給与即日払いサービスを運営する株式会社ペイミーで、今年の1月から契約社員として働く田山綾乃さん(29)。東京渋谷のオフィスで経理業務を担当する田山さんは、ネイリストの顔ももつダブルワーカー、そして3歳の娘さんのママでもある。多様な働き方が認められるようになってきているいま、選択肢が多いだけに迷ったり悩んだりする人もいる。田山さんは、どんな軌跡を経て、この立ち位置を見つけたのだろうか。

激務の会社員時代、ネイルで元気をもらった

時間も曜日もフリー。田山さんの勤務形態は、かなりフレキシブルだ。週2日ほど、千葉の自宅でネイルサロンを開き、それ以外の平日は渋谷のオフィスに出社する。休日は、家族と過ごす時間を大切にしている。

「ネイルの予約ありきで、出社日が決まるんです」と田山さん。そのゆるやかな感じに驚いていると、「ダブルワークが前提で転職したので。会社の理解もあって、いいバランスで回っています」と笑顔が返ってきた。

ネイルと出合ったのは、新卒で入社した会計事務所で正社員として働いていた頃。当時、田山さんは、経理に関する業務を幅広く任され、仕事に追われる日々を送っていた。リフレッシュのつもりで何気なく足を運んだサロン。そこで初めて体験したネイルに、すっかり魅了されてしまったのだ。

「自分の爪がすごくかわいくなって、テンションが上がりました。ストレス解消できただけじゃなく、仕事に対するモチベーションまで湧いてきたんです」と、当時を振り返り、声を弾ませる。

人を元気にするネイルの技術を自分も身につけたいと、スクール通いを始めた田山さん。仕事の合間を縫って勉強を続け、ネイル検定2級の資格も取得した。その行動の背景には、大学進学の際に、子どもの頃から大好きだった美術の道を断念したことへの悔いがあったという。

「美術では食べていけないと私も思っていたし、親にも『趣味でやればいいじゃないか』と言われ、あきらめちゃったんです。その時自分の意思を貫くことができなかったことが、ずっと心残りでした。アートだけどこれなら仕事にもできるのかもと、本格的に勉強したいと思いました」

育休明けに、戻る場所がない!?

一方、経理の領域でもキャリアアップを目指していた田山さんは、外資系の建築資材商社へ転職。損益計算書や貸借対照表などの書類から付随する資料に至るまで、英語メインの環境に当初は面食らったが、責任のある仕事を任され、やりがいを感じていた。

ところが、入社3年目、子どもを授かり育休を取得したものの、いよいよ復帰というときになって、思わぬことが……。

「日本法人の代表が退任され、私のいた部署も編成が変わり、お世話になっていた上長の方も退職してしまったんです。突然、戻る場所がない、みたいな感じになって慌てました」

退職を余儀なくされた田山さん。急遽、派遣スタッフの登録をし、すぐに働ける就業先を探した。

「保育園への入園が決まっていたから、必死でした。しばらくは育児に専念するという道もあったのですが、私自身、育休中、会話のできない娘と1対1で向き合うだけの毎日が、正直辛かった。孤独を感じてしまったんです。仕事をしている自分の時間が必要だと痛感しました」

精神的にゆとりができたとき、思い出した夢

こうして、育児と仕事の両立が始まった。フルタイムではあったが、ボリューム的にも内容的にも、正社員時代に比べ、ゆとりをもってこなせる業務だった。

そんな時ふと思い出したのが、ネイルのこと。資格を取って以来、結婚、出産、転職など大きなライフイベントが続いてすっかり遠ざかっていたが、「今度こそ、仕事としてやってみたい」という思いがふつふつと湧いてきた。

いきなりネイルサロンを開く自信はない。そこで田山さんは、友だちやSNS上の知人を相手に、半年間、ひたすら出張ネイルで腕を磨く。自宅でサロンを開くことを決意したのは、2018年12月。クリスマスに夫から贈られたネイルデスクが、背中を押してくれた。

「家でサロンをやってもいいよって意味かなって、勝手に解釈しました(笑)。ちょうど転職先を探し始めた矢先、ツイッターでいまの会社の求人情報を見つけたんです」

正反対の2つの世界が、よいバランス

田山さんのサロンは、子連れOK。ふだん子育てに追われているママにも、ネイルを楽しんでほしいと、そう決めた。

「子連れで行けるサロンって少ないんです。誰かに子どもを見ていてもらう手もあるけれど、子どもを預けてまで行きたいところって、ネイルサロンの他にたくさんある。それなら、ここには、お子さんもいっしょに来ていただこうって」

実際、顧客のほとんどは子ども連れ。「私自身もまさに子育て真っただ中だから、話題も合うんです」と、にっこり。「ぐずった赤ちゃんを抱っこしてもらって、立ったままネイルする、なんてこともよくありますよ」

インタビューが終わる頃、田山さんは、「私って、隣の芝生が青く見えるタイプなんです」と苦笑いした。「こういう私には、常に2つのことができるいまの状態がちょうどいいんです。経理は、論理思考や計算など左脳メインの仕事ですが、ネイルは感性が大事。経理では一人で黙々と数字と格闘し、ネイルでは、直接人とコミュニケーションをとる。まったく正反対の世界だから、両方のストレスをうまく解消し合うことができています」

試行錯誤の末に、自分にとって居心地のよい働き方、納得のゆく自分のあり方を見つけた田山さん。これからは、「隣の芝生」もそれほど青く見えることはないかもしれない。

小物を大好きな色で揃えて、気分をアゲる


 
田山さんが持参した愛用品で印象的だったのは、ブルー系のものが多いこと。「ミントブルーが大好き」とにっこり。爽やかでクール。田山さんの印象にぴったりだ。

白い名刺入れも、内側はやはりミントブルー。「この名刺入れを使い始めた頃から、いろいろ環境がよい方向に変わった。縁起がいいんです」

ネイリストとして外せないのが、ネイルデザインの見本。細かい柄を手描きしたものや微妙なグラデーションが施されたものなど、見ているだけでうっとりする。

いまもスクールに通い、スキルアップに余念がない田山さん。「ネイルは、お客様が爪に抱いているコンプレックスを取り除くことができる。心から喜んでいただけるように、もっともっと技術を磨きたいと思っています」

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)
カメラマン:刑部 友康(おさかべ ともやす)

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