
副業・兼業は「働き方のひとつ」として浸透しつつある。とはいえ、実践するのはなかなかハードルが高いが、岡本双葉さん(52)は、フレキシブルに働くこともできる派遣の仕事との兼業で夢だった“ペットシッター”を始めることができた。限られた時間の中で、どのようにふたつの仕事のバランスを取っているのか聞いてみた。
*オンラインで取材を行いました
*掲載している写真は、ご本人からご提供いただいたものです

「動物に恩返しをしたい」気持ちからペットシッターに
現在、派遣スタッフとして事務職で働く岡本さんにはもうひとつの顔が。依頼を受けた家庭を訪問し、ペットのケアをするペットシッターだ。
「今も13歳の愛猫と一緒に暮らしていますが、私自身が幼い頃から犬や猫、鳥、ウサギ、金魚などいろいろな動物と暮らしてきました。ペットとの暮らしで本当にたくさんの幸せをもらったので、いつか恩返しがしたいと思っていて。前職の契約期間が終わって時間ができたときに、これは勉強するタイミングだと感じて、ペットシッターの資格を取得しました」
ペットシッターは、飼い主が旅行や出張などで不在の際に自宅を訪れ、飼い主に代わってケアをするのが主な仕事。仕事内容は指定されたペットフードを指定された分量だけ用意する、飲み水の交換をする、ペットのトイレやお部屋の掃除をする、お気に入りのおもちゃを使って遊び相手をするなどだ。
「ワンちゃんなら散歩にも行きますし、ご希望に応じてブラッシングをすることもあります。1回の訪問は1時間程度がほとんどで、訪問後には飼い主さんにペットの様子や食事の状況などをメールでお伝えします」
「短時間の依頼が中心なこともあって、ペットシッター専業で生計を立てるのはケースによって難しいこともあります」と岡本さん。ただ、逆をいえばほかの仕事との兼業が可能ということだ。
「私が今派遣のお仕事として就業しているのはフラワーギフトを取り扱う会社で、繁忙期と閑散期がはっきりしています。なので、閑散期にはペットシッターの仕事の比重を増やすなどフレキシブルに働くことができています」
先輩シッターとのコミュニケーションが仕事のヒントに
ペットシッターの仕事ではできるだけ効率よく依頼を受けた内容をこなす必要がある。そのため、仕事を始めたばかりの頃は、予想外の出来事に慌てたこともあった。
「初めてお伺いする飼い主さんのお宅は、入口ドアに手こずることも。依頼時間になってすぐに仕事がスタートできるよう、余裕を持って到着して場所や入り方をチェックするようにしています。また、ゴミ袋などお世話に必要なアイテムを飼い主さんからお聞きした場所ですぐに見つけられない状況も想定しています。スムーズに仕事が進められるように、よく使うものは“七つ道具”として持参するようになりました」

▲以前の岡本さん。肩ほどまであった髪だが、よりアクティブに活動するため今はベリーショートに
そのようなペットシッターとしての心得は、同じ事業所で働く先輩シッターから教わった。
「同じ飼い主さんのお宅を担当する先輩たちから教わって“七つ道具”を持つように。それ以外の困りごとにもアドバイスをいただいたりと、とても助けられています」
「好き」を仕事にするためには副業・兼業という選択肢も
日によっては早朝に依頼を受けたペットのお世話をしてから就業先に向かい、終業後にまたペットシッターの仕事をして帰宅することも。どのようにふたつの仕事のバランスを取っているのだろうか。
「1日でペットシッターの仕事もこなす日は、帰宅するとさすがにヘトヘトですね。でも、お客様からの依頼は断りたくなくて。ふたつの仕事のスケジュールをパズルのように組んでいます。身体的なハードさはありますが、ペットシッターの仕事でワンちゃんやネコちゃんに会うと疲れを忘れてしまいます。仕事としての緊張感は常に持っていますが、毎回癒やされます。オフィス内でのデスクワークが中心の事務職と外の空気を感じながら依頼主の自宅に向かうペットシッターと、両方を体験できるのもまた楽しいです」
岡本さんにとってペットシッターは、まさに「好き」を仕事として実現させたもの。では、派遣の仕事は生計を立てることだけが目的かといえば、そうではない。園芸も趣味のひとつで、自宅でも植物や花を育てている。
「今の就業先では、フラワーアレンジメントの写真を扱うことも多いのですが、中には似たようなアレンジメントもあります。花の名前がわかるので、それを写真上でも識別できるのは私の強みかなと思います」

「種からじっくり育てるのが好きなんですよね。料理に使ったアボカドの種を植えてみたり、シクラメンもあえて苗を買わず種から育てたりしています。自分が好きなことや得意なことを仕事にするのは大事ですが、それが必ずしもフルタイム勤務で実現しなければならないわけではなく、私のように兼業によって実現させる選択肢もあるのかなと思います」
今後は、より多くの動物たちのためになる活動も視野に入れている。

「盲導犬やセラピードッグ、災害救助犬など、人々に寄り添い社会を支えてくれているワンちゃんの支援がしたくて。と言っても資格を取って指導者になるのはハードルが高いので、ボランティアで何かお手伝いができたらと思っています。それと、虐待を受けるなど悲しい思いをしているペットを減らしたいという思いもあります。小規模なイベントなどを通じて課題があることをできるだけ広めたい。まずはペットシッターの仕事の幅を広げて、経験を増やしていきます」
集めている数々のマグカップは「推し活」のお供

「陶芸をやっているお友達がいて、個展に行くたびに作品を買っているんです。左のマグカップは、その方の作品ですね」。集めているマグカップから気分に合うものを選んで好きなお茶を注ぎ、愛猫をなでたり、推しグループの動画を観たりしながらひと息つくのが岡本さんの癒しの時間。「陶芸をやっている方とは推し活で知り合ったんです。応援のために全国いろいろなところに行けて、人との出会いもあって、日々の仕事を頑張るための元気ももらえる。推し活も私にとって欠かせないものです」
ライター:古川 はる香(ふるかわ はるか)







