「秘書」と聞くと、気遣いができる人の代表格といったイメージがあるのでは? ところが、最初から気遣いのできる人ばかりではないのだそう。『ビジネスパーソンのための「秘書力」養成講座』の著者である井出元子さんは、心がけや習慣、経験から学ぶことで、気遣いのできる人になれるという。多くのビジネスパーソンの参考になる「秘書力」について、らしさオフラインで教えてもらった。

講師:井出元子さん
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。その後、移動体通信業界に転じ、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。2008年小宮コンサルタンツに入社、小宮氏の秘書を務める一方、新人研修等の講師を務める。一般企業や医療法人等で、新入社員研修、ビジネスマナー研修、秘書研修を実施。秘書技能検定1級。

秘書業務は「相手視点」がすべてを下支えしている

秘書業務をしながら、自社で開催するセミナーや企業研修の講師を務め、さらに書籍を出版した井出さん。当日も、領収書の整理や請求書の作成、新幹線の予約といった秘書業務をこなしてから会場に到着したという。井出さんは、秘書業務はどういうものか、また、なぜビジネスパーソンに有効なのかを解説する。

「秘書の仕事は、スケジュール調整や出張手配など、ある程度共通の仕事はありますが、それ以外は仕える上司によって様々です。相手に踏み込む範囲や距離感、組織の中での立ち位置やそこでの振る舞いなど、明確にマニュアル化できない仕事なんです。私を含め、秘書は相手の求めているものを考え、それを察知しながら仕事をせざるを得ません。私なりに『秘書力とは何か』と考え、書籍では“段取り力”や“接遇力”など9つのスキルで構成しました。詳細は本に譲りますが、そのすべてを下支えするのは『“相手視点”で考え、行動すること』です」

「相手視点」とは、ビジネスの現場でよく聞く言葉。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。

「相手の立場に立つという意味ですが、具体的に何をしたら『相手視点になっている』といえるのでしょう? 人は自分の視点でものを考えますから、相手視点で見ることは、ものごとの見方を変えること。自分の側からは見えなかったことが、相手の側から見たときに見える。これが、『気づく』ということだと考えています」

気づける人になるために、ひたすらメモを取る

井出さんは、「どうすれば気づけるようになりますか」という質問をよく受けるのだそう。気づける人になりたいと思っている人は多いのだ。

「私はこの仕事をするまで、決して気づける人ではありませんでした。誰かの気遣いを見て『どうして自分は気が付かなかったのだろう』と落ち込むタイプ。秘書になりたての頃、自分が気づけなかった誰かの気遣いを、ノートに記録していました。だから、今気遣いのできるように見えている人も、誰かの気遣いを取り入れただけなのかもしれません」

ここで、参加者は隣の人とペアを組み、「最近気づいたこと」をシェア。「いつもの道に花が咲いていた」など些細なことでもいいそう。数分ずつシェアをして、何名かが気づいたことを発表した。

「比較的すぐに思いついた方は、気づきのアンテナを広げている方です。普段から、何かを見つけよう、気づこう、と考えているのでしょう。私たちが、まずできることは『気づきたい』と思うことです」

「気づく」ためにはポイントがあった

「気づきたいと思っていても、どうすればいいかわからない」——そんな人のために、井出さんは行動を変えるためのポイントを紹介する。

ひとつめは「観察する」こと。井出さんが、自分の経験から観察のコツを紹介する。

「ある時から、上司のゴミ箱を見るようになりました。上司は出張が多く、週に1~2回しか会いません。それまでは、たまった郵便物を上司がチェックしている様子を観察していたのですが、ゴミ箱を見ればいいと気が付いたのです。封を開けずに捨てるもの、封を開けて捨てるもの、封を開けてとっておくものがあります。そのうち、封を開けずに捨てるものは、上司に渡す必要がない。また、開封して捨ててしまうものは、封を切っておけばいいと気づいたのです」

ゴミ箱ですら、観察することで得たい情報が手に入るのだ。

「想像する」のが重要なスキル

次のステップは「想像する」こと。その中でも「相手を想像する」「自分だったらと想像する」「未来を想像する」に分けられるという。

・相手を想像する

相手が今どこにいて何をしているか想像すれば、連絡手段にメールか電話か適切な方を選ぶことができる。また、上司との会話をシミュレーションしていると、上司からの返答パターンが予測できるようになる。

・自分だったらと想像する

外出先から戻ってきて間髪入れずに「今、お時間いいですか」などと聞くのではなく、「自分だったら、一息ついて、メールなどを処理してから聞きたい」と想像する。上司が企業を訪問する場合なら、「〇階の受付で〇〇さんを呼び出す」といった情報がまとまっていると行動しやすいのでは、など自分に置き換えて想像する。

・未来を想像する

上司の会食に同席する場合、雨が降っていたら同席者は傘を持ってくるだろうと考えれば、傘の置き場所を確認しておく。手土産があるなら、渡す適切なタイミングを考えるなど、この先起きることを想像してみれば、必要なことが見えてくる。

さらに補足として「経験とインプット」を挙げた井出さん。最初は失敗しても、誰かが気づいたことをインプットしておけば、次に生かせるようになる。それを増やしていくことが、気づく人になる近道なのだ。

何をゴールにするか?

井出さんは、仕事のできる人を観察し、「何を自分の仕事のゴールにするか」によって、成果がまるで違うのだと気づいたのだそう。

「例えば、お茶出しを頼まれたとして、お茶を出すだけだと思っている人と、お客様に気持ちよくお過ごしいただくことが仕事だと思っている人では、気づく範囲が変わります。後者は、『日差しが眩しくないか?』『暑くないか?』など様々なアンテナを張ってくれますよね」

何をゴールにするかにも、ポイントがある。

「仕事はたいていアクションで指示されたり、依頼されますが、ゴールはそのアクションを取ることではなく、『アクションの結果、何らかの状態を作り出すこと』だと思っています」

「秘書の仕事をアクションでとらえていたときは、会社を空けることができませんでした。いくらやっても、やるべきアクション(仕事)が次から次へとあり、それをすることが自分の仕事ととらえていたからです。ところが、状態を作る、と考えてから、会社の方針と合っていれば、必ずしも自分が会社にいなくてもいいということがわかり、働き方が大きく変わったのです」

仕事のゴールを状態でとらえれば、気遣いのできる人になり、働き方も快適に変わっていく。あらゆるビジネスパーソンに有用な「秘書力」を、すぐにできるところから始めてみたい。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)
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