今や離婚をする夫婦が増えた時代。とは言え、いざ離婚となるとこれから先どうやって生活しよう、仕事は?メンタルは?と不安に思う人も少なくないのでは。一方、「離婚して良かった!」と明るく語るのは、小野寺光美さん(54)だ。小野寺さんは今から6年前、約20年間の結婚生活にピリオドを打った。当時を、「無意識に蓄積された肩凝りが、すぅっと消えて楽になったような気持ち」と振り返る。

離婚は他人事のはずだったが…

小野寺さんが結婚したのは29歳のころ。夫と娘の3人家族で、時々パートに出たり、アクセサリーを作って販売したりと、穏やかに過ごしていた。しかし、20年近くの月日を共にするなか、夫との性格の不一致を徐々に感じるようになったという。

「はじめは、夫婦仲がいくら悪くても20年近く一緒にいる相手と離れる、という選択はなかったんです。何とかこのまま生活を続けていくのかなと。だましだまし過ごしてきましたが、いよいよ2人の関係修復が困難になり、急遽離婚を決意しました」

一緒に過ごした月日はあまりに長い。離婚が決まってからの小野寺さんの生活は一転した。

パートから派遣へ。離婚後の働き方

「前から準備しておけば良かったのですが、予想外に早く離婚が決まって。それからすぐに仕事探しを始めました。まずは当時週3日で働いていたパート先に、週5日勤務へ変更出来るかを相談するもNG。週5日になると、手続きの変更が色々あるそうで、そこまでの雇用は考えていないとのこと。正直ショックでしたね」

アクセサリー販売もしていたが毎月の収入が不安定であったため、次に考えたのが派遣スタッフという働き方だった。

「正社員か派遣かで迷いましたが、当時娘が高校生だったこともあり、時間的にも融通が利きやすい派遣を考えました。3社登録しましたが、仕事が実際に決まったのは、3か月後くらい。先の見えない、とても長い3か月でした」

離婚後初の仕事は3か月の期間限定だった。「オフィスでの仕事はほぼ未経験でしたが、ある程度生活のできる収入が自分でも稼げることにびっくりしました。会社で週5日働くなんていつ以来だろう。こんな私でも仕事をさせてもらえるんだと、すごく自信がつきました」

その後、いくつか派遣先を経験し、現在は建設関係の会社で防災マネジメントの業務を平日週5日のフルタイムで勤務している。忙しいながらも充実した環境で仕事に取り組めているそう。そして、離婚した当時は高校生だった娘が、地方の大学へ進学。家族3人だった生活から、一人暮らしとなった。

視界が一気に広がっていく日々

離婚前後では、どんな気持ちの変化があったのだろう。

「離婚する前は夫婦仲が悪かったこともあり、毎日何かしら気持ちが滅入ることがありました。今考えると、なぜあんなに結婚生活に執着していたのか信じられないです。アクセサリーを販売したりと、やりたいことはやっていたはずなのに、常に窮屈さを感じながら過ごしていました」

今は制限されるものもなく、全て自分のタイミングで過ごせることが心地良いという。娘が自立してしばらくは寂しかったが、半年程度で子離れできたそう。ここ1年は、土日にアクセサリーの学校に通い、朝から夜まで、思う存分勉強して過ごしている。「今まで曇っていた視界がパァッと広がって身軽になった感じ」と小野寺さんは顔をほころばせた。

さらに休日の過ごし方や行動範囲も以前とは大きく変わった。

離婚前は家にいるのが好きで、1週間外に出なくても平気だったというが、今は休日もどんどん外出する。たとえば美術館。以前は人混みが苦手で避けていた場所のひとつだったが、今は現地へ足を運ぶ。

一人旅にも出るようになった。会津や出雲、隠岐島など、ほとんどプランを立てずに向かう。現地の観光協会でもらった資料を見ながら、どこに行こうか、明日はこの電車に乗ってみようかなど、一つひとつ決めることにもワクワクする。離婚をする前とは別の、あたらしい自分を楽しんでいるそうだ。

今では起業に向けての準備も

以前とはあまりに違う過ごし方に驚きながらも、反対に大変だったことを聞いてみたら、予想外の笑顔がかえってきた。

「あまりないですね(笑)名字が変わったことで周りが戸惑ったことくらい。離婚後しばらくはそのままの名字を使っていましたが、娘が学校を卒業したとき、旧姓に戻したんです。このタイミングで名字を変えたので、離婚していることを元々知っている人からは、結婚したの?と聞かれたりしておかしかったです」

今後について聞くと、派遣スタッフとして働きながら、将来的にはアクセサリーでの起業も考えているという。「以前、アクセサリーの会社で働いていたこともありますが、決められたデザインしか作れなくて辞めたんです。やっぱりオリジナルのデザインを作りたいなと。今はアクセサリーの学校に通いながら、起業に向けて準備をしています」

人生何が起こるかわからない。当たり前だと思っていた日常が、急に当たり前でなくなることもある。しかし、新しい道を選択し、それらを楽しむ小野寺さんから、自分次第で扉はいくらでも開けると勇気をもらった。

イギリスの雰囲気に魅せられる

バナナの形をしたコインケース。数年前に、友人から誕生日プレゼントとしてもらったもの。見るからに可愛くて、一瞬で気に入った。それまでは、あまりコインケースを使うことはなかったが、今は常に持ち歩く。500円玉を入れておき、「あ!お財布忘れた!」というときに役立つんだとか。

サーモスの水筒は20年前に買ったもの。元々イギリスの国旗のシールが気に入っていたが、使っているうちに剥がれてしまい、いまは自分で同じ国旗のシールを作って貼った。「しばらく棚に置いていましたが、ここ1年くらいまた使っていますね。コップがついているところもポイントなんです」

イギリスを感じる缶の小物入れも。元々紅茶が入っていたもので、ひとつは貯金箱として使っている。職場の机に置いていて、就業先でお菓子を買うときはここから小銭を出している。

ライター:松永 怜(まつなが れい)
カメラマン:福永 仲秋(ふくなが なかあき)

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