情報収集は「質」と「量」のどちらが大切か
結論からいうと、可能なら質も量も追い求めないといけません。しかし、時間は有限なので、両方を追い求めるのは無理でしょう。そこで、バランスを考えます。質が悪い情報がたくさんあっても意味がありませんし、そもそも量がないと情報収集できていない状態だといえます。
まずは、情報収集の目的について考えてみます。
・専門の分野でより深い情報を知りたい
これらを判断する1つの基準として、自分のスキルのレベルが挙げられます。
最初は知らないことばかりです。この段階では、「聞いたことがない」状態をなくすことが大事です。細かいことを突き詰めるのではなく、幅広い情報を手に入れることで、自分が興味を持てる分野を見つけることから始めます。
ある程度詳しくなってくると、その内容について深く知っておく必要があります。専門的な内容を収集するだけでなく、他の人に説明できるように工夫しておきます。
ここで、収集する媒体について考えてみます。例えば、横方向にスピード感、縦方向に専門性を取ってみると、図のような分布が考えられます。
まず左下を中心に学ぶことから始めます。入門書から入って、ニュースを見たり専門書を読んだりして、徐々に右上に向けて視野を広げていきます。
右上に近い部分を中心に情報を得ています。
人によって求められる幅や深さ、速度は異なりますので、見る媒体も異なることがわかります。当然、広く浅く、狭く深く、のどちらが重要を考えると、その人のスキルによって違いますし、質も量も重要です。そこで、質と量を確保する具体的な方法について紹介します。
情報の質を確保する
入門書や専門書といった書籍の場合、編集者がチェックし、校正や校閲が行われていますので、その内容は比較的信頼できます。一方で、インターネット上の情報には、個人がブログで発信している記事も含まれているため、利用者がその内容をチェックする必要があります。そこで、質の高い情報を得る方法をいくつか紹介します。
ニュースサイトやブログの情報を鵜呑みにするのではなく、その元情報(1次情報)をどこの誰がいつ発信したのかを見る方法です。以下は、官公庁のサイトを見る、プログラミング言語やライブラリの公式サイトを見る、公式アカウントがTwitterで発信している情報を見る、という方法です。
・検索する際にドメインを絞り込んで検索
例)総務省が出している資料を探す場合は、キーワードに続けて「site:soumu.go.jp」という指定を追加→総務省が出した資料を検索できる。
業界の第一人者や大学の先生など、「その人が発言した内容であればある程度の信頼がおける」という人を探します。これにより、ある程度間違いが少ない情報を得られます。
IT業界では、数ヶ月前の情報はすでに変わってしまって役に立たないことは珍しくありません。もし記事が公開されてから1年以上経っているような場合は、それよりも新しい記事がないか探すことも必要でしょう。
・新しい情報だけを検索
検索エンジンでキーワードを指定するだけでなく、期間を指定。Googleの場合、「ツール」というボタンを押して期間を指定する。
プログラミングのように、自分で動かして試せる内容であれば、自分で実行してみて結果を確認します。ソースコードが公開されていれば、それを入力して実行することで、記事の内容が正しいか確認できます。
Twitterなどで情報が流れてきた場合、それを信じるのではなく、他の媒体を調べてみます。インターネットで検索するだけでなく、新聞やテレビなど他の媒体を使うのも一つの方法です。複数の投稿や記事があっても、同じ人が複数のアカウントで投稿している場合もあるので、注意が必要です。
自分で判断できない場合、友人や知人、専門家などに聞いてみるといいでしょう。この時、違う意見の人がいると、より知識も深くなります。
質よりも量を集める
検索エンジンは便利な一方で、キーワードを利用者が入力する必要があり、指定したキーワードに関連がある情報しか得られません。このため、情報収集として幅広い知識を得ることは難しいという問題があります。
そこで、「待っていれば情報が向こうからやってくる状態を作る」ことを考えます。例えば、新聞を購読していれば、朝と夕方に自宅に配達されてきます。テレビやラジオをつければ、何らかの番組が配信されています。緊急地震速報のように、災害が起きれば通知されるしくみもあります。
