茨城県水戸市で期間業務職員として行政の助成金対応にあたる野上由理さん(45)は、プライベートタイムのほとんどを趣味の筋トレに注ぎ込んでいる。リモート取材の画面に映るやわらかな笑顔と対照的に、その口から飛び出したのはスポ根ドラマさながらの熱い言葉。コロナ禍の試練も、持ち前のポジティブ精神で乗り越えてきた野上さん。周りを自然に元気にするパワーの源を探った。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

椎間板ヘルニアがきっかけで始めた筋トレ

野上さんがジムに通い始めて1年半ほどたった。休日はもちろん、勤務のある平日も含め、多い時で週5日。行けばたっぷり2時間は汗を流すという。

「翌朝の食事やお弁当の下ごしらえを済ませて出かけるから、ジムに着くのは夜9時とか10時とか。夜遅く食べすぎちゃったときや夜中に眠れなくなったときに、ふらっと行くこともあります。24時間営業のジムなので融通がきくんです」

自分が20kgのバーベルを持ち上げるなんて以前ではとても考えられなかったが、いまではそれも物足りないほどに。

「続けていると、バーベルがなんだか軽いと感じる瞬間があるんです。筋肉は裏切らない(笑)。あ、こんなに筋肉がついたんだって達成感がたまりません」と、いかにも楽しそうだ。

筋トレを始めたのは、健康のため。椎間板ヘルニアを患ったことがきっかけだった。

「1日の大半がデスクワークだったことに加え、長く続けていたマラソンを中断して太ってしまったのが原因だと思います。一時は片足がマヒして歩くのもままならなくなってしまったんです」

手術でヘルニアは完治したが、筋力不足を医師に指摘され運動の必要性を痛感。そんなときたまたま派遣スタッフ仲間に誘われて入会したのが、オープンしたてのいまのジムだった。

筋トレの効果は、仕事にも波及

筋トレを始めて、体重は10kgダウン。

「思う存分食べるのは変わらないのですが、リバウンドはありません。以前は、体は重いしスカートのボタンははじけちゃうしで大変でした。これじゃ、ヘルニアにもなるよって感じでしたね」

筋トレを続けたおかげで、腰痛がなくなったのはもちろん、最近は風邪もひいていない。確実に健康になったことを実感している。

メンタル面にもよい影響があった。野上さんはジムに行くと、その日の目標部位を決め、その筋肉と徹底して向き合う。ひとつのことに集中して取り組む習慣は、仕事のうえでも大いに役立っているという。

「筋トレはよいことだらけ。人の話にしっかり耳を傾ける姿勢も以前より身についたはずです。トレーニング中にジム仲間や師匠のような方からいただくアドバイスは、決して聞き流しません。わからないことはメモをとって、とことん教えていただく。職場でもそんな姿勢を心がけるようになりました」

シングルマザーとして生きる覚悟でパソコン教室へ

目標を定めたら、ぶれない。あきらめない。「できないと思ったら、そこで終わっちゃいますからね」と野上さん。筋トレで精神的にも強くなれたと話すが、困難や課題に直面したとき、むしろそれを糧にできるたくましさは「筋トレ以前」のエピソードからもうかがえる。

じつは、息子さんが幼い頃、シングルマザーだった野上さん。

「ひとりで息子を育て大学まで行かせるとなると、私がしっかり稼がないといけない。キャリアアップするために、履歴書に堂々と書ける、『私はできます』と自信をもって言えるスキルがほしかったですね」

15年ほど前のことだ。当時まだ保有者が少なかった「マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト資格」の取得をめざした野上さんは、幼い息子さんの世話を両親に頼み、パソコン教室の門をたたいた。

「仕事帰りの疲れた体で何時間も授業を受けるのは辛かったけれど、必死でしたね。資格だけでどうにかなるほど甘くないとあとで気づきましたが、このときがんばって取った資格が、いまの私のキャリアのベースになっていることは間違いありません」

失敗体験が重いほど、成功がうれしい

コロナ禍の今年、求職状況はとても厳しいものだった。にもかかわらず、野上さんはある企業の正社員募集にあえてチャレンジしたという。派遣スタッフとしての就業先はどこも居心地が悪くなかったが、野上さん自身が、雇用形態の違いによってどうしても“壁”があるように感じてしまったからだ。

「業務を深く理解したいと思っても、ある時点で線引きされてしまったり、やりがいのある職場でも期限つきだったりということがどうにももどかしかったですね。もちろんそうしたことは承知の上でしたが、『壁をぶちやぶりたい』と思ってしまったんです」

そんなとき以前から憧れていた企業の募集を見つけ、エントリー。面接の練習を繰り返し、適性検査も猛勉強で臨んだ。ところがコロナの影響で、最終面接前に採用そのものが中止となってしまったそうだ。

「本当に入りたいと思っていた会社だったし、よい感触で進んでいたので、悔しいことは悔しいです。でも、年齢的にも最後のチャンスかもしれないこのタイミングでチャレンジできたことには意味があったと思う」と野上さん。「残念な結果だったけれど、悔いはありません」ときっぱり言い切る姿が清々しい。
 
野上さんのいまの夢は、これまで培ったパソコンのスキルをブラッシュアップさせ、初心者向けの教室を開くことだ。

「町内会などで配るようなちょっとした書類づくりも、パソコンが少し扱えるだけでずいぶん楽になりますよね。苦手意識をもっている方のハードルを下げるような活動ができればいいなと思っています。息子も、『せっかくだからオンラインでやれば』と背中を押してくれているんですよ」

インタビュー中も、熱のこもったトークに圧倒されたりお腹をかかえて笑ったり。野上さんはきっといつもこんな風に、家族や仲間、周囲の人たちを笑顔にしているのだろう。

最後に、ポジティブでいるための秘訣を聞いてみると、「もうだめだと思わないこと。できると思えば、だいたいのことは乗り切れる。なんとかなるものですよ」と野上さん。

「私だって何度失敗したことか。でも、失敗体験が重いほど成功がうれしいもの。20回告白してダメでも、21回目に成功すれば20回の苦労は忘れちゃいますよね。恋愛も人生も一緒ですよ」

夫とお揃いの水筒は、職場にも筋トレにも携帯

息子さんが小学生の頃に再婚したという野上さん。会社にもジムにもいつも持参している黒の水筒は、誕生日が近い夫とお揃いで買ったものだ。いつ買ったか思い出せないほど長く使っているのでキズもついているが、愛着があるので手放せない。「カバンの中で横になっても絶対に漏れないのがいいんです。私はコーヒーが好きなんですが、歴代の水筒でひどいめにあっているから(笑)」

カップはプロテイン用。ジムのロゴが入っているので、職場で使っていると会話のきっかけになることもある。

ライター:高山 ゆみこ(たかやま ゆみこ)

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