食事が健康に及ぼす影響は気にしていても、心にまで与える影響を意識している人は少ないのでは?季節によって体調が変化することはもちろん、不足しがちな栄養素が変わることで心にも影響があるという。『1週間に1つずつ 心がバテない食薬習慣』の著者である大久保愛さんに、食べ物が心と体に与える影響や、おすすめの食事などをレクチャーしてもらった。

講師:大久保 愛さん

薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。アイカ製薬株式会社代表取締役、株式会社漢方生薬研究所開発責任者、一般社団法人腸内細菌検査協会理事、株式会社東進メディカルアドバイザー。秋田県出身。昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。秋田の自然の中で幼いころから薬草や山菜を採りながら育ち、漢方や食に興味をもつ。薬剤師となり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人ではじめて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳を始め医療と美容の専門家として商品開発・ライティング・企業コンサルティングなどに携わる。漢方カウンセラーとして年間2000人以上の女性の悩みに応えてきた実績を持つ。「東洋食薬ライセンス:食薬マイスター」「漢方生薬研究所」等を監修。現在さまざまな記事も連載中。

東洋医学と西洋医学の違いと、食薬のメリット

はじめに、大久保さんは長年の疑問を次のように語る。

「昔からこんな風に思っていました。東洋医学は体によさそうだけど、根拠がなくて怪しい気もする。西洋医学は根拠があるけど、長く続けると体によくないかも。体にいいことをしたいけど、面倒なことはしたくない……」

そう思った大久保さんは、「食薬(しょくやく)」に着目。東洋医学の根本の思想を軸として、西洋医学的な根拠を持ち、薬ではなく食べ物で心と体を整えることを意味するという。

東洋医学は次の2つの軸からなっている。ひとつめは「人間は自然の一部であり、自然に体調が左右される」ということ。季節の移り変わりで体調を崩したり、イライラするなど、人間の体が天候や気候によって影響を受けるのは当然だという考え方だ。ふたつめは、「発病する前の状態、いわゆる未病のうちから治す」こと。西洋医学は病気になってから治療をするが、東洋医学は「ちょっとおかしいな」と体感する症状を分析して治していけるのだという。

一方の西洋医学は、分子栄養学と腸活の理論が中心。分子栄養学は、栄養素の代謝のされ方や、効率的な使われ方に着目している。腸活は、腸内細菌にとってよくない食事をすると、腸を経由してさまざまな悪影響があるとする考え方だ。

東洋医学と西洋医学の両方の思想を取り入れた「食薬」は、体調を自分で管理でき、味覚が整うことがメリット。味覚が整うと、体に適したものを欲するようになり、意識しなくても自分に合った食事ができるようになる。ただし、味覚を整えるまでは、知識を付けて体にいいものを摂る必要があるのだそう。

季節と心の深い関係

季節の変わり目に体調を崩す人は多いが、季節の移り変わりと、体は深く関係している。例えば、日照時間や気温が変わると、陽に当たることで体の中にできるビタミンDやセロトニンが不足する。セロトニンは、心の状態にも大きく関わる。また、気温や気圧、湿度が急激に変化すると、自律神経が乱れやすくなる。

季節によって心も変化し、季節ごとに出やすい心の不調があるという。東洋医学では四季を5つに分け、異常気象や台風、梅雨などの時期を「長夏(ちょうか)」と呼ぶ。それぞれ起きやすい心の不調は次の通り。

 春:イライラ、怒りっぽい
 夏:不安、眠れない
 長夏:考えすぎてしまう
 秋:悲しい
 冬:恐怖、ひとりでいたい

特にこれからの冬は、冷えにより臓器の機能や血流が低下することや、外食が増え食事が乱れやすいことから、消化を助ける食品がおすすめなのだとか。

「心がバテる原因は『〇が不足し、○○をため込んでいる』と言うことができます。東洋医学では『気』『血』『水』で考えますが、そのどれが不足しているのでしょうか?」

大久保さんが参加者に問いかけ、それぞれに挙手をしてもらう。

「気の働きは、体を動かしたり温めたり、代謝を良くしたりするもの。血の働きは、イライラや不眠症などのメンタルの不調を整えるもの。水の働きは、乾燥をはじめ、弱くなった粘膜や電解質、ホルモンの乱れを整えるものと考えます。また、先ほどの質問で『○○をため込んでいる』に当てはまるのは痰湿(たんしつ)です。これがたまると、だるくなり、気力がなくなり、頭の回転が鈍くなります」

つまり、心がバテる原因は「血の不足」が原因。血の不足を補う栄養素は、「たんぱく質」「ビタミンB群」「ミネラル」が該当する。また、痰湿がたまるのは、腸を汚す糖質や、揚げ物などの高脂肪食品が多いことが原因だという。

簡単で続けやすいおすすめ料理

後半は、大久保さんからのおすすめ食薬料理を紹介。難しく考えなくても、とても簡単に取り入れることができる。

「朝ごはんはオートミール粥がおすすめです。数分でお粥ができるし、栄養素が豊富。ツナ缶やお豆、チーズを入れるだけで、簡単にアレンジすることもできます」

そのほか、お弁当や朝食には「豚肉の豆鼓・オイスターソースの包み焼き」、昼ごはんには「きくらげと卵の中華炒め」、おやつには「きなこリンゴ」といった、手間のかからない美味しそうなおすすめ料理を紹介。それぞれに含まれる栄養素が体に与えるよい影響を説明した。そのあと、事前アンケートで募集したお悩み別におすすめの食事を紹介していった。

「症状別には、免疫力をあげたいときには『料理の元を使わないで料理する』『小麦粉・砂糖を極力控える』『依存的に食べているものをやめる』ことが効果的。貧血のときには『消化補助食品・整腸食品を選ぶ』『便の様子を見ながらタンパク質を増やす』ようにしましょう。簡単な茶わん蒸しがおすすめです」

たくさんの食薬料理が紹介され、すぐに取り入れられそうな内容に参加者は熱心に聞いていた。レクチャー終了後は、紹介された「きくらげと卵の中華炒め」「アンチョビキャベツのガーリック炒め」ほか、秋冬の栄養のポイント「整腸作用とミネラル」に配慮した料理が参加者に振舞われた。

東洋医学の思想と、西洋医学の根拠をもとにした食薬を取り入れ、心と体のバランスを保ちながら、病気になる前に自分をケアしていきたいもの。味覚を整え、食べたいものを食べるだけで自分の体調を管理できることを目指したい。

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)
カメラマン:坂脇 卓也(さかわき たくや)

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