オンラインでの会議や面談などが増えているが、ただ漫然と参加してはいないだろうか?実は無意識の行為によって、悪い印象を与えたり、誰かと言葉が重なってしまったり、メリハリがなかったりと意図が伝わりにくくなっているのかも。オンラインの画面を通すときの「伝わりやすい」コミュニケーションスキルを、国立大学法人長崎大学准教授・スピーチコンサルタントの矢野香さんにレクチャーしてもらった。

講師:矢野香さん
国立大学法人長崎大学准教授。スピーチコンサルタント。
NHKキャスター歴17年。おもにニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録。NHK在局中からスピーチ研究に取り組み、博士号取得。大学教員として研究をつづけながら、「信頼を勝ち取る正統派スピーチ」を伝授。政治家の演説、大手企業の株主総会、著者の講演・セミナー、教員の講義、学生の就職面接など、エグゼクティブからビジネスパーソンや学生まで幅広い層にオンラインでのコミュニケーションを指導。クライアントの結果達成に定評がある。著書に『その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎) 、『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る法―NHK式7つのルール― 』(ダイヤモンド社)などベストセラー多数。

四角い画面がすべて。質問などはアクション・ファーストで

オンラインのコミュニケーションで最も意識すべきは「自分の写っている四角い画面がすべて」ということ。画面を有効に使うことで、いまよりぐっと伝わりやすくなる。

矢野さんは、17年間テレビの現場でニュースを伝えてきたため、メディア・トレーニングにも精通している。テレビのノウハウがオンライン会議にも通用するのかを心理学の観点から検証し、効果があった39個を書籍「オンラインでの『伝え方』ココが違います!」にまとめている。今回はその中からいくつかを紹介していく。

まずは、「アクション・ファースト」。言葉の前と後、また同時に手を上げる様子を映し出し、会話が進んでいる中でも、どれが一番質問しやすいのかを実感してもらった。実際には、最初に手を上げるのがもっとも効果的。画面で注目が集まってから「質問いいですか」などと話し始めるのが良いそうだ。

「声が重なることをクロストークと言いますが、その状態では声が重なって聞こえなかったり、譲り合ったりしてしまいます。先にアクションをするとクロストークが起きにくいんです。例えば、相手の話を聞いているときは、うなずいて拍手をした後で『よくできてましたよ』などの言葉を伝えます。リアルだと逆なので、注意してくださいね」

ここぞというときには画面ではなくカメラを見て

オンラインで特徴的なのは、自分の姿が見えること。人は無意識に、自分を目で追ってしまうのだそう。ただ、自分の姿を見ていると、カメラからは少し目線がずれるのでカメラ目線にはならない。当然ながら、画面に映る相手の顔を見ても、相手から見たら目が合っているようには思わないのだ。

「理想はカメラレンズをずっと見ながら話すことですが、ヒトの習性としてなかなかそうはいきません。ですから、強調したいタイミングでレンズを見るようにします。何か説明した後に『ぜひよろしくお願いいたします』と言いながらカメラを見る。また、文末だけをカメラ目線にしてもいいでしょう」

カメラを見るときには、レンズより15cm奥を見るようにするといいのだとか。また、レンズのすぐ下や後ろに好きなタレントさんの顔写真を貼っておくと、自然な笑顔が生まれさらに印象が良くなるという。猫や赤ちゃんが好きなら、その写真でも同様の効果がある。

「目線で特によくないのは、資料などを見るために下を見てしまうこと。リアルであれば『資料を読んでいる』とわかっても、オンラインではスマホを見ているように思われるかもしれません。資料を見るときには画面に映るように手で持ち、目線を左右に動かすようにしてください」

意外と見逃しがちなのが、カメラのレンズが汚れていること。ライトを用意して映りを気にしても、画面が汚れていたらきれいにはならない。改めて確認してみるといい。また、ライトは、ものによって色合いを変えられるものもある。仕事用にはブルー系、飲み会などはイエロー系がマッチする。

「台形バストショット」をマスター

画面でも適切な距離感を演出することができる。画面から離れすぎて、頭の上に余白が多いのはご法度。また、頭の上が画面に入りきらず、切れているのも近づきすぎという印象を与えてしまう。また、体がほぼ映らず顔だけになっているのも見栄えが良くないのだ。

「もっともいいのは『台形バストショット』です。画面の中にバストショットが入っていて、肩から下のラインが台形になっていること。肘を横に張る感じです。逆に両腕をまっすぐにおろして膝に置いていると、リアルではお行儀がいいのですが、『こけし』のように見えてしまうので注意してください」

台形バストショットでちょうどよく映ると、必要に応じて前後の動きを効果的に使える。

「YouTuberの分析をしてみると、上手な方は前後左右に動きます。『これ見てください』と後ろにあるホワイトボードのところに下がったり、『この本が……』と手に持った書籍をカメラに近づけて前に出たり。それによって面白くなるし、大事なところが強調できます」

台形バストショットをマスターしたら、次はジェスチャー。リアルでのセオリーは、3秒止めておくことだという。「皆さん見てください」と片手をあげてもすぐに引っ込めてしまったら、後から目線を動かした人が何を見ればいいのかわからない。そのため、3秒止めておくことが基本。

さらにオンラインでは、とにかく大きなアクションをすることが有効。特に、画面の枠内で目いっぱい手を広げるといい。普段の3倍大きいイメージで動くのがおすすめだ。

ビジネスの現場でバーチャル背景は信用されない?

ビジネスの会議でもっともいい背景は、リアル画像だと矢野さんはいう。

「バーチャル背景は偽物だから、リアル背景のほうがいいのです。バーチャル背景は、何か隠している印象を相手に与えてしまいます。政治家の方には、どんなに散らかっていてもリアル背景をおすすめしています」

ただし、リアル背景でも、見る人の気を散らせてしまう場合がある。それは「文字」。人はつい文字を読み「なぜこんなことが書いてあるの?」と気になってしまうのだ。そのため、文字が入らないリアル背景になるように気を付けたい。

「どうしてもバーチャル背景を使う場合には、白い無地などがいいですね。それも、グリーンバックなどを用意すると、違和感のない合成になります。これから買う方は、布ではない、自立型の硬いものにしてください。シワがないほうがいいからです」

オンラインならではの伝え方で、画面の向こう側にいる相手とコミュニケーションを取っていこう。リアルとは違う新しい常識として、率先して取り組んでいきたいものだ。

より詳しく学びたい方は「らしく学ぶ」より動画をご覧ください。
https://www.r-staffing.co.jp/rasisa/entry/202011274612/

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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