IT業界にいると「ちょっと気になる」そんな話題をサクッと解説する本連載。
最近、「Web3」という言葉が話題になっています。新しいWebのあり方を表すワードとして注目される一方で、一部では「またいつものバズワードでしょう?」と懐疑的な意見も目にします。今回はWeb3とは何か?からはじめ、ITエンジニアはWeb3とどのように向き合っていけばよいのかを考えます。
Webの技術は、「Web1.0」から変わっていない
まずは「Web」という言葉から振り返ります。一昔前は「World Wide Web」という言葉が使われました。インターネットを使って、WebブラウザからWebサーバーにアクセスしてコンテンツを閲覧する仕組みです。
2000年を過ぎたころ、「Web 2.0」という言葉が登場しました。そして、それまでのWebのことを「Web 1.0」と呼ぶようになりました。よく言われるのは、「Web 1.0」は送り手(サービス提供者)から受け手(利用者)への「一方向の通信」だったのに対し、「Web 2.0」は「双方向の情報発信」に変わったということです。
それまでの「ホームページ」と呼ばれる「一部の誰かが発信したものを多くの人が見る」考え方から、SNSなど「誰もが互いに情報を発信し、Web上で交流する」という考え方に変わったのです。
ただし、Webに関する技術が変わったわけではありません。WebサーバーとWebブラウザの間をHTTPというプロトコルで通信してやりとりすることは変わっていません。もちろん、現在でもWeb 1.0のようなサイトは残っています。つまり、「Web 2.0になったからWeb 1.0は使えなくなる」というものではありません。
そして、最近話題なのが「Web3」です。「Web 3.0」と分けて語られることもありますが、ここではまとめて「Web3」として紹介します。Web3もWebサーバーとWebブラウザの間をHTTPで通信することは変わりません。当然、Web3が登場しても、Web 1.0やWeb 2.0がなくなるわけではありません。
何が変化した?Web 1.0とWeb 2.0、Web 3の違い
上記のように支える技術は同じでも、考え方が少しずつ違います。Web 1.0の時代は限られた人が発信していましたが、その発信方法は多様でした。企業が会社のWebサイトを作成していたり、個人がプロバイダの用意したエリアで「ホームページ」を開設していたり、一部ではブログで発信したりしていました。それを検索エンジンに(手動で)登録し、多くの人が閲覧していました。
Web 2.0になると、検索エンジンも自動でサイトを収集するようになり、検索結果の上位に表示するには特定のドメインで情報を発信することが有利になりました。
また、SNSなどで交流するときもmixiやFacebook、Twitterといった特定のサービス内でアカウントを作成することになりました。ECサイトで商品を販売するときも、自社のWebサイトよりAmazonや楽天などのサービスに出店する方が圧倒的に集客できるようになりました。
つまり、特定の企業が提供するサービスに多くの人が集まるようになったのです。これを「中央集権型」だと呼ぶ人がいます。この方法について、「特定の企業に利益が集中する」「プライバシーが守られない」と考える人がいます。
そして登場したのがWeb3です。
Web3はブロックチェーンなどの技術を使って、「分散型」で管理しようという発想です。特定のサービスに情報を握られることなく、個人情報を自分で管理し、国や企業の規制を受けず、企業とは直接取引することで手数料を減らせる、といった考え方です。
Web3の登場で変わる考え方
Web3の分散型の考え方に魅力を感じる人は多いかもしれません。「DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)」という言葉も登場し、ブロックチェーンを用いて、特定の組織に管理されることなく運営されている分散型の組織に注目が集まっています。
特定の人の意思による組織運営ではなく、「スマートコントラクト」と呼ばれるブロックチェーンを用いた自動的な意思決定が有効な例もあるでしょう。また、「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」と呼ばれるデジタルでの資産管理による、スポーツやアートの世界では高額での取引や「DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)」という仲介方法が話題になっています。
さらに、「メタバース」という言葉が広がっています。メタバースを「オンライン上でつながった仮想空間」と定義すると、Web 2.0でも似たようなことが行われています。この意味ではメタバースはWeb3と関係ありませんが、仮想空間内での取引にブロックチェーン技術が向いていると考えている人もいます。
このように、新たな技術や考え方を使ったサービスが次々登場しています。時代の流れとして、IT業界が牽引するだけでなく、そこでの宣伝効果などを狙って多くの業界が参画しています。それだけ多くの人が集まることは、ビジネスチャンスだと捉える考え方もあるでしょう。
そこで考えておきたい。ITエンジニアとしての立ち位置
Web3が登場しても、Web 2.0のような考え方がなくなることはありませんし、これまでと同じようなビジネスは今後も続いていくでしょう。それに加えて、一部の人の間から少しずつWeb3が広がっていくことが想像できます。
このとき、ITエンジニアとして仕事への取り組み方は大きく2つに分かれます。これまで通りの仕事を続ける道と、Web3など新しい技術にチャレンジする道です。Web3の将来に賭けるなら、すべての時間をWeb3に振り切る考え方もあるでしょう。しかし、今後もWeb 2.0が続くことも事実です。
ここからの考え方は人それぞれです。安定したものを選ぶのか、最先端の技術を選ぶのか。この2択以外にも、平日はWeb 2.0の仕事をしつつ、週末や業務時間外にWeb3に少しずつ取り組む、という考え方もあるでしょう。
少なくとも、これまでのWeb 2.0と何が違うのか、その技術やビジネス面での違いを学んでおくことは必要でしょう。
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いかがでしたか?Web3について理解できましたか?興味をもった方はぜひWeb3の関連技術も調べて、スキルアップに繋げてみてくださいね。
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