現在(2022年12月16日時点)、「キャリアコンサルタント」の資格取得を目指し、猛勉強中の赤堀敦子さん(56歳)。家事をこなしながら、テキストやパソコンに向かう毎日だ。思い起こせば、きっかけは10年近く前、派遣スタッフとして、ある大学でパソコンルームのカウンター受付業務に就いたこと。本人も気づかぬくらいさりげなく蒔かれた夢の種は、赤堀さんのなかでどう膨らんでいったのか。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

「1日1回は必ず勉強する」と決め

赤堀さんにインタビューをしたのは、筆記試験を前の週に終え、1ヶ月後に実技試験を控えているというタイミング。「筆記、どうだったんでしょうね。まだモヤモヤをひきずっています。吹っ切って、実技に向けてシフトしていかねば……」と苦笑しながら、声は明るい。

家事を午前中に済ませ、午後から夕食まで過去の問題を解いたりオンラインで講習を受けたりと勉強に集中。筆記試験の直前は、夕食のあとにも机に向かう時間をとっていたという。

「過去問で間違えたところを見直してつぶしていくのが基本です。間違えた理由や正解の根拠となる法律などを押さえるために、厚生労働省のホームページを読み込むことも。細かい作業なので、途中で集中力が切れてしまいそうになるんですけどね」

普段は、どちらかというとあらかじめ計画をしっかり立てて事に臨むタイプだが、コロナ禍で家族が在宅勤務になり、状況が少し変わったそうだ。

「昼間、私しか家にいなかったときと違って、何でも自分のペースというわけにいきませんから。緻密にスケジューリングしてもその通りに消化できないとかえってストレスになりそうなので、ざっくりした感じに切り替えました。決めているのは、1日に1回は必ず勉強をするということ。たくさん時間がとれなくても、寝る前に講義を聴くなど、何かしらできることをするようにしています」

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小さな挫折が、夢に向け踏み出す原動力に

主に派遣スタッフとして長く事務系の仕事に携わってきた赤堀さん。50代に入り、この先のキャリアプランを見据えて何か専門技能や資格を身につけたいと思い立つ。頭に浮かんだのは、ある大学で働いていたときの記憶だった。

「もう10年くらい前ですが、学生さんとのやりとりがとても楽しかったのを覚えています。コツコツとパソコンに向かう仕事も決して嫌いではないのですが、同じ事務職でもそのときは、直接会話をする機会が多く、はりあいを感じました」

振り返れば、このときに「学生に関わる仕事に就きたい」という夢が芽生えたのかもしれないと、赤堀さんは話す。

もともとは、人と接することが性に合っているのだろうとも。「電車で隣に座った見ず知らずの方ともすぐおしゃべりが始まってしまう。娘がいつも驚いています」

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ふたりの娘さんの後ろ姿と愛犬。取材中には、家族とのあたたかなエピソードも多くあがった。1枚目の写真は、家族で日本三景・天橋立を訪れた際に撮ったもの

ただし、実際に行動に移したのは、もう少しあと、2020年のこと。「足踏みしながら踏み出さない」という日が続いた。長く温めていた夢の実現に向けて、背中を押したのは小さな挫折だったという。

「まさに就活生をサポートするという仕事を見つけて、即座に飛びつきました。けれどふたを開けてみたら、キャリアコンサルタントの資格を持っていないとできないものだった。それが悔しくて、すぐに学校を探しました。不思議なのは、決意すると機が熟したという感じで、いろいろなことがするするとスムーズに運んだこと。夢って、なんとなくでも温めていれば、いつか扉が開かれるんだって思いましたね」

自分の成長を実感できる喜び

2020年秋には、キャリアコンサルタントの入口ともいえる「国家資格キャリアコンサルタント」を取得。よりスキルを高めたいと、今はその上位にあたる資格試験にチャレンジしている。実はこの試験を一度受験し、不合格になった赤堀さん。

「前回はだいぶ落ち込みました。自己肯定感もずたずたで……。でも、もう一度勉強をし直してみたら、学んだはずなのに頭に入っていないことばかり。こんな実力でいきなり現場に出てしまったら大変だったと、肝が冷えました」

再度取り組んでみて、改めて、キャリアコンサルタントという仕事の本質も理解できたような気がすると話す。

「先生の受け売りなのですが、学生が自分で選択できるように知識や経験を総動員して気づきを与える――それがキャリアコンサルタントの役割だということです。正直言って、以前はそこまで深く考えていませんでした。一度落ちて改めて勉強し直して、やっと腑に落ち、自分のすべきこと、立ち位置がつかめたという感触です。試験の結果はわかりませんが、人はいくつになっても成長するんだと実感できただけでも収穫でした」

年子の二人の娘さんを育て上げることを軸に据えていたこれまでに対し、自分に改めて向き合っている今。「誰かのためではない、自分だけのことなので、『今日はやらない』と思えばそれで済んでしまう。そこを律するのはなかなかむずかしいものですが、子育て中とはまた違う味わいですね」

そう話す赤堀さんの表情は、とても晴れやかだ。

家族は、勉強に集中しすぎる赤堀さんを心配しながらも応援し、見守ってくれている。「娘は『そんなに大変なら、やめれば』って喉元まで出かかっているはず。でも、私のなかでは、進んでいる道は間違っていないという確信があるんです。それに、ここまで来たら、受かるところまで見せないと、親として引っ込みがつきません。これが私の生き様ってやつですね」

吟味して愛用する筆記具は、心強い“相棒”

愛用品の写真は、家で勉強するようになって、「初めて近所にあることに気づいた」という公園で撮った。愛犬との散歩でもよく足を運ぶ心地よい場所だ。

写っているのは、どれも赤堀さんの相棒と呼べるアイテム。

1つのペン先で2色の線が引けるマーカーは、テキスト上の「クライアントの発言」「思い込み」 などを区分けするのに重宝する。中央は、マークシート用のシャープペンシル。芯の太さが1.3mmで、マークしやすい。右は、カスを集める磁石付きの消しゴム。インスタで見つけたこの3本は、試験の際に必ず持参する(マーカーは、第20回キャリアコンサルタント試験から使用不可に)。

タンブラーは、勉強中コーヒーをよく飲む赤堀さんへの2人の娘さんからのプレゼント。

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)

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