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【連載】第2回 派遣エンジニアとして働くために知るべき「スキル」を理解するコラム

昨年5月に大好評で、その後定期開催するまでになった「自分の能力を上手に相手に伝える方法を学ぶセミナー」。この内容を参加者からのアンケートをもとにパワーアップした内容を、全3回に分けて皆さんにお届けします。

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高橋 裕之
ウイングアーク1st株式会社 技術本部 SVFパッケージ統括部 ソフトウェアエンジニアリング部 部長、ソフトウェアプロセス改善コーチ。ITエンジニアとして10社を超える現場、いくつものプロジェクトに参画。次第にIT業界の影に潜むプロセス、マネジメント、人間系の問題に気付いてしまい、日々その解決のため戦っている。派生開発推進協議会(AFFORDD)役員。認定スクラムマスター(CSM)、認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)。

第2回 派遣エンジニアに求められるソフトスキルとその活用法

■今回のポイント

派遣エンジニアに必要なコミュニケーション能力は発信・受信の対応力
・ほうれんそう(報・連・相)は部下ではなく上司が守るもの?
・エンジニア特有の「専門用語」を使った話し方にご注意

就業先で周りと上手くコミュニケーションを取るコツもご紹介しています。 ぜひ最後までご覧ください!

3種類にわかれるスキルのなかでも、前回はハードスキルについて、混同されがちな業務知識と一緒に説明しました。

▼前回の記事はこちら

今回は、ソフトスキルについて触れていきます。派遣エンジニアに一番求められるソフトスキルとは一体どんなものでしょうか。

ソフトスキルとは

ソフトスキルとは、コミュニケーション能力やリーダーシップ能力といった対人関係および自己に関するスキルを指します。別名ヒューマンスキルとも呼ばれ、学習によって得るスキルと言うよりは、生まれつき持っている性質や個性として見られがちですが、もちろん学習でも身につきます。

ソフトスキルは定量化が難しいとされています。言葉で言い表すことは簡単なのですが、ソフトスキルを保有していることを第三者に証明することが難しいのです。そこで、相手にわかってもらうためには、実際にソフトスキルを使って見せるのが近道です。

派遣社員として働く上で求められるコミュニケーション能力は発信・受信の対応力

派遣社員として働く上で、ベースとして求められるソフトスキルのひとつに、コミュニケーション能力があります。特にIT系の仕事では、仕事をする上で関わる派遣先の管理職やプロジェクトメンバーたちと、うまくコミュニケーションが取れなければ業務遂行が難しいと思われます。

ただしこの場合のコミュニケーションとは、人柄が良く、誰とでも気さくに話せ、笑顔がたえない…などが求められているわけではありません。もちろんどんな人ともスムーズにコミュニケーションが取れる人は大歓迎ですが、実際のところ、業務遂行のために「しっかりと」コミュニケーションを取るべきステークホルダーはそんなに多くありません。

では「しっかり」とはどういうことでしょうか?

コミュニケーションとは、自分が「しっかり」話したり書いたりして伝える「発信能力」と、相手が「しっかり」受け止めて処理する「受信能力」の双方向要素があります。単に上手く発信すれば良いわけではなく、伝えたい情報が「相手に正しく伝わって」はじめて成立するのがコミュニケーションなのです。

つまり、相手のコミュニケーション能力も同様で、お互いが「発信能力」と「受信能力」を持ち、双方向で情報が正しく伝わることが「しっかり」コミュニケーションが取れるという意味になります。

ところが実際の現場では、相手の方がコミュニケーションを苦手としている例は多数あります。受け入れる側は「コミュニケーション能力が高い人」を求めていても、実際の現場ではコミュニケーションが苦手な方が少なからず居るのです。

つまり、職場で求められるコミュニケーションとは、管理職やメンバーの「発信能力」に課題がある時は、相手の発する情報から「ノイズ」を除去することで必要なことを上手く要点を汲み取って理解し、反対に相手の「受信能力」に課題がある時は、自分が伝えたいことを図や文章を駆使することで「ノイズ」が乗らないよう上手く伝える…といった、それぞれのシーンで発信・受信能力を最大限に上げられるような人が求められているのです。

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ほうれんそう(報・連・相)の由来と本当の意味とは

皆さんは、「ほうれんそう(報・連・相)」をご存知でしょうか。コミュニケーション能力といったときこの「ほうれんそう」の徹底を思い出す人が多いかもしれません。報告・連絡・相談の略称と言われています。

よく、上司が部下に注意するときに「“ほうれんそう”がなってない!」などと叱咤される風景を思い出しますが、果たしてこれは部下だけの問題なのでしょうか…?

