ビジネス現場では毎日のように書く「文章」。チャットツールのような短いものから、メールや報告書など、なんとなく書いて出してしまうことはないだろうか?『人より評価される文章術』(宣伝会議)などの著書がある高橋慈子さんによると、ライティングスキルをアップしてわかりやすい文章を書くことで、チームとしての仕事の効率は格段にアップする。さらには自分の評価も上がるという。スキルアップのワークも含めてレクチャーしてもらった。

講師:高橋 慈子さん

企業の取扱説明書やマニュアル制作のコンサルティングや人材育成を提供する株式会社ハーティネス 代表取締役。テクニカルライティング研修のほか、ビジネス文書研修の企画や実施、各種セミナーで文章の書き方指導を展開。宣伝会議「文章力養成講座」講師。大妻女子大学、立教大学、慶應義塾大学 非常勤講師。著書に『技術者のためのテクニカルライティング入門講座』(翔泳社)、『人より評価される文章術』(宣伝会議)、『90分で学べるSEの文書技術』(日経BP)など。

テクニカルライティングをビジネスの現場で活かす

高橋さんは、マニュアルや取扱説明書などを、間違いなくわかりやすく書く「テクニカルライティング」の専門家。たくさんの情報を読み手に合わせて整理して書くことが大事なうえ、読み手に行動してもらうことを重視している。テクニカルライティングは、センスではなく「技術」。コツをつかめば必ず上達できるのだとか。

ビジネスには、仕事の場所にふさわしい文章の書き方がある。私たちが、ビジネスとプライベートで違う洋服を選ぶのと同じだ。

まず高橋さんは「わかりにくい文章」がもたらす問題点やリスクを紹介した。

「これは意外と意識されていないのですが、わかりにくい文章は、情報をゆがんで伝えることがあります。それにより誤解が生じたり、期待していることとは違った行動につながったり、自分にも相手にも手間と時間をかけてしまったりと、仕事に大いなる悪影響がでます。また、自分の能力を認めてもらえないといった弊害もあります」

「わかりやすい文章」のほうがなんとなくいい、というわけではなく、わかりにくい文章には明確なデメリットがあるのだ。

「ビジネスで求められるライティングスキルは『簡潔に伝わる』『行動につながる』『生産性が高まる』ことが大切です」

と高橋さんは言う。特に、「簡潔に」はとても重要なのだとか。日本人は「こうしてください」を遠回しに伝える傾向があるが、ビジネスライティングでは明確に伝えた方がいい。さらに、チームの生産性が高まることも大事なポイントだ。

自分でメモを取り、文章を書く時のコツを演習で身に付ける

ビジネスでは、メモを取って文章にする場面が多い。連絡文や報告書などはその典型だろう。演習をする前に、まとめるコツを説明した。

・聞いた内容のポイントを5W2Hを意識して確認する
・いつまでに、どこへ、誰に、何を、なぜ、どのように、いくら(いくつ)
・わかっている「つもり」ではなく、書き出して整理する

「簡潔に書くと言っても、情報を薄くするという意味ではありません。大事なことだけを、ぎゅっと入れることが大切です。そのためには、5W2Hの情報を押さえておきましょう。通常言われる5W1Hのほかに、How much、How manyといった数字の情報があるといいのです」

要素だけでは、文章を書くにはまだ足りない。「読み手」視点で筋道を作る必要がある。ここは「書き手」ではないことがポイント。例えば、売りたい商品があるときに、その商品のよいところだけを並べても、読み手には響かない。相手が困っていることに対して、使い方やメリットを訴求しなくては伝わらないだろう。

「例えば、連絡事項を伝えるときの筋道は、(1)『いつ、誰から、誰宛に』を最初に記録しておき、次に、(2)何をしなければならないのか(行動)と全体像を伝え、(3)全体に対しての説明を加えます」

ここで高橋さんが上司役になり、メモをとる演習を行った。外出中の上司から電話がかかってきて、不在の従業員向けにメモを残すという設定だ。参加者は必死でメモを取る。会話の中には、あえて必要のない情報や、雑談も交えてある。

電話での会話を終えたあと、メモし損ねた情報などをテーブル内のグループでシェアしてから、各自が連絡事項を伝える文章を書いた。さらに、隣の人に見せて、よい点と改善点のフィードバックをもらう。それを数人で行うことで、書き手と読み手の両方の視点を持つことができ、たくさんの気づきが生まれる。最後に、高橋さんから良い例のサンプルが示された。

提案書などで使えるロジカルライティングのコツ

提案書などで使うロジカルライティングも、基本は同じ。最初にロジックを組み立てることが大切だ。

「情報を整理して、趣旨やそれを支えるポイントを抜き出し、ロジックを組み立てます。相手が理解しやすく、納得する『筋道』を作ることがポイント。大事なことを書きだして、目に見える場所に置きながら書くことがコツです」

また、ロジックツリーの紹介も。「依頼内容:○○をしてもらう」の下に、「相手にして欲しいこと」「理由やより詳しい内容」「期限や方法」「返信先(署名)」といった要素がツリー状にぶら下がる図だ。

それをもとに、5W2Hの入った具体的な文章にしていく。最後に、「わかりにくい文例」を見て、わかりやすい文章に変える演習を実施した。

これまで読み手を意識せず書いていた人は、読み手を意識するだけで文章が大きく向上するに違いない。また、ロジックで筋道を立てて文章を作り、情報を簡潔に伝えることで、ビジネスがスムーズに進むだろう。周囲のためにわかりやすい文章を作ることで、自分の評価も上がるとなれば、取り組まない手はない。ビジネスに向くライティングスキルを磨いていきたいものだ。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)

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