井の頭線・西永福の駅から歩いて10分ほどの閑静な住宅街に、石橋幸子さん(36)の仕事場兼店舗はある。築60年の建物を改装したという室内は、古き良き時代の温かみを残すたたずまいと、自然素材で仕上げた淡いグリーンの塗り壁が印象的。まるで森のなかにいるかのような清々しさに満ちている。このスペースを拠点に活動する石橋さんは、フリーのプランナーだ。

一度に多くの人の心を動かす醍醐味

プランナーと一口に言っても、仕事内容は多岐に渡る。石橋さんの場合、主にブランディングやプロモーションに携わることが多い。以前は企業の広報や宣伝部署に所属していたが、6年前に独立。現在は販促イベントやキャンペーンなどを中心に、ブランドや商品の認知度アップや顧客拡大につなげる仕掛けづくりを、業務委託の形で幅広く請け負っている。

プランナーという仕事の醍醐味をたずねると、よく通るソプラノボイスで「一度に多くの方の心を動かすことができるということでしょうか」と石橋さん。「お客様の喜ぶ顔を想像しながら、こういうサービスがあったらうれしいだろう、楽しいだろうとあれこれ考えていると、ワクワクしてきます」と、大きな目を輝かせる。

「できる」と思えばできる――というのが石橋さんの信条。少しハードルが高いと思える案件に向き合う時も、「できないかも」ではなく、「きっとうまくいく」と考えるように心がけている。

「これまでの体験から、思い込みが大事と学んだんです。新しいことにチャレンジするときには不安もたくさんありますが、思い切って飛び込んでみたら、いつの間にか希望する方向に進んでいたってことが多かったですね」

「毎日違う人とランチ」のミッションをクリア

「できる」と思えばできる――そんな風に思えるようになったきっかけの一つが、以前勤務していた企業で、尊敬する女性の上司から与えられたあるミッションだった。

「来期の目標を立てるときに、『さっちゃんの目標は、毎日違う人とランチを食べることね』って言われたんです」

当時、担当するブランドのプレスやプロモーションに携わっていた石橋さん。一方、仕事とプライベートは別と割り切って、オープンな人づきあいは避けていたところがあった。

「目標といったら売上や認知度の数字で示されるものだと思っていましたから、最初は戸惑いましたね。でもその上司に、人にたくさん会って人脈を広げるのも大切な仕事よと、説得されたのです」 

ならば、とそこでスイッチを切り替えたという石橋さん。「それまでの私にはとても考えられないことだったのですが、打ち合わせで初めて会った相手にまで『今度ランチにいきませんか』と声をかけまくっていました」と、笑いながら当時のがむしゃらな様子を教えてくれた。

「やればできるもんだなって。“ランチ”というほどよい距離感もよかったのでしょうね。この時期に広げた人脈は、いまも私の財産です」

フリーになった途端に舞い込んできた大仕事

6年前、独立と同時に舞い込んできたのが、名古屋でカフェプロモーション事業を立ち上げるという大仕事だ。それまでの仕事ぶりを見込まれてのオファー。一瞬迷いはあったが、「できると思えばできる」の信条に背中を押され、引き受けることを決めた。

さまざまな企業とコラボレーションして、カフェを舞台に、ターゲットへのダイレクトなアプローチを展開するカフェプロモーション。石橋さんは、3カ月間名古屋に居を移し、1000人規模のマーケティングデータ収集、イベントの仕掛け、公開ラジオ収録、TシャツやCD、フリーペーパーの製作と、膨大な業務を一気にこなした。

「名古屋にいる間1日も休みがなく、連日深夜まで仕事をしていました。体力的にはいままで一番きつかったかな」と当時を振り返り苦笑い。それでも、「この経験が、フリーでやっていく自信につながりました」ときっぱりと言う。

相手が漠然と抱いている夢を、ゼロからイチに

正社員、契約社員、派遣スタッフ……さまざまな働き方を経て、「フリーランス」という立ち位置に落ち着いた石橋さん。「このポジションが私には合っていますね」と晴れ晴れとした表情を見せる。

「仕事に向き合う熱量には個人差がありますよね。私は、お客様のためにと思ったらとことんこだわりたいタイプ。極端な話、朝でも夜でも時間に関係なく、自分にできることがあればがんばりたいって思う。でも、それを他の人に強いることはできないですから」

企業内にいたときには、同じ職場のなかで他のメンバーとの温度差にジレンマを感じ、悶々としたこともある。役割や立場に限界を感じたことも。だからこそ、自分らしく、シンプルに「お客様のため」に全力投球できるいまが、うれしいのだ。

「フリーになる前と後とでは、気持ちが全然違います。以前はどこか守られている感じでしたが、いまは、いつ切られても文句は言えません。成果がすべてですから、常に新しいものを探し続け発信し続けないと。その緊張感が好きなんです」

これから先も、この居心地よい仕事場をベースに、プランナーとして、個人でも企業でも、相手が漠然と抱いている夢や願いをカタチにするお手伝いをしていきたい、と石橋さん。

「ゼロからイチを生み出して、喜んでいただく。これまで50社以上と関わって仕事をしてきた経験の蓄積から、そこについての思いとスキルは、誰にも負けないと自負しています」

日課は草取り。手荒れ予防のクリームが必需品

収納力たっぷりの長財布は、「ヒロコ ハヤシ」ブランドのもの。革が柔らかく、スナップボタンを1つはずすだけで、本体全体が箱型になり、小銭の出し入れがとてもスムーズ。パスポートから絆創膏、お守りなどなんでも入るので重宝している。名刺入れも同じブランド。

門から続く長いアプローチと庭のある仕事場兼店舗を構えてから、毎日30分の草取りが日課に。家事も好きで水仕事も多いので、手荒れを防ぐためハンドクリームが欠かせない。愛用しているのはハーブクリームとソンバーユ。ソンバーユを使うようになって、やけどの跡も気にならなくなった。

虫さされには、兄の台湾土産の白花オイルがきく。塗るとすぐかゆみが治まるし、ハッカのさわやかな香りがリフレッシュ効果も。

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)
カメラマン:上澤 友香(うえさわ ゆか)
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