正社員から派遣スタッフとして働く道を選んだ北本裕也さん(34)。自分の成長やキャリアを考えたときに、異なる業種や業界で広い世界を知りたいと思ったからだ。マーケティングやSE、IT関連の営業サポートなどを経て、たどり着いたのは正社員のころに希望を出していた営業職。北本さんの勇気あるステップアップをうかがった。

単調な仕事に成長を感じられず、正社員から派遣スタッフへ

「新卒で入った会社は、クレジットカード会社で、支払い催促の電話を掛ける仕事でした。細かい工夫はあるものの、単調で成果が見えにくく、やりがいを見出しにくい仕事でした」

そんな北本さんは、2年半ほど同じ仕事をした後、社内公募に応募する。第一希望の営業は枠から漏れてしまったが、自社開発の端末を作る開発の部署に配属となった。

海外とのやりとりや英語での資料作りは、大学の時に専攻していた英語が役立った。また、社内でも先進的な分野に取り組んでおり、刺激的で飽きない仕事だったという。

「ただ、その仕事を一生やりたいかと考えたときに、そうは思えなかった。入社した動機も『アルバイト先の先輩が入社していた』『人の雰囲気がよさそう』という理由で、仕事内容で選んだわけではなかった。自分のキャリアを考えたときに、いろいろな世界を知りたいと思ったんです」

当時、北本さんは28歳。転職エージェントに相談するも、未経験可の求人は少ないだろう、とのことだった。

そこで、派遣スタッフとして新たな仕事にチャレンジすることに。ExcelやAccessを使う短期の事務職を経験し、まずはどこでも使うだろうスキルを身に着けたあと、スマホゲームの会社でデータ分析を中心としたマーケティングを経験。さらに、システムを扱う企業で営業サポートのチームに入り、提案資料などを作成した。システム運用やネットワーク監視といった、ITの専門的な内容のため、一般的な知識と会社固有の知識を必死に学びながら進めていった。

「システムに直接触れるような経験はないものの、提案資料に載せるような全体図から考えることで汎用的な知識が身に着いたのは、とてもありがたい経験でした」

営業は抵抗があったが「今やらないと一生やらない」

SEになりたいと考えた北本さんは、次にソフトウェアの自社開発をする企業へ。顧客のもとへ出向き、サーバールームでインストールや設定、要望に応じたカスタマイズをする。そこでも会社固有の知識を身につける必要があり、経験を重ねながら少しずつ覚えていった。ところが、当時の上司から思わぬ言葉をもらった。

「SEがやらなくていいところまでやるよね。お客様のためという気持ちはわかるけど、それは営業に任せておけばいいんだよ。SEより、営業の方が向いてるんじゃない?」

例えば、顧客のことを考えて契約内容の再考を提案するなど、SEの範疇でないことまで気にかけていたのだという。そこで思い出したのは、1社目で正社員として働いていたころ、社内公募の営業職を希望していたことだった。

「派遣でも、営業経験ありきの求人が多いと感じていました。でも今からトライするとなると、給料などの諸条件を下げざるを得ないのでためらっていたんです。ただ、気になっていたことをグサッと言われた気がして……。『今やらなければ一生やらないかもしれない』と思い、挑戦しようと決めました」

成長し続け、どこでも通用する人材になりたい

覚悟をして探し始めた営業の仕事だったが、条件を下げなくても、IT営業の仕事が見つかった。法人営業で、顧客を新規開拓するチームだ。

「お客様とやりとりしながら、関係性を築き、お互いが納得するものを作っていく、共同作業のようだと感じています。『困っていることはありますか?』と聞けば一応答えていただけますが、コミュニケーションをとるなかでポロッと出てくる場合も多い。話しやすい関係性を築けたからこそ、糸口が見つかることもあります」

「売ればいい」に留まらない、顧客を想う姿勢が北本さんの持ち味だ。

今後のことをうかがうと、「どこへ行っても通用する人材になりたい」という。

「今のIT営業は長く続けていきたいと思っています。ITなので、先端技術を取り入れるなど、日々変化があります。社内でも、お客様の声を開発担当者などに伝えやすいという意味で、営業は力を発揮できるところだと思っています」

営業として普遍的な力を身につけていれば、今後どんな仕事でも役に立つはず。仕事で大切にしているのは「成長している実感」だという北本さんは、これからも自分を成長させ続けていくだろう。

営業になって、自分の名刺が減ることが嬉しい

今の営業職に転職してからは、先輩の営業トークを録音し、通勤中や事務仕事中に繰り返し聴いていたという。「読んで覚えるより、話したり聴いたりする方が身につく」と自分の得意をわかっているからこそのやり方。ずっと使っているイヤフォンは、スマホ用。レコーダーの内容以外には、音楽を聴くこともある。

大学を卒業後、アルバイト先の先輩が入社祝いとしてプレゼントしてくれた名刺入れ。今の仕事に就くまでは、名刺交換をすることはほぼなかったが、「営業になってやっと陽の目を見た」という。ようやく使えるようになったのが嬉しい。

普段使っているノートは、カレンダーが入っており、手帳として使えるキャンパスダイアリー。持ち歩きやすさが気に入っており、1年間同じものを使う。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)

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