「これからは、言われたことだけをする人材はいらなくなる」といったことを、近ごろよく耳にするのでは?自分で考え、工夫していける人材でなければ、AIやロボットに仕事を奪われてしまうという。では、「自分で考える力」はどうやって身につければいいのだろう。自分で考える力イニシアティブ、THINK-AID主宰であり、さまざまな大学で講師も務める狩野みきさんに、楽しいワークショップを通して自分で考えることを体験させてもらった。

講師:狩野 みきさん

慶應義塾大学、聖心女子大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。考える力 イニシアティブ、THINK-AIDを主宰し、子どもの考える・伝える力を伸ばすクラスを行っている。子どもの考える力教育推進委員会、代表。20年以上にわたって大学等で「考える力」と英語を教える。慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了。著書に『自分で考える力が身につくへんな問題』(SBクリエイティブ)『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』『世界のエリートが学んできた自分の考えを「伝える力」の授業』(日本実業出版社)『「自分で考える力」が育つ 親子の対話術』(朝日新聞出版)など多数。

「おバカなビジネスプラン」の提出が宿題に

今回のイベントを開催する前に、参加者には宿題が出されていた。それは、「思いっきりおバカなビジネスプラン」を考えること。例えば「ゴキブリを食べさせるレストラン」のように、具体的で短いもの。かつ「えーっ、こんな商品やサービス、絶対売れないでしょ、バカすぎるでしょ」と言われそうなものであること。

事前に集めたプランから選りすぐりのものを、各グループに1テーマずつ配布する。自分で考えたものが当たってしまったら、別のものに変更。つまり、自分以外の人が考えた「おバカなプラン」に対して、それぞれがワークすることになる。

「おバカなプランだけでなく、会社のポリシーも含まれています。それらを、グループで30分ほどわいわいがやがやと話して、“素晴らしいビジネスプラン”にしてもらいます。ただし、そこに書かれているプランは変えずに、他のもので付加価値をつけてください」

狩野さんは、コミカルで楽しく臨場感のある解説で、その場を明るくしながら、参加者が楽しくリラックスできる雰囲気を作り上げていく。

素晴らしいビジネスプランにする条件とコツ

もともとおバカなプランを素晴らしいビジネスとして成立させるためには、次のような条件を気にするとよいそう。

・人々がその商品・サービス・会社方針に価値を感じる
・その商品・サービスに「お金を出してもいい」と思う人がそこそこいる(または、「そんな会社なら勤めてみたい」と思う人がそこそこいる)
・同じような商品・サービス(会社)はまだない

「人々が『価値を感じる』ためには、金銭的な利益、癒し、共感などいろいろありますが、そのあたりはご自由に。ただし、『お金を払いたい』と思う人、あるいは『そんな会社なら勤めてみたい』と思う人がそこそこいるサービスを考えてください。大きな話題にならなくても、『SNSで多少は話題になりそう』で、せめて数百人くらいはお金を払ってくれそうなイメージでお願いします。同じような商品やサービス、会社がないということも大切です」

考えるポイントとして何より大事なのは、「楽しむこと」だと狩野さん。ひとりで考えているとばかばかしくなってしまうことも、楽しい雰囲気でわいわいがやがやと進めていると、冗談から素晴らしいアイデアが生まれたり、プランが研ぎ澄まされたりするのだとか。

30分のワークの間には、狩野さんが各テーブルをまわって話を聞いたり、アイデアに詰まっているグループにヒントを出したりすることもできると説明した。

ワークの後、いくつかのグループが発表を

盛り上がったディスカッションのあと、3つのグループに発表をしてもらった。もともとのプランと、最終的なプランのBefore & Afterを説明する。1グループ目は、「欽ちゃん走りで出勤しないとクビになる会社」。発表しただけで、会場にどっと笑いが起こった。

「出勤時間の全てを欽ちゃん走りにすると迷惑がかかるので、会社の中だけでよいとしました。その中で、会社方針に価値を感じるポイントとして3つ考えました。1つ目は、健康管理。もし欽ちゃん走りができないのであれば病欠にするというルールにすれば、健康チェックになります。2つ目は、リフレッシュ。欽ちゃん走りによってリフレッシュができ、気持ちよく仕事に取り掛かれるので、離職率の低減や、採用のしやすさが期待できます。3つ目は、評価。新入社員から役員まで全員がやらなくてはならないので、透明性が高く納得感があります」

2グループ目は「何でもくじ引きで決めちゃう会社」、3グループ目は「実際よりブサイクになる美容整形」がそれぞれのプラン。くじ引きで決めることによる会社の魅力や、ブサイクになる美容整形のニーズを発表した。会場は大いに盛り上がり、たくさんの笑いに包まれた。

おバカなプランが「自分で考える力」になる理由

3グループの発表を終えた後、このワークがなぜ「自分で考える力」になるのか、狩野さんが実績をもとに紹介した。

「スタンフォード大学で、学生に『自分で考える最良のプラン』と『最悪のプラン』を考えてきてもらう授業があります。学生たちは必死に考えて提出するのですが、講師はその場で『最良のプラン』のレポートを破棄します。なぜなら『最良』と言われた時点で、人は既に世の中で認められている価値を無意識にも入れてしまうから。それでは突破口は開けないんですね。だから、『最悪なプラン』を渡し、そこから素晴らしいプランを考えていくと、とんでもないプランが生まれるのです」

狩野さんは、考えるための研修として、長い時間をかけて教えることも少なくない。それでも、身につけるのは難しいという。

「でも、難しく考えずに『楽しい』発想ができるようになれば、それ自体は実現が難しくても、『面白いことを考えるよね』と言ってもらえる人になれるかもしれません」

楽しく考え、いろいろなアイデアを出す行為が「自分で考える力」を身に付けることになるのかもしれない。狩野さんは普段大学の授業でも同じプログラムを実施しているそうだが、「大学生だけじゃない。社会人のみなさんからも面白いアイデアがたくさん出ました」とのフィードバック。まずは楽しいことから、考える力を養っていこう。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)

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