「働き方改革」と毎日のように耳にするけれど、実際私たちの働く環境はどれほど変わっているのだろう。職場の問題は、スローガンを掲げて旗を振るだけでは解決されないし、上層部から降りてくる施策が適切なのかも疑わしい。そんなモヤモヤした思いを晴らすべく、楽しいイベントが開催された。らしさオフラインとして、遊びのようなかるた大会で、職場の「あるある」な問題を紐解いていく。

講師:沢渡 あまねさん
業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。
日産自動車、NTTデータ(オフィスソリューション統括部)、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。現在は複数の企業で「働き方見直しプロジェクト」「社内コミュニケーション活性化プロジェクト」「業務改善プロジェクト」のファシリテーター・アドバイザー、および新入社員・中堅社員・管理職の育成も行う。これまで指導した受講生は3,000名以上。

仕事の生産性を上げるために大事な3つ

沢渡さんは最初に「働き方改革という言葉は忘れてください」と宣言した。

「なぜなら、働き方改革とは重たい言葉でしかないからです。ただ、変わってきている現場もあります。そういう職場で大事なキーワードは3つあります」

仕事の生産性を上げるために大事なキーワードとは、次の3つ。

・言える化
・見える化
・自分の勝ちパターン

言える化ができていないと、会社がどんなに立派な見える化ツールや手法を導入しても、そこにリアルな「ムリ」「ムダ」が洗い出されない。本音が出てこない。それで見える化したつもりになっても、生産性が上がらない。

「いろいろな企業や自治体、官公庁などが、現場の思っていることを上層部へ言ってほしい、と考えて社長と社員の対話会などを開催しています。ところが、その場で『どう、何か困ってることある?』と聞かれたからといって、素直に言えるものではありません。見えたつもりになっているだけ。現場のリアルをどうやって言える化、見える化するかが大事なのです」

そして「自分(たち)の生産性が上がる勝ちパターン」を実践することによって、職場の生産性は上がっていくのだという。

かるたでムードよく。共感の嵐!

具体的に考える前に、沢渡さん考案の「職場の問題かるた」を使ってかるた大会をしていく。まずはグループに分かれ自己紹介をして、それぞれのグループ名を決める。「うさぎとねこだいすき」「かるたくらぶ」「優柔不断」など、バリエーションに富んだネーミングで、場がほぐれていく。

かるたは、読み札が「資料のための、資料を作る」「目的が、見えない」「うちのやり方は特殊なんです」など、ちょっと困った現場でよく問題になりそうな状況やセリフで構成されている。思わず笑ってしまうものや、共感のあまり怒りがこみ上げるものなどさまざま。グループ内でやや遠慮が見られはしたものの、かるた大会は和やかに進んでいった。

すべて終わった後に、グループで優勝者を決め、グループごとに共感度の高い札を2枚ずつ決めた。人気のものから順番にいくつかを沢渡さんが解説していく。

もっとも票を集めた「増えるばかりで減らない仕事」

沢渡さんは「企業の仕事が増えるのは当たり前だ」と言う。

「それは、そもそも成長することを前提にして事業計画を立てるのが企業だからです。うまくいけば仕事が増えるのは当たり前。業務と向き合って『これやめませんか』と言わないと仕事が減ることはありません」

また、私たちの生産性を下げるふたりの「妖怪」を紹介した。

妖怪「もやもや」
妖怪「常識」

いずれも身に覚えがある。もやもやするし、常識が邪魔をする。

「基本は、今の仕事を書き出すことです。あるいは、毎日やっている定常業務を書き出すのもいいでしょう。以前ある会社で、工場で週に1度、6時間かけて資料を作り本社に送るという業務をしていました。ところが、本社ではそれを綴じてファイルに入れているだけだったのです。以前、工場で品質の問題があった際に役員が激怒して毎週のレポートを出すことになりました。ところが本社の担当が変更になっても、『前任者の時からやっているから』とそのままになってしまったのです」

そんなふうに形骸化した無駄を省くために、ある会社ではすべての業務をチーム共通のホワイトボードに付箋で張り出してみた。その結果、全員からタスクが見えるので「これやっておくよ」「忙しいそうだからこれはいいよ」など、声を掛け合うことができるようになったという。

また、ある派遣スタッフの方は、自分の業務を付箋に書き出してディスプレイなどに貼っていた。周りの人も気が付くので「これはやらなくても大丈夫」などとわかるようになる。

無駄をなくす「やってみる」「やめてみる」「期限を決める」

次に票が集まったのは「おかしいって、誰も思わないのかな?」。これもやはり、言える化、見える化ができていない状態だ。

「おかしいと思っていることを給湯室だけで話すのではなくて、職場の方から見えるようにしなくてはなりません。日常のルーティンを洗い出して、同じことに無駄だと思っている人を集めて行動を起こすとよいでしょう。この時には『健全な問題意識』が重要です。例えば、トラブル対応するエンジニアがいて、本番環境のプログラムもリリースする担当だとしましょう。集中力を要する作業をする時に電話がかかってきて取らなくてはならないとしたら、気が散って作業ミスを引き起こす可能性が高まる。そのため、『本番環境をいじるときには話しかけない、電話は取らない』といったルールが有効になるのです。これが『健全な問題意識』ということ」

次にピックアップしたかるたは「これいつまで続けるんですか?」。毎週の定例会議などは最たる例だ。

「ある現場で、社員が月曜朝に朝礼をしていました。ところが、その目的がわからなくなっていた。持ち回りで『楽しいこと』を言うことになっていたものの、皆とても気が重い。司会進行をする部長ですら前の日に憂鬱になるほど。誰も得しない、惰性だけの定例会。そういった日常の景色の意義を疑ってみることも必要です」

それまでの無駄をなくすのに大事なキーワードは次の3つ。

「やってみる」
「やめてみる」
「期限を決める」

特に、会社に長くいる人が抵抗勢力になりやすいので、そういった人には「期限を決める」がよく効くのだそう。

「多くの人たちが反対していたWeb会議も『ためしに1か月』と使ってもらうと、意外と反対していた人のほうから『声がクリア』『会議室を取らなくてもいい』など好意的な意見が出ることも。

「健全な問題意識」と「健全な成長欲求」

最後に、いろいろなことができなくても、生産性が劇的に上がらなくても、それは「仕方ない」のだと考えておいた方がいいと言う。それをわかった上で、気合と根性ではなく、仕掛けでカバーする方法をとるべき。

先ほど「言える化」「見える化」「自分の勝ちパターン」と3つのキーワードを説明したものの、「これをやればOK」という魔法のツールはない。すべて職場や現場次第。

大事なのは

「健全な問題意識」
「健全な成長欲求」

このふたつ。派遣スタッフの方から職場を巻き込んで、働き方を変えた例もあるそう。自分たちで「おかしい」「効率化できる」と思ったら手を上げて、健全な問題意識とともに、もやもやと闘うための勝ちパターンを付けてほしい、と結んだ。まずは自分の周りから、言える化、見える化に取り組んでみよう。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)
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