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【動画レポート】ITIL(R)の基本。技術者であってもサービスを理解しよう

この記事では、動画「ITIL(R)の基本。技術者であってもサービスを理解しよう」をレポートします。

今回の動画では、ITサービスマネジメントのフレームワークとして世界中で利用されているITIL(R)の基本、それを理解するためのITサービスマネジメントの考え方について、初心者にもわかりやすく解説していただきました。

■POINT
・ITIL(R)とは
ITサービスマネジメントにおける、成功事例や役立つ知識を体系的にまとめたフレームワーク
・開発技術者もITIL(R)を活用しよう
ITIL(R)とは、戦略・設計・移行・運用・改善のITサービスのライフサイクルを対象に、どのように管理するかをまとめたものでもある。昨今はIT業界だけでなく、さまざまな業界で注目されている
 
【講師プロフィール】
最上 千佳子さん
システムエンジニアとしてオープン系システムの提案、設計、構築、運用、利用者教育、社内教育など幅広く経験。2008年ITサービスマネジメントやソーシング・ガバナンスなどの教育とコンサルティングを行うオランダQuint社の日本法人 日本クイント株式会社へ入社。ITIL(R)認定講師として多くの受講生・資格取得者を輩出。2012年3月、代表取締役に就任。ITSM、リーンIT、ソーシング・ガバナンス、DevOps、アジャイル等、ITをマネジメントという観点から強化しビジネスの成功に貢献するための、人材育成と組織強化のコンサルティングに従事。著書「ITIL(R)はじめの一歩 スッキリわかるITIL(R)の基本と業務改善のしくみ」

  改めて考える「サービス」とは    

サービスとは一体どのようなものを指すのか。普段あらたまって考えたことはありませんが、ITIL(R)では、きちんと定義されています。単に値下げ販売をすればサービスになるのでしょうか? そうではないことを、最上さんは、ある八百屋のエピソードを通じて解説してくださいました。

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▲サービスを提供する側の一方的な思い込みや押し付けは、決してサービスにならないだけでなく、ビジネスという観点から、重要な顧客を失ってしまう危険性すら持っている

では、ITIL(R)が定めるサービスの定義は、どのようなものなのでしょうか。

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▲上がITIL (R)2011によるサービスの概念。下がITIL 4によるサービスの概念

サービスは、顧客にとって価値があること。もう一つのポイントは、顧客が成果を得られる=価値があることなのだそうです。

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▲顧客がコストやリスクを負うことなく成果を得られるというところが大切。コストやリスクはサービスプロバイダ(サービス提供者)が管理する

八百屋の例では、もう一山トマトを付けるというサービスが、A子さんにとっては、食べきれそうもないものを重たい思いをしながら持って帰らせるという点で、コストやリスクを顧客に負わせているため、価値の高いサービスとは言えません。

  改めて考える、「マネジメント」とは?    

続いてマネジメントについてです。マネジメントというものも、普段は漠然と考えていましたが、ITIL(R)ではきちんと定義されているそうです。まずはマネジメントの位置づけを紹介してくださいました。

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▲マネジメントをするためには、コントロールが前提となり、コントロールするためには測定が前提となり、測定をするには定義が前提となる

上図のそれぞれを見ていきます。まず、定義においては、次の3つを決めることが大切なのだそうです。

・目的と目標

目的とは「何のためにするのか」すなわち行動の根拠。目標は「どこを目指すのか」ということ

・活動

目標を達成するために「何をするのか」、つまり実施すべきこと

・測定項目

サービスの品質向上のために「何を測るのか」ということ

これらの定義を測定することにより、現状を見える化し、計画通りに実施できているか、立てた目標に達成しているかといったことを判断していきます。

そして、定義から外れていた場合に軌道修正をするのがコントロールです。マネジメントは、目標を達成したら、さらなる目標を決め、進化しつづけること。そのためにはコントロールしなければなりません。

マネジメントには成熟度の指標あり、レベル0からレベル5まで6段階あります。

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▲上に進むにつれ成熟度が高くなる。組織としての標準的なプロセスが定義されるレベル3でようやくコントロールされている状態に達する

  あらゆる業務で活用する2大マネジメント  

世の中には数多くのマネジメント手法が存在しますが、その中でもあらゆる業種・業務の中で活躍する2大マネジメントがあります。それがプロジェクトマネジメントとサービスマネジメントです。

そもそも、プロジェクトとサービスの違いはどのようなものでしょうか?