故・山崎富治氏が30年前に出した本「ほうれんそうが会社を強くする―報告・連絡・相談の経営学」により世の中に「ほうれんそう」が広まりました。

しかしこの本に書かれている内容と、今語られる「ほうれんそう」のニュアンスはかなり違っています。山崎富治氏の本では「ほうれんそう」は部下から上司へのコミュニケーション・パスの問題というより、いかに部下が上司に報告しやすい環境や風土を整備し「風通しの良い会社を作るか?」としての標語でありました。

つまり「ほうれんそう」は情報のコミュニケーション・マネジメントに関しての重要性を説いているのであって、部下が上司に対して(良いことも悪いことも)報告しやすい状況を作ることが重要であると説いているのです。

部下が何か小さなことでも報告しにくい雰囲気があったとしたら、それこそ上司の方が「ほうれんそうがなっていない!」という意味になります。

コミュニケーションとは自分だけで成り立つものではありません。他者に対する影響を意識して、相手と自分、発信と受信、双方向における情報のやり取りを、如何に「ノイズなく」うまく出来るかがコミュニケーションの真髄であり能力なのです。

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エンジニア特有の話し方にご注意

コミュニケーションにおいてエンジニアの皆さんに気をつけてほしいのが、専門用語を多用した会話です。まれに「専門用語を多用した会話」を自分の技術力を誇示する方法だと勘違いしている方をお見受けします。

エンジニア同士の会話なら会話の中で相手の力量が測れたり、プログラミング言語や技術の話で盛り上がりなにより楽しかったりするのですが、その横で聞いている非エンジニアにとってはチンプンカンプンです。

仕事の時ほど、相手がエンジニアか非エンジニアかで「伝え方」を変えなければなりません。それにもかかわらず相手におかまいなく専門用語を多用した会話を続けるエンジニアを時々見かけます。そんなとき、非エンジニアは会話から締め出されたような、まるで「知らないお前が悪い」と言われている気分になったり、結果として「エンジニアと話しをするのが苦手」と感じたりしてしまうのです。

エンジニアにとっては普段から当たり前のように使う専門用語ですから、なかなか「理解されない」ことを理解するのは難しいと思います。しかし、コミュニケーションの観点から言えば、わかりにくいことほど「伝える」技術はとても重要です。

ところで、自分の技術力をアピールする方法には“会話で誇示する”よりもシンプルな実践方法があります。 それは、技術に明るくない人が困っているときに積極的に助けてあげることです。

Excelの関数がわからない、PCに見たことないダイアログボックスが出ている、あやしいメールが届いて困っている、送られてきた添付ファイルが開けない、個人的にPCを買いたいと思っているので相談相手が欲しい…など。エンジニアにとってはカンタンに協力できる局面がたくさんありますよね。

色々な相談に乗り、ヘルプの回数を重ねるごとに「○○さんに相談したらなんとかしてくれそう!」と知識を買われ、頼られる存在になっていきます。

お助け役を続けると、意外なところで新しい仕事のチャンスが生まれるかもしれませんよ。なお、頼られる存在になるには、普段から話しかけやすい雰囲気作りもコミュニケーション能力の一部として大切であることを申し添えておきます。

(編集後記)
いかがでしょうか。派遣エンジニアとして必要な知識を、高橋さんのように、派遣エンジニアを受け入れる立場からの視点も踏まえると、コミュニケーション能力という漠然としたソフトスキルが紐解けてきます。次回はスキルに関するメルマガの最終回をお届けします。どうぞお楽しみに。