Webサイトやブログでも同じように、新しい情報が公開されたときに、それを相手から届けてもらうしくみを構築することを考えます。例えば、インターネットでニュースを得ることを考えます。
世の中には多くのニュースサイトがありますが、これを毎日1つずつ開いて、どこまで自分が読んだかな、と思い出しながらチェックするのは大変です。RSSを使うと、登録されているサイトを定期的に巡回し、Webサイトが更新された場合に自動的に取得できます。
RSSは文章だけですが、Podcastはテレビやラジオのように音声や動画を購読できます。購読しておいたものが更新されると、自動的に配信されるしくみです。
情報が向こうから来る状態を作る方法に、情報を発信するという方法があります。発信しないと、その人がどのような技術に興味があるのかわからないため、なかなか情報が集まらないものです。情報を発信することで、それを見ていた人がフィードバックをくれることがあるのです。
情報収集に役立つ便利なサービス
上記を踏まえて、質の良い情報をより多く収集する方法として、便利なサービスやツールを紹介します。
幅広い情報収集の手段として、多くのエンジニアがあげているのがTwitterです。多くの情報が発信されており、便利な一方でその内容は玉石混交なので工夫が必要になります。例えば、一次情報を発信しているアカウントだけをリストに登録し、TweetDeckの設定でリツイートを除外して、本人の投稿だけを見る、といった工夫をすることで、ある程度の品質を保つことは可能です。
ニュースを選んで配信してくれる便利なサービスで、スマホアプリも提供されており、設定すれば1日3回朝、昼、晩に通知してくれます。過去に閲覧したニュースから自動的に学習して、自分にあったニュースが配信されてきます。3月から「Techfeed Pro」というサービスも登場し、より便利になりました。エキスパートがツイートした内容などがジャンル別に表示されるサービスで、自分の興味があるジャンルをフォローしておくと、ジャンル別に内容が表示されます。有名な方がたくさん参加していますし、私もエキスパートとして参加しています。
上記と同じように、他の人が注目しているニュースに気づく方法として、「NewsPicks」や「ITnews」があります。NewsPicksはビジネス系のニュースが中心ですが、キーワードを登録しておくと、そのキーワードに関するニュースが届いたときに一覧にしてくれます。ITnewsはITに関するものに特化しているのが特徴です。NewsPicksと同様に、他の人がPickしたニュースが表示されるだけでなく、Pickするときにコメント付きで表示されるため、他の人がどう感じているのか、ということがわかります。
ソーシャルブックマークと呼ばれていますが、記事をブックマークして、他の人と共有できるサービスです。他の人がブックマークした、という意味ではトレンドを知るには便利ですが、匿名の人が多く、コメントも荒れていることが多いことから、参考程度に使うといいでしょう。ここでも、テクノロジーのタブを見ると、IT関連の技術情報が出てきます。
IFTTTは複数のWebサービスを連携できるツールで、ツイートされたときにスマホに通知する、Slackに投稿する、など情報が更新されたときにリアルタイムで通知することが可能になります。自分の興味のあるキーワードを登録しておくと、新しいツイートをかなり早いタイミングで気づけます。同じように、ブログなどに投稿されたことに気づくには、Google Alertを使う方法もあります。キーワードを入力してアラートを作成するだけで、メールなどで通知できます。
SlackやDiscordなどオンラインで活動しているコミュニティがあります。いろいろな人が質問したり、情報共有したりしており、活発に議論されていることもあります。SlackではPHPやRuby、情シス担当者向けの他、Kaggleのコミュニティなど多くのコミュニティが存在します。DiscordではPythonやインフラ勉強会などが有名です。
これらに共通するのは、いずれも自分がアクションを起こさなくても、情報が降ってくるということです。もちろん、アプリやWebページを開く必要はありますが、それだけで、世の中で起こっていること、注目されているニュースが手に入る、ということです。
いろいろな方法がありますが、質と量のバランスを考えながら、正確な情報をできるだけ早く収集できるようにしてみてください。