シングルマザーとして一人娘を育ててきた宮崎千尋さん(49)。お子さんはこの春に大学を卒業して社会人になり、宮崎さんは一段落ついた気持ちだ。働きながら子どもを育てるのは苦しい時期もあったが、両親の助けもあり何とか乗り越えてきた。そんな宮崎さんのストーリーをうかがった。
*オンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人よりご提供いただきました
子どもを連れて離婚。契約社員や派遣スタッフとして働く
宮崎さんがシングルマザーとなったのは、子どもが2歳のころ。
「離婚したあとは、実家があった街に引っ越しました。当時は離れた場所に住んでいた両親も1年後には戻ってきてくれました。両親が近くにいてフォローしてくれたので、自分自身がフルタイムの勤務にも出られます。加えて娘は体が丈夫で、保育園を休まなくてはならない状況が少なく、とても助かりました」
シングルマザーになってからは契約社員や派遣スタッフとして働いていた。
「『すぐに働きたい』と思うと派遣スタッフはすごくありがたい。紹介予定派遣も、自分に合っているかどうか見極められる期間があるので、自分にとっていい制度だと思いました。また、登録していると研修なども受けられるので助かっていました」
もともと新しい環境が好きな宮崎さんは、定期的に職場が変わる派遣の働き方が性に合っていた。今は正社員として働いているため、「派遣から離れてしまったのは寂しい」と感じる。
子育ての間、苦しかった時期も
両親のサポートを受けながら子育てをしていたが、子どもが小学1年生になるころ、宮崎さんの派遣の契約が終了となった。
「『小1の壁』という言葉もあるとおり、新しい環境や行事ごとの対応が大変だったため、しばらく失業保険で暮らしました。多少の貯蓄はしていましたが、足りない状況。節約をしながら、持ちものを質屋さんに持っていくことも……。ただ、その間に職業訓練に通い、プログラミングやCAD、Excelを学びました。いろいろな知識や技能が身についたのはよかったです」
職業訓練で学んだプログラミングの仕事には進まなかったが、他に学んだCADを使うCADオペレーターの仕事に就いた。最初は派遣スタッフとしてスタートし、少ししてから契約社員として勤務。だが、仕事を変えざるを得ない状況になる。
「娘が塾に通い始めたころ、教育ローンを組もうと考えたんです。ところが、教育ローンは正社員しか契約できないものもある。そこで正社員の道を探し始めました」
自宅の近くで働ける会社を探し、タクシー会社の募集を見つけた。1993年の映画『月はどっちに出ている』のタクシー運転手が印象に残っており、タクシー会社に興味を持った。
「電話の応対があるとのことでしたが、派遣スタッフとしてテレコミュニケーターの仕事をしていたのもあり、多少はやれる自信があったのだと思います」
働き始めてみると、電話応対はもちろん、パソコン作業も慣れており、業務で困ることはなかったという。昨年末に転職し、今は2社目のタクシー会社で運行管理を担当している。顧客からの連絡を受け車両を手配したり、乗務員のシフト管理など、バックオフィスとして働いている。
「夜勤もありますが、休憩や仮眠の時間もあるので体は大丈夫です。夜間に電話がつながらない時間帯があるので、事務作業が終われば仮眠をとらせていただいています」
他に、副業として月に3~4回ほど、墓石販売の店で経理を担当している。
子育てが一段落ついて、ペン習字を再開したい
子育てが一段落着き、今後はどのような生活が待っているのだろう。仕事については、現在務めている会社に満足しており、今後も働き続けたいと考えている。
「仕事以外でやりたいことは、ずっと行っていなかったお墓参りに行きたいです。お墓は関西なので十数年は行けていません。今の職場は、お休みが取りやすいので、2年に1回くらいは行けそうです」
息抜きは飼っている保護猫の世話や、ウィンドーショッピング、映画鑑賞。加えて、半年ほど行けていないペン習字に再び通いたいのだそう。
「副業は手書きの必要があるのですが、字が汚いのが気になり、ペン習字を習うことにしたんです。お稽古では、ボールペンだけでなく毛筆も教えてもらえます。この歳になると、先生に丸をもらえるのが何だか新鮮で特別な感覚。また、日常から離れて集中するのもいい時間です」
「ご当地ボールペン」が思い出の品
派遣スタッフとして働いていたころ、旅行へ行くとキャラクターのチャームが付いている「ご当地ボールペン」をお土産にするのが流行っていた。「私ももらえたのがとてもうれしくて。近くの水族館に行ったときに見つけて購入し、同僚4人にプレゼントしたのがいい思い出です」
少しずつ集めるようになり、ネットオークションで落札したこともある。だが、ネットで買ったものには思い出がないため、「自分で行くか、お土産としてもらうのがいい」と実感した。今使っているのは埼玉限定のもの。以前は職場でも使用していたが失くしてしまったことがあるため、今では自宅で大事に使っている。
ライター:栃尾 江美(とちお えみ)