「今朝、キャンプから帰ってきたんです」――夕方から始まる取材の前に、前日からキャンプに行っていたという多田裕美さん(40)。これまで、アパレル販売や事務職、研修業などを経て、自分の向き不向きや強みがわかってきたという。誰かのために働くことが大好きだからこそ、オフの日は自分のためだけに使いたい。そんな多田さんの充実した生活を教えてもらった。

退屈だと思い込んでいた事務職が好きに

現在、派遣スタッフとして事務職に就いているが、以前は「退屈そう」というイメージがあったのだとか。

「もともとは『カッコいい』というイメージだけでアパレル販売をしていました。ただ、入社してみると、それほど服が好きではないことに気が付いたんです」

接客業をしていた多田さんが事務職の楽しさに気が付いたのは、何年かあとに派遣スタッフとして営業事務にチャレンジしたときだった。

「事務の仕事をしようと思ったのは、以前、テレコミュニケーターの仕事をしていたときにExcelを使ったのがきっかけでした。面白そうだと思ったので、職業訓練校でWordやExcel、PowerPointを習い、その後、別の職場で営業事務に。お客様の対応もしながら、合間を見て事務作業もする。臨機応変に時間短縮の工夫をするのが楽しくて。また、WordやExcelは、あいまいじゃなくしっかり答えがあるところが好きなんです」

事務作業をしながらの顧客対応では、アパレル販売で接客をしていたスキルが役立った。仕事ぶりを買われて正社員になったあと、事務スタッフの1人が異動になり、2人分の仕事を多田さんだけでまかなうことに。

「2人で異なる担当をしていたので、その人の代役は勝手がわからないことばかり。慣れていれば10分で終わることでも、調べながらなので30~40分かかる。仕事が溜まっていきどうしようもなくなったところで、上司や同僚に弱音を吐くことを覚えたんです。何でも自分でやりたい気持ちに加えて、嫌がられるかもしれないという不安はありましたが、しっかり話せば嫌な顔をせずに手伝ってくれるんだと学びました」

上から指導しなくてはいけない立場が耐えられず……

接客態度はもちろんのこと、部署全体の顧客満足度がアップしたことが評価され、多田さんは他部署に異動となる。異動先は、顧客満足度を上げるための施策を打つ部署だった。

「顧客満足に関するデータを集めて分析をするといった仕事もありましたが、その中のひとつ、新入社員の方向けの講義をするのが苦手で。敬語の使い方やお辞儀の仕方などを教えるプログラムでしたが、それよりもっと根本的に大事なことがある気がしていました。また、『新入社員に嫌われても言うことを聞かせればいい』という上司の方針がどうしてもなじめなくて……」

営業事務に戻りたいという希望も出したが叶わず、退社することにした。

現在は、派遣スタッフとしてOA事務を担当している。以前のような顧客対応はないものの、周囲の人を気遣いながら働くのが楽しいという。

「時短勤務の社員さんと一緒にお仕事をしています。書類のチェックは即日対応がルールだったので、対応がとても大変そうでした。でも、よく見ると期限が少し先の書類もたくさんあるんです。そこでチームに提案をして、必ずしも即日対応でなくてもいいようにしてもらい、期限ごとにまとめて作業してもらうようにしました。それだけでも、ずいぶん楽になったようです。大きく仕事の流れを変えるというよりも、自分の仕事の範囲内で少しでも改善できるよう心掛けています」

オフの日はソロキャンプで自分のために時間を使う

「自分の強みは気配りや心配りだと思っているので、調和のために潤滑油のような存在でありたいです。だからこそ、オフの日は自分のために過ごすことを心掛けています」

仕事では人のことを考え、休みの日は自分のことだけを考えたい。そんな多田さんの趣味は、贅沢に時間を使ったソロキャンプだ。

「もともと好奇心が旺盛で、すぐに行動しちゃうタイプなんです。1人で沖縄に行って2年ほど働いたこともあるほど……。ソロキャンプにハマるきっかけは、友だちと行ったバーベキューで、『大自然の中でお酒を飲むのってこんなに美味しいんだ!』って感動したことです」

まずは、1人で河原へ行きバーベキューをしながらお酒を飲むことから始めた。その後、夜に焚火がしたい、とキャンプに行くように。ネットで調べながら、少しずつソロキャンプにハマっていったという。

「行く場所はいくつか決まっていますが、設備が整っていない方が『非日常感』があって好きです。『川と山だけ』みたいな場所にテントを張って、手間をかけて火をおこし、ゆっくり料理をして、焚火をしながらお酒を飲んで……。夏は混んでいるので、寒い時期の方が好きですね。月に2回くらいは行きます」

自然の中で暮らしたい欲求があるかと聞くと「それを日常にしたいわけではないんです」と多田さん。人に必要とされ、感謝されるから、働くことが大好き。働いたお金を使って、非日常を味わえるキャンプに行き、キャンプに行くためにまた働く。そのバランスが気に入っているのだ。

キャンプ用品はお気に入りを少しずつ

形が可愛くて購入した焚火台は、デザインが気に入った。コンパクトに畳めて日本製なのもポイント。パーツを買い足せばドーム型にもできるので、いつ次を買おうかと思案中だ。焚火を始めると、2時間くらいは何もせずぼーっと過ごすのだとか。

「お肉にこれをかけるだけで美味しい」というお気に入りの調味料は「ほりにし」。和歌山県にあるアウトドアショップ『Orange』のオリジナル商品で、20種類以上のスパイスや調味料がブレンドしてある。

「肉は炭で焼くのがいいんです。火をつけるときには、薪をナイフでケバ立たせてフェザースティックにし、ナイフに付いているファイヤースターターで着火します。急いでいるわけじゃないし、その手間暇が楽しい」

弁当箱のようにも使えるメスティンのお鍋も優れモノ。そのまま火にかけて、ご飯を炊いたりお鍋を作ったりする。

ヘアドネーションのために伸ばしている髪は、仕事中はお団子にしてまとめているため、ヘアクリップは欠かせない。ヘアクリップのラインストーンも自分で付けてしまう。とにかく自分のための時間を贅沢に過ごすのが多田さん流だ。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:福永 仲秋(ふくなが なかあき)

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