仕事も、生活もそれなりにうまくいっている。でも本当に、このままでいいのだろうか――? そんな小さな違和感が積み重なると、いつしかモヤモヤした大きな気持ちに変わってしまうことがある。漆原真理さん(32)は、ずっと心の中に抱えていた思いがあふれ、新たな世界へと飛び込むことになった。彼女を駆り立てたものは何だったのか、そして今、どんな働き方、生活を理想としているのかを聞いた。

いつも、周りに合わせているだけの自分がいた

2015年秋のある日、漆原さんは一人、インドへ向かう飛行機の中にいた。それは不安な気持ちに押しつぶされそうになりながらも、彼女が駆り立てられるように踏み出した“一歩”だった。

ヨガのインストラクターになりたい――それが、インド行きを決めた理由。心の中で波紋のように広がっていった想いは、いつしか無視できないほど大きくなっていた。

その思い切った決断をするまでの11年間、漆原さんは都内で事務職として働いていた。

与えられた仕事は、自分がやりやすいように工夫しながら、求められることを正確にこなした。常に周囲に気を配り、空気を読んで対応することも怠らなかった。

人当たりもいい。仕事もがんばっている。だから会社からも評価を受けたし、取引先との関係も良好だったという。

しかし20代後半にさしかかった頃、彼女自身は、だんだんとその状況に違和感を覚えるようになっていた。

「子どもの頃から、自分に与えられた役割に応えようと、周りから求められるままに合わせてしまうところがあって。うまくいっているように見えていたかもしれませんが、実は“自分らしさ”がよくわからないことが、ずっとコンプレックスでした」

「ヨガインストラクターになりたい!」こころの変化

もやもやとした気持ちを抱えながら、仕事を続けていたある日のこと。漆原さんは運動不足を解消するために、はじめてホットヨガのレッスンを受けることにした。「汗をかいてスッキリしたい!」――ただそれだけだった。少なくとも、その時までは。

「もともと身体も硬くて、前屈しても床に手がつかないくらい(苦笑)
でもヨガに通ううちに少しずつ身体が変わっていくのを感じたんですよね。レッスン後はすごく前向きになれて、気持ちにも変化がありました。」

ふつうなら、そこで趣味に「ヨガ」が一つ、加わるだけだろう。しかし、そのときの漆原さんは違っていた。ヨガを教える側になりたい、という気持ちが少しずつ芽生えてきたのだという。

人前に立って何かをしたり、自ら何かを考えて企画したり。そういうことは自分には向いていないとずっと思っていた。でも自分自身がどうしても好きになれずにいた彼女は、“変われるきっかけ”をずっと待っていたのかもしれない。

漆原さんはヨガインストラクターになるために様々な選択の中から最終的にインド留学を選択する。そこで思い切って仕事を辞め、改めて自分自身の人生を歩みはじめた。

がむしゃらに夢を追う、毎日の生活への疑問

強い思いを抑えきれず、新しい世界へと飛び込んだ漆原さん。しかし本当に大変だったのは、インドから帰国した後だった。

「すぐにインストラクターとして活動しようと思っていたのですが、なかなか思うようにいかなくて。自分のスキルもまったく足りていなかったですし、学ばなければならないことも山のようにありました」

彼女はフリーランスのヨガインストラクターとして活動をはじめ、さまざまなスタジオで、クラスを受け持つスタイルで仕事をすることになった。当然、働く時間も場所も、収入もバラバラだ。

日中の会社勤めから一変、早朝や夜の仕事が増え、生活のペースが大きく乱れてしまったという。

「夫にも不自由な思いをさせて、自分をこんなにすり減らすようなことをしていていいのかな、と……。転職当初は、結婚しているから好きなことが出来ると思われたくなかったのもあり、ヨガインストラクターそのものになることに一生懸命になっている自分がいました。ただ自分の希望をがむしゃらに叶えるんじゃなくて、家族との生活も、自分の時間も大事にしていきたいと思うようになったんです」

自分が大事にしていきたいことを、無視したくない。悩みつつも彼女が選択したのが、派遣スタッフとして働くことだった。

週に2回の会社勤務がもたらしてくれたもの

現在、漆原さんは個人でヨガインストラクターを続けながら、週に2日だけ、派遣スタッフとして事務の仕事をしている。2016年6月にはじめて就業し、そろそろ10か月。生活のバランスは、どう変わったのだろうか。

「ずーっとヨガのことばかりの状況から抜け出して、生活にメリハリがついたと思います。週に2日は必ず働く場所ができて、しかも安定した収入を得られる。だからこの働き方ができるのは、本当にありがたいですね」

もともと10年以上、企業のオフィスで働いてきた漆原さん。派遣スタッフとしての仕事は、ヨガの専門的な世界だけでなく、また違った角度から自分らしさを感じられるそう。

いずれ、ヨガインストラクターの仕事1本で独り立ちしたい、という気持ちが変わることはない。だから派遣の仕事も、あえて週2回に抑えているのだという。

「それ以上増やしてしまうと、派遣のお仕事に依存してしまいそうで……。週2日くらいがちょうどいいと思っているんです。それなら、ヨガの勉強や練習をする時間も確保できますから」

まだまだ、目指す理想の働き方は先にある。しかし漆原さんは、今の仕事や生活を通して、以前よりもほんの少しだけ、自分自身のことが好きになれたそうだ。

「私のクラスにきた生徒さんが、『真理先生がいい』とリピートしてくれるようになると、やっぱりうれしくて。独立してやっていくのは大変ですけど……。なりたい自分に近づいていきたいし、それは皆さんも同じこと。自分の経験とヨガを通して私らしく伝えていきたいです」

ヨガを通して出会った仲間の応援が支えに

手作りのお守りは、漆原さんがインストラクターとしてデビューするときに、ヨガインストラクター仲間がくれたもの。

「はじめてスタジオでクラスを受け持つことになったとき、もう緊張し過ぎて血の気がひいてしまい、大変だったんです」

そんなときに、「真理ちゃんらしくやってね!」とお守りを手渡された。今でも大切に持ち歩いている。

ローチョコレートやナッツなどは、レッスン前、食事する時間が取れないときに口にするもの。種類は気分によって変えているそう。

ライター:大島 悠(おおしま ゆう)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)

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