
最近「ノーコード」という言葉をよく耳にします。「コード」、つまりプログラミングが書けなくても、作りたいアプリを作ったり、今の作業が自動化できたりするツールのこと。システム関連やプログラミングの書籍を数多く執筆している増井敏克さんに「ノーコードツールからはじめよう」と題した講義をしていただきました。この記事では、セミナーの様子をご紹介します。

▲参加者には、増井さんが執筆された『IT用語図鑑 ビジネスで使える厳選キーワード256』がプレゼントされました。

増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』『IT用語図鑑 ビジネスで使える厳選キーワード256』(翔泳社)など多数。「エンジニアスタイル」では、「ITトレンド」コラムを連載中。
「自動化」を助けるノーコードツール
セミナーの冒頭で、「皆さん、仕事の中で自動化したいと思ったことはありますか」と参加者に問いかける増井さん。毎日、毎週など、頻繁に同じ作業を繰り返している方は、自動化したいと考えているのではないでしょうか。

繰り返しの作業が多い場合は、できるだけ自動化して、空いた時間をほかの仕事に充てると効率的です。ただし、自動化するためのツールを開発会社に依頼すると高額になります。開発会社に依頼しなくても、自動化できるようにするのがノーコードツールです。
作業を自動化する場合、基本的にプログラムを作りますが、ソースコードが書けない方でもプログラムが作れるのが、ローコードまたはノーコード。いずれも基本的にツールをインストールして使用するものなので、職場で使いたい場合には就業先の指示に従う必要があります。
「ローコードやノーコードは、プログラミングの知識がない人でも、慣れれば活用できます。一方で、細かいカスタマイズができるプログラミングと違い、ローコードやノーコードは基本的に用意されているものを使います。さらに、保守や拡張という面で、プログラミングは基本的に開発者が管理しますが、ローコードやノーコードは作った方が管理しなければなりません」
自動化の目的によって、適切な方法が変わります。業務システムなど大規模なものや、スマホアプリなどは開発者に依頼してプログラミングで作成すべきですが、小規模な自動化であればローコードやノーコードが適しています。
ノーコードツールにはさまざまな種類がある
ノーコードツールはさまざまな種類が登場しています。代表的なものにMicrosoftのPower AutomateやGoogleのAppSheetなど。また、現在、中小企業を中心に取り入れられているkintoneもあります。
「作りたいもの」によって適したツールを選ぶ必要があります。また「値段」も大切です。利用する人数に応じて金額が変わったり、使っていないのに課金が発生し続けたりする場合があります。資料や書籍があるか、詳しい人が周りにいるかなど、「情報やサポートの量」も確認しましょう。

そして、「引き継ぎ」にも注意が必要です。
「資料やテキストを用意し、引き継いでくれる人を確認しておかないと、残った人は大変な思いをすることが多いです。不具合の発生時やメンテナンス作業をしなければならないとき、対処法がわからないからです。私の場合は少なくとも3人でチームを作り、一人のスキルに依存することなく、情報共有しながら作るようにしています」

デモンストレーションで「ノーコードってこんな感じ!」を知ろう
セミナーでは次に増井さんがスクリーンにデモンストレーションを映し出しました。最初に紹介したのはExcel。Microsoft Officeが入っているパソコンであれば特別なツールのインストールは不要であるため、すぐに利用できます。
「マクロの記録」というボタンを押して、Excelを操作すると、停止ボタンを押すまでその操作を記録してくれます。記録されたマクロを実行すると、同じ作業が自動化できます。

Excelからデータを抽出しメールに添付したい場合、マクロで実行するのは手間がかかるため、MicrosoftのPower Automateを利用しましょう。
例えば「OneDrive上にある『Excelで作成したタスクリスト』の中に未完了の項目があったら、担当者にメールで通知する」といった処理も自動で実行できます。
Power AutomateにはWeb上の操作画面があり、そこから作業フローを作成できます。処理内容を選んで、フローを順番に設定していくだけで完了します。

他にも、Slackに通知するためのZapierや、Webサイトから情報を自動で抽出(スクレイピング)するためのPower Automate Desktop、Webから入力してデータベースを作るためのKintoneなどを紹介しました。
業務以外でも活躍しそうなのが、iPhoneの「ショートカット」機能です。写真を数タップするだけでGIF動画が作成できたり、NFCタグ*にスマホをかざすだけで特定のWebサイトが開いたりする仕組みも作れます。
*情報を読み取れる小さなチップのこと


ノーコードツールがいらなくなる未来
ノーコードツールは、非エンジニアにとって大変便利なものですが、今後はどのように進化していくのでしょうか。
「これからは自然言語でアプリが作れるようになっていきます。例えば、VSCode(Visual Studio Code)というプログラミングエディタに『書籍管理アプリを作って。項目やメニューは日本語にして。』などと日本語で指示を入力するだけで、AIが自動でプログラムを作ってくれます。そのあとは、画面に出てくる指示に『許可』していくだけで済みます」
増井さんがそう説明している間に、画面上ではソースコードが自動でどんどん書かれていきます。作業フローの設定などは不要で、ただ日本語で指示しただけです。

「ノーコードも、他のITツールやプログラミングと同じように、とにかく使って触ってみなければわかりません。自分で触りながら、書籍や公式サイトを参照にして作ってみるのが一番です。また、オンラインの講座やUdemy、YouTubeなどの動画でも学べます。質問したい場合にはコミュニティへの参加も検討してみましょう」
最後の質疑応答コーナーでは「自動化の仕組みを作っても、上手くできない人や、間違えてデータを消してしまう人などが出てくる。気を付けることは?」との質問がありました。
「トラブルが起こらないようにするためには、元データに直接手を加えさせないことが重要です。入力フォームなどを用意して、ボタンを押すだけで間違いなくデータが登録される仕組みを整えましょう」と増井さん。
日常のちょっとした作業から、自分で調べながら、ノーコードツールを使ってみてはいかがでしょうか。
ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)
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※本記事に記載されている会社名、製品名はそれぞれ各社の商標および登録商標です。







