中学2年生の子どもを育てながら、最近離婚してシングルマザーになったという奥山ちえりさん(50)。派遣スタッフとして週に3日勤務しつつ、タイ料理教室、タイ人の子どもの通訳、幼稚園でのおやつ教室、Webライティング、子ども食堂のボランティアなどをこなしている。さまざまな仕事は、これまでの経験がつながって実ったもの。奥山さんが今に至るまでの経緯をうかがった。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

料理の先生になったのは、1999年にタイへ行ってから

奥山さんのキャリアやスキルは、タイでの経験なしには語れない。タイで暮らし始めたのは、1999年。27歳のときだった。最初は語学留学としての渡航だったが、有名なタイ料理の先生と知り合い、日本人向けに料理教室を開いて通訳する仕事をスタートした。

「自分でも料理が覚えられるし、お金にもなるしで一石二鳥以上。Webサイトを作成できるツールを使ってホームページを作り、集客をしていました。ほかにも、駐在員の奥様向けにチラシを配ったり、フリーマガジンに広告を載せたり……。当時はインターネットの出始めでしたが、パソコンを持って行ったのがよかったと思っています」

パソコンを持って行ったのは、その前に働いていた会社の社費で、ボランティアのワークキャンプに参加したのがきっかけ。フィリピンの離島でのプロジェクトはIT系企業に勤める参加者が多く、彼らが個人で使うパソコンの話に興味を持った。

「自分のパソコンやメールアドレスを持っていると、海外でも仕事ができるよ」と聞き、「タイに行ってもパソコンを通じてみんなとつながりたい」と思ったのだそう。当時、Wi-Fiは普及しておらず、イーサネットの時代。電話線に繋ぎながらインターネットを活用した。

また、広告を出したフリーマガジンで、ライティングの仕事も請け負うことに。レストランの紹介記事などを書いていたという。

結婚のために帰国。夫の会社で担当した経理がスキルに

8年ほど経った2007年、タイの政治が不安定になり、今後もタイにいることに不安を感じるようになった。タイで出会った日本人の男性とお付き合いしていたことから、結婚を機に日本へ帰国。自営業をしていた夫の会社の事務や経理を務めることになったという。その後すぐ、空いた時間でタイ料理教室を始めた。

「徐々に生徒さんも増え、いろいろなところからお声がけをいただくようにもなったんです。瀬戸内海の島で、島の野菜や果物を使ったタイ料理のワークショップをしたことも。活動の場が広がって楽しい! と思っていた矢先、夫婦間で離婚の話が持ち上がって……」

離婚することになったのが5年ほど前。このタイミングで料理教室に毎回参加していた人、集客を手伝ってくれていた人が引っ越すなど、参加者が減少。さらに、新型コロナウイルスの蔓延により、料理教室も頻繁に開催できなくなってしまった。

加えて、離婚となれば、子どもを引き取りシングルマザーになる。料理教室が縮小する中、収入を確保しなくてはならない。

「正社員で働くと料理の仕事を手放さなくてはならないし、アルバイトやパートでは収入が足りないし……と悩んでいたころ、知人から『派遣スタッフという選択肢もある』と教えてもらったんです。比較的時間が組みやすくなることも嬉しく、早速登録しました」

ところが、いくつもの募集に応募しても、なかなか就業先が決まらない。

「キャリアコンサルタントに相談すると『10年も経理やってるじゃない』と言われたんです。元夫の会社を手伝っていたことがスキルになるなんて想像もしませんでした」

経理事務として登録すると、すぐに働く企業が決まった。フレキシブルに勤務日を決められるという条件だったため、適度に働きながら安定収入を得て、他の時間で自分の好きなことができる。奥山さんの新たなる人生のスタートだった。

木曜日は子どもに関わる仕事を複数入れている

現在、派遣スタッフとして勤務するのは週に3日。空いている木曜日は、子どもに携わる仕事やボランティアを3つ掛け持ちしている。

「午前中は、タイ人の小学生の通訳をしています。タイから引っ越してきて、日本語がまったくできない状態から小学校に入った子どもなので、一緒に授業に出て支援しています」

もともと、タイ語を活かす仕事がしたいと国際交流会のドアをたたいたが、「ボランティアならある」と言われたそう。「ボランティアを続けていたところ、近くの小学校での通訳としてお声がけをいただいたんです。今は、ボランティアではなく非常勤講師として働いています」

午後は、子どもが通っていたモンテッソーリの幼稚園でおやつ教室。預かり保育の時間に、卒園児の母親を中心として園児たちにいろいろなことを教えているのだとか。ひらがなで書いたレシピを用意し、作ったものを持ち帰られるためか、園児だけでなく保護者にも人気だ。

さらに夕方からは子ども食堂のボランティア。6年ほど前、近所で子ども食堂が立ち上がったときから参加している。

他に、空いた時間で食べ物関連のWebライターとしても活動している。料理を作って撮影したり、レシピを紹介したり、食材の生産者にインタビューしたり。「調べるのも知識を得るのも好きなので、楽しくやっています」という。

「今一番楽しいのはタイ人の子どもの通訳。子どもの吸収力はすごく早くて、成長を見るのが楽しい。子どもを支援することは、未来への投資のように捉えています。私の力が役に立つなら提供したい。ほかにも、外国籍の子どもに関わる仕事ができたらいいなと思い、友人に『そういう仕事があったら教えてね』と触れ回っています」

派遣先で新しいスキルも学びつつ、いろいろなチャンスをキャッチできるようにしている奥山さん。『迷ったらやる』を信条に、自分のスキルや経験を紡ぎ、未来につなげている。

タイ料理は作っているときのほうが楽しい!

タイ料理は、作りながらスパイスやハーブをすりつぶす。そのときに使う石臼がお気に入り。「タイ料理は、食べるより作っているときのほうが楽しいんです。ちぎったりつぶす工程で香りが立ち、その香りそのものが癒しになります。食べるだけの人はもったいない、って思っています」

料理教室で一番人気は、ハーブをブレンドしてペーストから作るグリーンカレー(2つ上の写真)。慣れてしまえば普通の変わらない手間と時間で作れるのだそう。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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