人生には「失敗したな」と思う出来事も。でも、それを「いい経験になった」と未来につなげるのは自分次第かもしれない。オクノさん(60代)は、これまで経験してきた出来事すべてが「今につながっている」と考えている。前向きなオクノさんの思いは、時には職場の人々にも伝搬するようで。

*オンラインで取材を行いました
*掲載しているお写真は、ご本人よりご提供いただきました

思いをはっきり伝えたら職場の雰囲気が変わった

現在は設備関連の会社にて正社員で営業事務兼秘書として働くオクノさん。ここ一年ほどは、週末の設備点検も行うように。希望を伝えると社長からは「女性からの申し出は初めてです。ありがとう」と感謝された。

「勤務日数が増えるので給与も増えるのがありがたいですが、現場に出ることで、普段作成している請求書や見積書がどんな仕事につながっているのかわかって勉強になります。点検先まで向かう車の中や、昼食時間のなにげない会話から、点検員さんの困りごとを知ったり、書類に出てくる専門用語の意味が理解できたり、発見がとても多いんです」

これまで経験してきたどの職場、仕事でも「やるからには面白さを見つける」「自分ができることは精いっぱいやる」を大切にするのがオクノさん流。今の職場で働きはじめた4年前は、社内のメンバーそれぞれが自分の仕事をこなすのみで、ぎくしゃくする場面も。連携が取れていない様子を見て「皆が前向きに、楽しく仕事ができる雰囲気を作りたい」と動き出したのだという。

「会社という組織なのですから、ひとつになって動かないといい仕事ができないと思うんです。私にできることはないかと考えて時間をかけて努力を重ねた結果、皆にも私の思いが伝わり、会社の雰囲気が変わり、連携が取れるようになった気がします」

介護も体当たりで。伝わることが必ずある

オクノさんの「自分ができることは精いっぱいやる」の気持ちはプライベートでも変わらず。12年ほど前から、認知症を患う母親の介護と仕事を両立してきた。

「母の徘徊が激しかったころは、夜も寝られない日々が続いていました。当時、日中はデイサービスに通っていて、施設と母の様子を共有するための連絡帳にはいつも“今日は家ではこんな様子でしたが、施設で何かありましたか?”“持ち帰った汚れ物を洗うのが大変なのですがどうしたらいいでしょうか?”など気になったことをびっしり書いていました。そうすることで家族の真剣さが伝わって、施設でもきちんと対応してくれると思っていたんです。また、どんなに仕事で疲れていても、家の中がどんな状態でも、母の前では笑顔を心がけていました。人は自分の鏡なので、こちらが笑顔で接すると相手の表情も柔らかくなるんです」


▲お母様がデイサービスに通われていたとき作られたもの。オクノさんの“宝物”だとお話しいただきました

その後、特別養護老人ホームへの入所が決まり、夜もつきっきりの介護はなくなったが、コロナ禍で面会がかなわない数年のうちに認知症の症状が進行。「水を口に含まなくなったら、あとは時を待つだけ」と担当医から告げられる。

「それから毎週母のところに行って、母が好きだった『赤い靴』や『おもちゃのチャチャチャ』などの童謡を流しながら歌って聴かせてみました。そうしたら最初のうちは無表情だった母が、表情が出てきて一緒に歌うようになったんです。そのうちに水分や柔らかいものが摂れるようになり、笑顔も見せてくれて。担当医から説明を受けた日からすでに一年半が経過。母も頑張ってくれています。何事もあきらめず、体当たりで頑張ることで伝わることがあると実感しました」

挑戦して学んだことは無駄にはならない

生まれながらに「負けず嫌い」と分析するオクノさん。これまでもさまざまな職種に挑戦し、スキルを磨いてきた。時には思ったように自分の能力を発揮できないこともあったが、それも「挑戦しないとわからなかったことなので、無駄な経験ではありません」と振り返る。

「社会人デビューは総合商社での広報で、お客様を大切にしないと商売が成り立たないことや社会人としての立ち居振る舞いや挨拶の仕方などを学ばせてもらいました。姉と第二の故郷ヨーロッパへ旅行したのをきっかけに、外国語を使う仕事をしてみたいという思いが強くなって、外資系のアパレル企業に転職したんです」

外資系企業では秘書として勤務。国内企業とは全く違う職場環境に驚き、1年で別の外資系企業に転職。

「自分の外国語のスキルが仕事で通用するほどでないのを痛感し、やはり外資系は能力重視なのがわかりました。ただ、それもやってみなければわからないことなので後悔はないです。同じ外資系でも、国内でのビジネスや販路の展開の手法が全く異なることを知ることができたので、勉強になりました」

結婚・子育てによるブランクを挟んで復職した際には、それまで経験したことがないパソコンでの作業に戸惑ったが、そこでもオクノさんの負けず嫌いが発揮される。

「経験の無いExcelやWordの画面を前に、最初はどうしようかと思いました(笑)。ですが、eラーニング講座のELANで学ばせていただけて、すごくありがたかったです。毎日就業先から帰宅したあと、家でコツコツ勉強していました」

常にさらなるスキルアップ、キャリアアップを意識しているオクノさん。現在もその思いは変わらない。

「今は点検業務の際に使う国家試験取得に向けて勉強中です。これを読んでいる方の中にも、ステップアップや新たな職業に飛び込もうか迷っている方もいると思いますが、ぜひチャレンジしていただきたいです。失敗も必ず次に活かされます。人生に無駄はなく、どんなことも必ず未来につながっていきます!」

父と姉ゆかりの品が心を癒してくれる

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アンティークのランプは父の形見。夜、仕事から帰ったあとは、このランプだけをつけ、リラックスできる音楽を聴きながら家事をするのが癒しの時間に。「やさしい灯りが気持ちを落ち着けてくれます。自然とストレスが緩和されて、セルフヒーリングしているのかもしれません」。

手前はお姉さん手作りのベネチアンビーズの指輪。デザインが珍しく凝っているのもあって、「つけていると女性のお客様から“すてきね”と声をかけていただけることも多いのでよくつけていきます。母も姉の指輪をつけるとうれしそうです」

ライター:古川 はる香(ふるかわ はるか)

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