派遣スタッフとして週5日働きながら、以前一緒に働いていたクリエイターの方たちの事務仕事を手伝う青野さん(48)。自分のキャリアに焦りを感じた時代もあったが、そんな気持ちを変えてくれたのが目の不自由な方のサポートだった。その後、今は趣味として楽しむ「アロマ」のセラピストをはじめ、さまざまな仕事に並行して取り組みながら、自らの変化を楽しんでいる。大切にしている思いを教えていただいた。

*今回はオンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人より提供いただきました

図書館で経験した「音訳」が世界の見方を変えた

青野さんの最初の就職は、テレビ番組の制作会社。ADとして働いていたが、あまりに忙しい日々。女性が少ない中、先輩の男性から「ここで体を壊すことはない」と言われ、事務職への転職を決めたという。

公共施設や博物館での仕事に就いたあと、資格を取り司書として働くことに。

「図書館で司書として働いたとき、ハンディキャップのある利用者向けサービス担当になりました。特に、目の不自由な方向けに、点字だけでなく音声化された図書資料のご案内をしたり、ご希望のCDを探してご自宅に届けたり、貸出しのサポートをしました」

それまで、自分の仕事が「決められたことをこなすだけ」に思えて迷いがあったという。だが、目の見えない人のサポートをするうち、そんな迷いが消えていった。

「目の前に困っている方がいたら、その人の欲しているものにどれだけ寄り添えるか、と考えるようになりました。それまでは、目の見えない方を街中で目にしても『大変だろう』と想像するだけで、深く意識できていなかった。でも、その仕事を経験したことで、自分が恥をかいてもいいので『手伝いましょうか』と言えるようになったんです」

目の不自由な人のなかでも、サポートしてほしい内容は人により違う。定型的なサポートの仕方があるわけではないが、声をかけられただけで嫌な気持ちになる人は、そんなにいないようだ。ひとつひとつ聞きながら、その人に寄り添っていく。

「ほかに、本を読む『音訳』を初めて経験したんです。目の不自由な方に代わり、その場で声に出して本を読むサポートをします。途中失明した方は色や映像を覚えているので、画集や写真集を音訳してほしい、と言われる場合も。絵や写真を言葉で伝えるため、いろいろな工夫をしました」

できるだけシンプルに、わかりやすく伝える。たくさんの工夫と経験は、その後の仕事でも生きたという。


▲「役に立ちたい」という思いで、年に二回献血すると決めている。協力するとポイントが貯まる。その記念品

映像制作時代の先輩から仕事を請け負うように

図書館で働き始めたころから、映像制作時代の先輩に仕事を頼まれるようになった。事務仕事から、ちょっとした映像の編集、ロケの手伝いなど。それ以来、2~3個の仕事を持つのが常だという。

「まったく違う仕事をしていると、相乗効果というか、自分の中の感覚が広がっていく気がします。例えば、公共施設の仕事だけをしていたときの自分は、利用する方の気持ちを汲み取りきれていなかったな、と。でも、施設を利用するような方と別の場所で関わることや、事務職での経験から、その人の立場や視点、もやもやの正体が具体的にわかったりします。想像力が豊かになるのか、いろいろな人の在り方に寄り添いやすくなるんです」

このように、青野さんが複数の仕事を持つようになったのは、もう20年ほど前。副業などが一般的でなかった時代で、苦労や迷いはなかったのだろうか。

「最初は悪いことをしている気がして、職場には黙っていました。でも、私自身はいろいろな仕事をするのが楽しかった。今は副業が推進されたり、当たり前になったりしていて、時代が変わってよかったと思っています」

現在は派遣スタッフとしての仕事をメインにしながら、映像時代の先輩の仕事を引き続き手伝っている。

「1年半ほど前から、派遣スタッフの仕事を始めました。特許関係の事務職を担当したときは、私のスキル不足でとてもつらかったことも。でも、そこでOffice SharePointやOffice 365などITツールの使い方を覚えたので、それもよい経験です。今は金融系の独立行政法人でアシスタントとして働いています。ルーティンのような決まった仕事が多いものの、周囲の方の進めやすさを考えて、できるだけ工夫するようにしています」

一時期は仕事にもしていたアロマ。今は趣味として楽しむ

趣味のひとつは、アロマ。2016年に一念発起してスクールに通い、一時期は仕事にもしていた。セラピストとして、個人で活動するほか、知り合いのサロンでアルバイトをしていたことも。


▲公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)の認定証と精油メモ

「今は、自分の生活の中でアロマを使っています。また、離れて住む母が疲れたときなど、『このアロマがいいよ』と教えてあげることも。母が遊びに来たときには、アロマを使って足や腕、指先をケアしてあげると喜んでくれますね」

「目の前にあることを大事にすれば、一歩ずつ進んで遠くに行ける」という感覚を持っている青野さん。過去には、外からの評価を気にしたり、肩書や収入を同じ世代の友人と比べたりして、落ちこぼれのような感覚にとらわれることもあったという。

「誰かからの見え方を気にするより、困っている人がいたら寄り添い、1対1で人と向き合うほうが大事。承認欲求が完全になくなったわけではないけれど、振り回されないようにはなりました。目の前のものや人を大切に、常にホスピタリティの気持ちを持って動く活動を増やしていきたいです」

たくさんのアロマ関連グッズを愛用

愛用しているものは、やはり製油。ラベンダーやゼラニウムなど定番もののほか、7月生まれ・蟹座のアロマであるといわれるジャーマンカモミールも常備。メーカーがオリジナルで組み合わせている精油も、自分で思いつかないところに驚きがあり好きだという。ほかにも、公益社団法人 日本アロマ環境協会から発行されている機関紙「AEAJ」も愛読している。

左No.107 2023年3月25日発行/右No.108 2023年6月25日発行

ライター:栃尾 江美(とちお えみ)

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