「スキルを積み上げていく」という意識がまったくないように見える長谷川魚菜子さん(49) 。働く場所は、風に吹かれるように決めていく。これまで、生命保険会社の営業や、英会話の講師、社長秘書、コンサルタント、外資系出版社の立ち上げなど、さまざまな仕事をこなしてきた。現在は、自らデザインした茶器の販売と、派遣スタッフの両立。これまでのキャリアを中心に、働き方を伺った。

留学して帰国後、望んでいた職業がまだなかった

「基本は、流れに任せている」と言う長谷川さん。思えば学生時代の就職活動から、気負いがまったくなかった。実家が焼き物を作っていたこともあり、就職するイメージが持てなかったものの、大学の掲示板で生命保険会社の募集が目にとまり、営業として働くことになる。

「景気がよかったのもあり、仕事は順調でしたが、私にとって保険という仕事をずっと続けるイメージが湧かなかった」

会社を2年弱で辞め、アメリカへ留学し社会学を専攻した。

帰国後は、アメリカの組織のようにきちんと事業として成り立つ、自立した社会貢献活動に従事することを望んでいたが、当時の日本ではNPOといえば「ボランティア」というイメージ。就きたいと思う職業は、ほぼ存在しなかった。

「著名な社会学者と話す機会がありましたが、『やりたい仕事があるなら、自分の居場所は自分で作るしかない』と言われたのをよく覚えています。ただ、頑張って自分で作るタイプでもないからと、働き口を探すことにしました」

英語の講師やコンサルタントなどいくつもの仕事を経験し、帰国から10年ほど経った頃に東京へ。それまでは九州に住んでいたが、東京で暮らしていたパートナーと一緒に住むことに。ちなみに、結婚はその3年後。もともと離れた場所で暮らしていたり、結婚という形式にこだわりがなかったりするのも、長谷川さんらしい生き方だ。

コンサルティング会社と出版社で手腕を発揮

東京で働き始めた会社で、長谷川さんの手腕が大いに発揮されることになる。

「社員が数名の会社へ紹介予定派遣で入り、1~2カ月後には社員に。最終的に社員は30名ほど、部下は15名ほどまで拡大しました。簡単に言うと、『外資系のマーケティング活動をアウトソースで請け負う』という仕事で、ある程度継続的に結果の出るビジネスモデルを作り上げました。クライアントからの結果に対するプレッシャーは強いものの、やるべきことを自分で考え、決定し、自分で仕事を管理できたから面白かったですね」

ビジネス立ち上げ時期の混乱を過ぎてルーティンになっていくと、「私にしかできない」ものは少なくなる。転職は必然だったのかもしれない。

次の仕事は、海外に住んでいた友人が日本で立ち上げることになった外資系出版社への参画。肩書きは経営企画室長で「編集以外すべてやりました」とさらり。社長が日本にいないことが多かったため、ここでも広範囲で決裁権が与えられた。

出版不況にもめげず、在庫を持たなくていい電子出版に切り替え、事業推進に奮闘した。そこでまた、新しい風が吹く。

いよいよ見つけた、自分のルーツとやりたいことの接点

知り合いのつてで紹介された仕事は、日本から茶葉を仕入れて海外で売るバイヤーの手伝い。アメリカでスタートする会社の設立準備に携わることになった。

農家を回り、お茶に触れていくなかで『実家の焼き物屋に通じる“茶器”を仕事にしたい』そんな思いが湧き上がってきた。

「これだ! と思いました。どこかで、焼き物の仕事に関わりたいとずっと思っていましたが、実家は兄が継いでいましたし、今からプロとして作るのは無理。私は、お茶の種類に合わせた茶器をデザインして、兄に作ってもらうところからスタートしました」

バイヤーをサポートする仕事からは離れ、茶器の制作、販売に専念。お茶をイメージしながら茶器を作り、実家から受け継いだDNAを入れる。主に口コミやイベントなどで販売していった。

「収支も軌道に乗ってきたものの、まだ私の人件費が出るほどではないんです。茶器の製造・販売と両立するため、派遣スタッフを選択しました。今の働き方は、とてもバランスが取れています。HOYA株式会社での職場環境はとても働きやすいうえ、直属の営業部長含め、周囲の方は器の仕事を応援してくださるんです。ありがたいです」

留学から帰国した当時は「自分の居場所を自分で作るタイプではない」と思っていた長谷川さんだが、結局もっとも居心地のいい場所を作り上げることになった。自らデザインした茶器を愛おしそうに手に取り、「これからもずっと“これ”に関わっていきたい」と語っていた。

朝はコーヒー、昼は煎茶を

自らデザインした急須を使い、お昼休みに煎茶を淹れて飲むようにしている。本来は玉露用にデザインしたが、コンパクトで持ち運びがしやすいから、とセレクト。

デザインのポイントは、フタがないこと。玉露は低温で淹れるため、蒸らす必要がない。また、茶葉が見た目にも美しいので、口の大きな形をデザインしたのだそう。

もうひとつはポット。中には、夫が淹れたコーヒーが入っている。

「夫はコーヒーを淹れるのがとても上手なので、彼が淹れたコーヒーを持参して、朝飲むようにしています。ポットよりも本当は中身が大事なんですけど」

そう言って笑う長谷川さん。毎日のお茶の時間をとても大切にしているのだ。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)

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