塩豚とじゃがいも、レンズ豆のスープ』に、「すごくおいしい!」「からだの芯から温まる」「やさしい味で癒される」と、参加者から大きな歓声が。「働く女性にしっかりごはんを食べてほしい」と願う有賀さんの“母心”あふれるお話と、家に帰ってすぐに試してみたくなるようなプチ情報満載のレッスンは、温かく和やかなムードのうちに幕を閉じた。

最後に、「毎日の食べることを楽にするコツは、優先順位を考えること」と有賀さん。時間をかけずにすませたいのか、少し手間がかかってもおいしいものを食べたいのか、とにかく栄養だけはしっかりとりたいのか……「食べること」に関して、自分が大事にしたい価値観は何か――。

「こればっかりは他の人には決められません。皆さん一人ひとりが自分でよく考えてみてください。そうして優先順位を意識してごはんを作ったり食べたりしているうちに、手あたり次第に食べるとかインスタントラーメンばかり食べるとかではない“自分らしい食べ方”が、きっと身につくはずですから」

らしく働くためには、料理による時間のマネジメントや健康管理は大切である。毎日行うことだけれど、普段考える機会がほとんどないであろう「食べる」こと。これを機に、あなたのごはんを振り返り、“自分らしい食べ方”を模索してみるのもいいだろう。

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)
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