
AIが関数を作り、データ整形までも支援してくれる時代になりました。AIにExcel業務はどこまで任せられるのでしょうか。また、Excel基礎スキルは今も必要なのでしょうか。
今回は、Excel業務改善コンサルタントで『コラムExcel教室』の筆者でもある吉田拳さんに、AI活用の考え方と、これから役立つスキルについてうかがいました。
AIにExcel業務は任せられる?
「AIによって人間の仕事がなくなってしまうのか」
最近になって多くの方が考えているテーマです。これはExcel業務においてはどうなのでしょうか。
このテーマの核心は、「AIに今のExcel業務をすべて任せることができるのか」ということになります。
結論から申し上げれば、この答えは「No」です。まず、Excel業務におけるAI活用の大原則を確認しましょう。
■Excel業務におけるAI活用の大原則
・AIが自分の代わりに業務をこなしてくれることを期待しない
・自分の作業を「自動化するツール」を作るために、AIによるサポートを活用する
・または、日ごろのExcelに関する相談相手として活用する
例えば、毎月、各部署から集まってくる勤怠データをもとに毎月の勤怠集計をしているとします。この業務は毎月必ず同じプロセスで行い、絶対にミスがあってはならない業務です。
AI活用の常識として、このような「厳密性と再現性」が求められる業務をAIに丸投げして済ませられることは、ほぼないと考えるべきです。ではどうするか。
■「厳密性と再現性」が求められる業務の場合
・その作業を毎回「ボタン1クリック」で済ませられるExcelの仕組みを整える
・その仕組みを整える際に必要な「機能」「関数」「マクロの作成」において、AIを強力なサポーターにする
こうした使い方が、今この時代のExcel業務の効率化における正しいAIの活用法です。
AIがサポートしてくれること
日常のExcel作業でちょっと困った際にも、AIに助けられることが増えています。具体例を4つ見てみましょう。
【1】AIに関数について質問する
引き継いだExcelに入力されている関数の意味が分からず、作成者に質問できない…という状況はよくあります。
そんなときは、その関数式をAIに貼り付けて、「この関数が何をやっているのかを、関数の解読が苦手な私でも分かるように丁寧に教えてください」と質問してみましょう。
すると、瞬時に懇切丁寧な回答文を返してくれるのが生成AIの凄さです。
「書かれている関数の意味が分からなくて困っている」という状況も、AIに相談することで解決しやすくなっています。
ただし、それには最低限のExcel関数の基本を学んでおくことが不可欠です。
また、関数の結果がエラー値になった際の原因調査でも、多くの場合、見事にその原因をつきとめて解決策を教えてくれます。
【2】AIが関数を作る
Excel関数で実現したいことはあるものの、どんな関数式を作ればいいのか分からない場合もあるでしょう。そんなときもAIが役立ちます。
例えば、「セルの左から4文字だけ取り出したい」とAIに相談すると、以下のような回答を瞬時に返してくれます。

【3】AIがマクロ作成を支援する
簡易な処理を行うだけのExcelマクロであれば、AIにコードを書いてもらうことが可能です。
ただし、AIが出力したマクロが意図通りに動くかどうかを判断するスキルが必要になります。
やはり、VBAの基礎を学んでおくことが必須となります。
【4】AIがデータ整形を支援する
時には、Excelの関数では処理できないデータ整形もあります。
例えば、「セルに日本人の人名が入っているが、苗字と名前の間にスペースがなく、くっついている」ケース。
これを、苗字と名前で別々のセルに分割したい…という場合。これはExcelの関数では不可能な処理です。
AIなら、このようなケースでも高い精度で分割処理を実行してくれます。
ただし、その精度は100%完璧とは限らないため、最終的な確認は必要です。
AIがあってもExcel基礎スキルは必要?
上記の事例でも分かるよう、AIを活用してExcel業務を効率化しよう、という場合に大事な認識としては「それでもやはりExcelの基礎を学ぶことは必須」ということです。
AIについてよく言われることは、「基礎を身につけた人間のパフォーマンスを最大化するもの」というものです。
とはいえ、Excelの勉強はそんなに大変なものではありません。Excelを業務で活用するのに学習すべき内容は
・多くても30個程度の関数
・多くても10個程度の機能
・VBAの基礎レベル
これらは、書籍なら1冊読めば十分なものです。
Excelには非常に多くの機能や関数がありますが、日常業務で使用されるのはその1割以下でしかありません。その他9割は、まず使うことはないものです。
かつ、ごく一部の使い方にさえ慣れておけば、知らない機能が必要になったときに、AIに相談してその機能を活用して解決できます。
「質問と実践」を繰り返すうちに、自然とさまざまな操作スキルが身についていくはずです。
■はじめてのAIは「検索」からでもOK
AIに相談をしたことがない方も、日常的にGoogleやYahoo!検索で何かを検索した際に、検索結果画面の冒頭にAIによる回答が表示されているのを見たことがあるのではないでしょうか。
つまり、専用のAIアプリがなくても、検索エンジンにアクセスできれば、AIへの相談は誰でも始められます。
機密情報は入力しないよう注意しながら、自分のスマートフォンからでもAIを利用できます。
AI活用が進む中で大切なこと
大切なのは、Excelに限らず、「分からないことや気になったことは、何でもかんでもまずはAIに相談してみる」という姿勢です。そのためにも、まずはAIとの対話に慣れることです。
その中で、「AIの回答は必ずしも完璧とは限らない」というリテラシーも学べます(Excelの“使い方相談”ではそのリスクはほとんどありませんので安心してください)。
「Excelについて聞ける人が周りにいない」というお悩みも今までたくさんいただいてきました。しかしそれもAIのおかげで大きく改善されたと言っても過言ではありません。
■今回のポイント
AIを活用する時代ですが、AIはすべてのExcel作業を担ってくれる存在ではありません。だからこそ、今なお「最低限のExcel基礎スキル」が必要であることが分かりました。
▼押さえておきたいこと
□AIとの対話に慣れる
□基本的な関数を知る
□基礎的なExcel機能を知る
□VBAの基礎を知る
Excelの基礎、VBAの基礎を学びたい方は、ぜひ以下もご活用ください。
※AIを業務で使用する際は、就業先のルールを確認し、それに従ってください。個人情報や企業の機密情報などは入力しないよう注意が必要です。情報漏洩の原因となる可能性があります。
※本記事の内容は、2026年9月時点の情報に基づいています。
※本記事に記載されている会社名、製品名、サービス名は、各社の商標または登録商標です。
Excelの効率化支援を行う株式会社すごい改善代表取締役。実務直結主義のExcel研修を2011年から14年間に渡り500回以上開催、受講者は1万名を超える。著書『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』『たった1秒で仕事が片づくExcel自動化の教科書』(技術評論社)など累計50万部を突破。










