皆さんから寄せられたAccessの困りごとにお答えするこのコラム。今回は「Excelに慣れている人がやりがちな失敗を教えて」です。そこで、特に初心者の方が混乱しやすい「ExcelのシートとAccessのテーブルの違い」を解説していきます。

…確かに、そっくりですよね。ぜひ日々の業務にお役立ていただけると嬉しいです。

正式名称は、ワークシート

「Excelシート」と「Accessテーブル」なにが違う?

見た目はそっくりなのに…。

Excelに慣れた人が失敗しがちなのは、Accessの「テーブル」と呼ばれるオブジェクトの扱いです。

このテーブル、おそらく、はじめて見た多くの方が抱く感想だと思うのですが、「Excelのシートにそっくり!」なんです。

行と列で構成されていて、データがずらっと並ぶ表形式で、「これなら使い慣れたExcelと同じ感覚でいけそう!」と感じた方も多いのではないでしょうか?

……でも、その第一印象は、逆に「Access、さわってみても全然わからない!」と思ってしまう原因になってしまうのです。混乱を防ぐために、押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。

ポイント1:似ているのは見た目だけ。役割は別物

AccessのテーブルとExcelのシートは、たしかにパッと見はよく似ています。でも、その役割と使い方はまったく別物です。

■Excelシートは、作業スペース

Excelのシートは、自由度の高い「作業スペース」です。

表形式の「枠」はあるものの、どこに何を入れても自由で、行も列も、ユーザーが自由に変えていいものとして設計されています。

そもそも、表を使わずにセルの上に図形や画像を載せる、という使い方すらできる、何でもアリの世界なのです。

一方で、Accessのテーブルはというと。

■Accessテーブルは、データの器

いうなれば「データの器」です。しかも、入力ルールがとても厳しいのです。

「1行=1件のデータ(レコード)」「1列=1つの属性(フィールド)」という前提があり、それぞれ「この列には数字だけ」「この列には日付だけ」といったルールが設定されています。

ルールを守らないと、データを入力することができません。

Excelと同じようにAccessを使おうとすると、「ちょっとしたことですぐエラーが出る」ように感じられて、非常に扱いづらいと思うかもしれません。

ポイント2:Excelと違って「データ管理」のプロ

どうして、Accessのテーブルはルールが多いのでしょうか?

それは、Accessは「データベース」管理ソフトであり、その能力を「データ管理」に特化させているからなんです。

たとえば、Excelで商品データを管理することを考えてみてください。

■Excelシートに入力するとき

「商品名」「仕入日」「単価」「数量」などを入力していくとしましょう。

いつのまにか、「数量」に数字以外のデータが入力されていて、集計しようとしたらエラーになってしまった、という問題は考えられませんか?

「仕入日」も、日付と認識できない形式が入力されていたら、そのデータだけ抽出できずに、抜けが発生してしまいます。

このようにExcelの場合、データを入力する際のルールがないため、誤入力や表崩れが起こりやすくなります。

もちろんルールを設定することもできますが、そのルールを解除することも、できてしまうんですよね。

自分ひとりでデータを管理するならばまだしも、複数人数が関わると、人間の個性や癖はなかなか侮れません。

項目の抜けや並びのズレ、手動によるミスが積み重なり、だんだんデータの形が崩れていって、「整然と」「長期的に」管理していくのは、非常に難しいのです。

ポイント3:Excelのようにレイアウトは整えられない

また、Excelに慣れているとついやりたくなるのは、「入力したあと、レイアウトを整えようとする」ことです。

■Accessテーブルに入力するとき

管理者がシステム設計に沿って構築しているので、ユーザーはデータの入力・検索のみを行います。

列を挿入/削除したり、名称や属性を変えたり、といった変更は、基本的にはできません。

無理にテーブルの形を変えようとすると、システム全体の設計を崩して壊れてしまう……なんてことにもなりかねないので、十分に注意してください。

ほかにも、見出しのフォントを大きくしたり、空白行を入れて区切ったり、重要な部分に色をつけたり、そういった「見栄え」を整えることも、できません。

Accessのテーブルは「データ管理」が仕事なので、装飾のないシンプルなプレーンデータだけを大量に蓄積できるつくりになっています。

だからこそ、何千、何万といったデータがあっても、入力も検索も高速に行うことができるのです。

ポイント4:Excelは「使う」。Accessは「守る」

大切なのは、ExcelとAccessではそもそもの目的が違うということです。

■Excel

「計算」「分析」「資料作成」などの“活用”が得意。

■Access

「データを整えて正しく保管する」“管理”が得意。

つまり、Excelはデータを「使う」側のツール、Accessはデータを「守る」側のツールなんですね。ツールを分けることによって、データ活用の効率がぐんと向上するんです。

慣れるまでは少しとっつきにくく感じるかもしれませんが、ルールに沿って構造的にデータを管理できるAccessの魅力がわかってくると、「なるほど、これはExcelでは無理だな」と実感できる場面が増えてくるはずです。

Accessの世界に一歩足を踏み入れたばかりの方こそ、まずは“見た目にだまされないこと”から始めてみてください。

「これはExcelとはまったく違う、データを“守る”ためのツール」「データを崩さないための見えないルールが存在するんだ」ということを意識しながら、使ってみてくださいね。

▼合わせて読みたい:Accessに入力することになったら

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▼ これまでの「はじめてのAccess Q&A」
Accessって、そもそも、なに?
Accessの、この画面ってなんですか?
Access使うことになったけど、Excelじゃダメ?
Accessを使うことに。押さえておくべき用語は?
Accessって何に使うと便利なの?

コラム執筆とイラスト:今村 ゆうこさん
Excel、 Accessなどの書籍を執筆し、事務系プログラマー・ブロガー・ライターとして活動するワーキングマザー。著書のイラストや図解も手掛けている。著書には、『業務アプリ作成のための Access VBA 実践サンプル集~仕事の現場で即使える』『Excel & Access 連携実践ガイド ~仕事の現場で即使える』『Access 実践マスターガイド~仕事の現場で即使える』(以上、技術評論社)など多数。

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