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▲プロジェクトは納期があり成果物が決まっているが、サービスは納期が決まっておらず、継続的に顧客に価値を提供し続けるという点が大きく違う

それぞれの具体例を旅館の新しいサービスのエピソードを例に説明してくださいました。ある旅館で次のようなサービスを考案しています。

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▲これは一見するとプロジェクトマネジメントのように見えるが、サービスマネジメントの一環

サービス戦略が決定した後は、具体的な作業に移ります。

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▲このフェーズは納期や予算に収まるようにプールを増築するためのものであり、納期があり、成果物が決まっているため、プロジェクトマネジメントが必要

例えば、このような作業はサービスではなくプロジェクトと言えます。

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▲具体的なサービスを実施するために必要なものなので、サービスマネジメントに該当する

このように、プロジェクトとサービスは普段の業務の中に混在していることが珍しくないということでした。

  ITサービスマネジメントの3つのP    

続いて、ITサービスマネジメントを成功させるために必要とされる3つのPについて。それは次のようなものだそうです。

・Process(プロセス)
・Product(製品/ツール/技術)
・People(人材)

最近ではPartner(パートナー)を加え、4つのPが提言されているそうですが、本動画では基本となる3つのP を紹介してくださいました。

・Process(プロセス)

普段、プロセスという言葉を分かったつもりで使っていますが、具体的にはどういうものなのでしょうか。

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▲左下の図のように、いくつかの活動が時系列につながっており、そのうちのいくつかにはインプットがあり、またいくつかにはアウトプットがある

図のように、プロセスとは仕事の流れをきちんと決めることと言え、プロセスの導入により、サービス提供に関わるあらゆるメンバーが同じように活動すること(プロセスの標準化)がとても重要になります。そして、アウトプットデータを蓄積、分析することでさらなる改善に役立てること、ここまでできて初めて「マネジメントができる」と言えるのだそうです。

ITIL(R)では、何をどのように管理するべきかと、そのためのプロセスの例が紹介されているとのことです。例えばその一つとして次のインシデント管理プロセスがあります。

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▲ITIL(R)で紹介されている、インシデントを管理するためのプロセス。インシデントは、あくまでもシステム障害やプログラムのバグではなく、サービスの中断、サービス品質の低下であることがポイント。いかに迅速に回復させるかが目的

このプロセスでは、インシデント発生から終了までの時間を計り、それを短くしていく、優先順位を付けて高いものから解決していく、そして初期診断で答えが見つからない場合、次にすることは自分で詳しく調べることではなく、エスカレーションするかどうかを判断することなどが求められるとのことです。

このとき、判断基準は自分で調べるのと、エスカレーションするのとで、どちらが早く解決するかということだそうです。なるほど!と思った方や過去に発生したインシデントを思い出した方も多いのではないでしょうか。

・Product(製品/ツール/技術)

マネジメントを効率的に、抜けが無く、より効果的に実現するためにツールを活用することが重要だそうです。

・People(人材)

プロセスの実施もツールの活用も、そして高付加価値のサービス提供もすべては人が命。つまりPeople(人材)が大切になってきます。役割と責任を決め、プロセスやツールについて、また、技術、コミュニケーション、マネジメント、顧客の事業などについての教育を行っていくのだそうです。

  ITIL(R)の概要と価値    

ここまでサービスやマネジメントといった概念について学んできましたが、最後はITIL(R)の概要についてです。ITIL(R)の1つ前のバージョンITIL(R) 2011ではマネジメントを次のように考えるのだそうです。

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▲上に並ぶ白い四角の1つひとつが管理とそのためのプロセスを示す。先ほど紹介したインシデント管理プロセスも右上の方にある。下の青いフローが、サービスのライフサイクルの各段階(フェーズ)を示している。こうしてサイクルを回すことでサービス品質を向上させていく

さらに最新バージョンのITIL 4では、プロセスという考え方を少し広げ、プラクティス(事例)を包含し、段階別ではなく、次のような3つのカテゴリに分けてまとめているそうです。

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▲まとめ方は変わっても、基本的な考え方、何を管理するかという部分は変わっていない。真ん中の列の上から5番目にやはりインシデント管理がある

最後に、ITIL(R)の価値について、次のように締めくくってくださいました。

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▲ITIL(R)が世界中で採用されているのは、こうした価値が数多くの企業や現場で認められているから

ITサービスマネジメントと言われても、具体的に何をするのか、あまり考えたことがない方もいらっしゃるかと思います。今回の動画をキッカケにして、基本的なことや、エンジニアをはじめ、どのような仕事でもITIL(R)の考え方の重要性について理解できたのはないでしょうか。

まだ動画を見られていない方は、ぜひ「ITIL(R)の基本。技術者であってもサービスを理解しよう」をご視聴ください。

▼動画「ITIL(R)の基本。技術者であってもサービスを理解しよう」
https://www.r-staffing.co.jp/engineer/entry/20201211_1

※ITIL(R)はAXELOS Limited の登録商標であり、AXELOS Limited の許可のもとに使用されています。すべての権利は留保されています